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六話 ガールズトークはチーズカップケーキと共に

 今回は、R15の表現が入っているので、苦手な方は、カップケーキの作り方を過ぎた辺りで、飛ばして下さいね。


 わたしの寮の部屋の扉が、コンコンと、ノックされる。

「今、大丈夫?」 

 梨絵先輩が、缶チューハイを2缶持って、顔を出す。

「大丈夫ですよ。あ、よかったら、簡単なおやつでも作りましょうか?」

 確か、冷蔵庫には、この間買っておいたクリームチーズがあったはず。

 今度、お姉ちゃんにベークドチーズケーキを作ってもらいたくて、生クリームと一緒に買ったんだよね。

 買い置きのホットケーキミックスもあるし、バター、砂糖、卵、牛乳はいつも買ってあるし。

 耐熱のボウル、泡立て器、ゴムべら、直径5cm位の紙カップと小さ目の耐熱の器を持って、食堂に。

 耐熱のボウルにクリームチーズ50gを入れて、レンジ強で30秒くらいかけて、柔らかくする。

 耐熱の器にバター20gを入れ、ラップをかけて、レンジ強で約40秒くらいかけて溶かしバターにする。

 クリームチーズを、泡立て器で混ぜ、砂糖30g、卵1個、溶かしバター、牛乳130gの順に加え、その度によく混ぜる。

 ホットケーキミックス200gを加えて、なめらかになるまでよく混ぜる。

 紙カップに大さじ2杯弱ずつ、10個くらいに入れ分ける。

 ターンテーブルの縁に添って等間隔に5個並べて、レンジ強で約3分加熱する。

 表面が乾いて生っぽさが無くなれば、出来上がりです。生っぽさが残っていたら、もう1分ずつ加熱します。

 すると、むくむくっと2倍くらいにふくらんで、ふわっふわっのカップケーキが出来上がりです。

 簡単でしょ。

 このチーズカップケーキは、砂糖もバターも入っているので、冷めても固くなりにくいんだけど、レンジで作るカップケーキは、冷めると固くなるので、温かい内に食べるのが、オススメです。冷めて固くなってしまったら、1個につき、レンジ強で約30秒かけると、柔らかくなります。レンジで温め直した後は、冷めない内に食べないと、もっと固くなるので、温かい内に食べて下さい。

 

 二人で手分けして、後片付けをする。二人だと、あっという間です。

 ほかほかのチーズカップケーキと、冷蔵庫に入れておいた缶チューハイを持ってわたしの寮の部屋に向かう。

 途中、匂いに釣られた寮生の先輩と後輩に、カップケーキを分け、同僚の美奈ちゃんも加わって、3人になる。

 美奈ちゃんは、尾崎美奈と言って、お菓子の専門学校に通ってから入社しているので、同じ年に入ったけれど、歳はわたしの一つ上になります。

 お隣りの洋菓子二課でお仕事しています。

 可愛いお嫁さんを目指す、体育会系のお嬢さんです。

「いやぁん。このチーズカップケーキ、ふわっふわっで、美味し。後で作り方教えて?」

 美奈ちゃんは、褒め上手でもあります。

「よかった。すっごく簡単なので、また、作ってみて。ね、梨絵先輩。」

「ほんと、簡単だったよ。私、手早くお菓子を作ってくれる様な、こんな可愛いお嫁さんが一人欲しい位。」

「いいなあ。可愛いお嫁さんかぁ。誰かお嫁にもらってくれる人居ないかなぁ?」

 美奈ちゃんが、憧れた様に、つぶやく。

「そう言えば、志保ちゃん、総務課の田渕主任と、お付き合い始めたんでしょう?田渕主任って、優しそうだよね。実際の所、どうなの?」

 梨絵先輩が、缶チューハイをマイクの様に、突き出す。

「えっと、優しいです。いつも穏やかで、あんまり怒る事が無いから、居心地がいい感じです。」

 わたしは恥ずかしくて、顔が真っ赤になって、俯き加減で、答える。

「よかったね、志保ちゃん。私、志保ちゃんが、恋愛とかを諦めていたみたいに見えていたから、心配していたんだ。ただ、自分に合う人を、待っていただけなんだね。」 

 そう言って、梨絵先輩は、缶チューハイを、一口飲む。

 ほんとに、そうかも知れないな。憧れていた様な、理想の人に近いかんじがするよね。

「で、キスは?その先は?もう済ませたの?」

 美奈ちゃんが、興味深々っと言った感じで、身を乗り出して、尋ねて来る。

「こら、こら。止めたげなさい。初めてのお付き合いなんだから、温かく見守ってあげなきゃ。興味はあるけどね。」

 興味はあるって、先輩~。脱力感に襲われる。

 確かに、わたしも、梨絵先輩や、美奈ちゃんの恋愛に全く興味が無いって言ったら嘘になるし。気になる事あるけど、聞きづらくて。

「想像にお任せします。」

 小さな声で、答える。

 すると、美奈ちゃんが、腕を組んで、考え込む。 

「う~ん、そうねぇ。キスは済ましたが、それ以上はまだって感じかなぁ?」

 なんですか、その見て来ました感は。当たっているのが悲しいです。貴女は、占い師ですか?近くにあったクッションを、引き寄せて、倒れ込む。

 梨絵先輩は、笑って黙ったまま、缶チューハイを飲んでいるし、もう。

「わたしの事は、いいから、美奈ちゃんは、どうなのよ。」

 むっくりと、起き上がって、話題を変えようと試みる。

「あたし?今は、ちょっと恋愛どころじゃない感じかなぁ?この4月で、洋菓子二課の主任が退職されたでしょ?新しく入った新人教育で、いっぱいいっぱいなんだ。人に分かりやすく教えるのって、ほんと難しいね。二課はさぁ、経験がものを言う仕事だから特にね。失敗したら、何枚ものジェノワーズとかを廃棄しないといけないし。かと言って、新しくお店を開く主任を引き止める事は、出来なかったし。」

 そうだよね。独立してお店を持つのが夢の人を、引き止められないよね。開店のハガキが来てたから、一度、食べに行ってみたいんだ。

「明日も、仕事かぁ。行きたくないなぁ。明日水曜日だから、一課はお休みでしょ?いいなぁ、一緒のお休みで。仕事が終わる時間も違うし。この前、二人で洋服買いに行ってたし、羨ましいな。最近、土日の休みも、デートばっかりだし。」

 拗ねて、頬を膨らませる。


 洋菓子二課のお休みは、基本火曜日で、土日のどちらかを交互に取る事になっているそうです。仕事は、8時半から5時半までで、普通の会社員と変わらない感じです。慣れるまで、4時起きは大変だったんだよ。ちなみに、土日のお休みは、梨絵先輩とは重なりません。美奈ちゃんとは合わせてあるけどね。


「分かった。今度の土曜日のお休みは、三ノ宮まで、洋服を買いに行こう。わたしも春物の洋服欲しかったし。」

「ほんと?嬉しい。ありがとう。」

 膨らんでいた頬が、笑みに変わる。

 えくぼが出来て、可愛いのよね。

「そう言えば、梨絵先輩は、どうなんですか?」 

「え、わたし?」

 わたしたちの会話を微笑ましそうに見ていた先輩は、急に話題をふられて、キョトンとしている。

「そうねぇ。もう付き合って3年になるし、そろそろかなぁ?」

「先輩は、夫婦の域ですよね。」

 今なら、大丈夫かな。

「あの、初めてって痛いって聞きますが、本当ですか?」

 恥ずかしいけど、聞くなら、お酒の入った今しか無いっ。

「人に寄るだろうけど、私は痛かったかな。」

「あ、あたしも。最初は痛くて我慢出来なくて、2回目にやっとの思いで出来たんだよね。」

 そうなんだ。噂は、本当だったんだ。

 痛いのって、嫌だよね。

「最初の方は確かに痛いんだけど、痛いだけじゃ無いんだよ。何て言ったらいいのかなぁ?満たされるって言うのが、一番近いかなぁ?」

「分かります。そんな感じですよね。彼が、気持ちよくなっている姿って、なんだか嬉しくなるんです。」

 う~ん。痛いだけじゃ無いって、どんな感じなんだろ。

「手作りのお菓子を、美味しそうに食べてくれた時に、嬉しい気持ちになるんですが、そんな感じですか?」 

「きっと、そんな感じかも知れないわね。」

 ふふふと、微笑まれる。

「志保ちゃん、可愛いい。」

 美奈ちゃんに抱きしめられる。がっしりとしている様に見えて、胸があるんだよね。羨ましい。

「あのね、初めてが上手くいくには、自分に素直になる事。」

「素直にですか?」

「そう。怖かったら、怖い。痛かったら痛い。気持ちよかったら、気持ちいいって、素直に、伝えるの。」

「あたしも、ちゃんと、素直に伝えてたよ。」

「そして、我慢や無理はしない事。」

「分かります。男の人って、女の子の気持ちを、察する事が出来ないですよね。」 

 美奈ちゃんが、納得したように、うん、うんと、うなずく。

「男の人に、ちゃんと言わないで、分かってもらおう、なんて、考えるだけ、無駄無駄。あいつらは、言わなきゃ、絶対分かんないんだから。自分の気持ちを言葉にして伝えるの。覚えておいてね。」

 梨絵先輩に、肩を掴まれて、真剣な瞳で、見つめられる。

「分かりました。覚えておきます。」

 こうして、ガールズトークは、夜遅くまで続くのでした。 

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