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前編

今もあるのかな?

アタシが一人暮らしをしてる時に よく勧誘なりセールスの電話がかかってきてた。

小さい頃、親なり学校なりから

「知らない人には ついて行かない」

と、言われて育ったはずなのに電話の相手にはハードルが下がるのは何故かしら?(笑)


まだ携帯なんて普及してない時代の話。

その日は、お風呂上がりにビール飲んで まったりしていた。

何気に鳴り響く電話のベル。

「はい」

『金川なつみさんですか?』

……誰だよ。

自慢じゃないがアタシはモテない。

男からの電話なんて小学校の緊急連絡網くらいしかないわ。

『〇○商店いうねんけど宝石とか興味ない?』

て、てめ〜。

初対面のくせに馴れ馴れしいな!!

「まったくないですけど」

『素材で勝負かぁ。メッチャ可愛いんやろな〜』

「…まったくないですけど」

『そうなん?声、メッチャ可愛いやん。ホントは美人さんなんやろ?』

この声の感じならアイドルの誰々に似てるとか、声だけで一目惚れやとか、おい仕事どうした?勧誘すんじゃねぇのか!?と こっちが心配するくらい関係ない話を小一時間して電話が切れた。


な、なんだったんだ……。


飲みかけのビールが生ぬるい。

でも、なんだか楽しかったな〜なんてニヤニヤしてしまった。

たとえ何かの勧誘の電話でも可愛いだの惚れただの言われて悪い気はしない。

久々にときめいたわ〜なんてね(笑)



一日かぎりだと思われた勧誘の電話は次の日も かかってきた。

「もしもし…」

『あ〜良かった。電話出てくれんかと思ったわ〜』

いきなり そこからかよ。

『なつみの事が忘れられなくて、仕事中ぼ〜としてもうて上司に怒られたわ〜』

知らんがな。

なんなんだ、この男は!!

仕事しね〜のかよ。

会社の電話でナンパしてんじゃね〜よ!!

なんて心の中で毒づきながら、また小一時間ほど楽しく話して寝た。



それが一週間ほど続いたある日、デートに誘われた。

『今度メシでも食いに行かへん?』

「いいよ」

毎日、電話で話してた気軽さで返事をしたが、知らない男の人からのお誘いなので車に乗らなくてイイ、駅前デートにした。

待ち合わせ場所に30分前につく。

どんだけ飢えてんだよ!!なんて思いながら、そわそわする。

映画館の前で上映中の映画の原作小説を片手に待っていると、

「なつみ?」

声をかけられて顔を上げた。


め、めっちゃイケメン!!


もっとチャラそうな平均点の男が来ると思ってたから、度肝を抜かれて固まる。

「和也です。初めましてって言ったほうがいいか?」

ニヤッと笑った時に見えた犬歯がやけに色っぽかった。

映画のチケット代も その後の夕食代も彼が全部払ってくれた。

その当時珍しかった携帯の番号を教えてもらい、次の約束をして別れるまで、彼は実物が想像以上だったとか、もろタイプで舞い上がったなどなど それはそれは気持ちよく楽しませてくれた。


毎日 電話で話をして、週末にはデートを楽しむ。

潤いのある生活に心も体も充実していた。

そして、宝石や旅行が安くなるからと彼に言われるまま会員登録をした。

指輪やネックレスにピアス……。

似合ってる、今すぐ抱きたくなる、などなど誉め言葉のオンパレードに のぼせ上がって高額の買い物を続け、支払い額が給料を越えた頃 彼の携帯が繋がらなくなった。

不安になり、会社に電話をしたら、彼は先月末で退職したと言われた。


そこでやっと色々気づくことがあった。

なつみからの電話は何があっても取ると言っていたのに仕事が立て込んでいるから後でかけるとか何だかんだ理由をつけて、いつも電話で話すのは日付が変わった時間帯だ。

たぶん、他にも抱えてる客がいたんだろうなと思う。

アタシは話し出すと長いから後回しにされたんだな。

でも、本当は薄々気づいていた。

だけどモテないアタシが こんなにイイ男と楽しく過ごせるなら騙されていたいと思った。

唐突に終わりを迎え、ツラくて悲しくて何日も泣いた。

ゲッソリ痩せた。


そして、残ったのは無駄なアクセサリーと多額の借金だけだった……。



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