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一日目・平坦カテゴリ

 ゼッケン 地区  学校名


1~  長野  鷹島学院

11~  福島  郡馬高校

21~  山梨  昇仙高校

31~  三重  尾鷲学園

41~  千葉  御弓高校

51~  大分  山波大附属高校

61~  鳥取  砂永商業高校

71~  高知  天王寺高校

81~  和歌山 岬女子高校

91~  香川  要第三高校

101~  青森  白山毛欅高校

111~  埼玉  鶴崎女子高校

121~  石川  湯乃鷺高校

131~  沖縄  響丘高校

141~  宮城  黒森工業高校

151~  静岡  柿嶋高校

161~  鹿児島 瀬戸口高校

171~  島根  皿石学院

181~  岩手  愛沢高校

191~  京都  四条大宮高校

201~  北海道 幌見沢農業高校

211~  山口  花泉大附属高校

221~  愛知  名古屋藤村高校

231~  茨城  大海高校

241~  熊本  天艸女子高校

251~  東京  三柴高校

261~  大阪  坂井西高校

271~  滋賀  近江源氏高校

281~  佐賀  佐賀嬉野高校

291~  東京  巌本高校




 大勢の選手達が集まった人混みの中で、わたしはそんな大勢の選手の一部と化していた。自転車のフレームに跨り、両腕をハンドルに乗っけてぼんやりとする。

 レース直前で特にやることもなく、話す相手もいないわたしは、決まり切っていて分かり切っていることを思い返す行為に、時間を費やしていた。

 今年のインターハイは、全国から集まった合計三十校、百二十人で争われることになる。プロチームのレースと比べたらそりゃあ少ない人数かもしれないけど、まぁわたし達、女子高生だしね。

 距離もプロと比べたら短いけれど、総距離にして大体四百キロちょっと。それを五日間で、しかも他の選手と闘いながら走ろうというのだから、その苦労たるや、今から考えるだけで押し潰されそうなほどだ。

 レースのルールは複雑なようでいて実は単純で、複数日掛けて行われるステージレースとしては一般的な、合計タイムを競う形式。全五ステージを走りきった時の合計タイムが一番短い人が優勝ということだ。つまり。

「……ミスが出来ない、ってことなんだよね」

 言葉と共に、体内で古くなった空気を吐き出す。ついでに、お腹の辺りにずっと居座っている、緊張や弱気の源みたいな何かも、一緒に出て行ってくれないかな、などと妄想しつつ。

 レースは全部で五日間しか無いため、一度大きな遅れを取ってしまえば、それが一気に致命傷になり得る。挽回のチャンスは限られているからだ。だからこそそういったことが起こらないよう、わたし達は彼方さんをキッチリ護らなくてはいけない。

「がんばらなくっちゃね」

 視界の中に入る、彼方さんの後ろ姿を見やる。

 腰の辺りに、『41』のゼッケンがあった。

 この数字にも意味があるのだと、このインターハイに来て、初めて教えて貰った。十の位――チームによっては百の位も含めて――は、去年から今年にかけてのの成績。そして一の位が、各チーム内における役割、なのだとか。

 基本的に一番がエースの人で、番号が若い程、上級生や、実力者であることが多い、と彼方さんは言っていた。

 県大会や関東大会の時も同様の法則で番号が振られていたはずなのだけど、わたしはそれを知らなかったので、昨日彼方さんに抗議をしたものだ。だけど彼方さんの反応は、

「しかしな、夕映。聞いていた方が良かったと本当に思うか? レース初心者の状態でいきなり一桁のゼッケンなど付けたら、緊張が増すだけだっただろう」

 いやそりゃそうなんですけど……。

 ちなみに県大会や関東大会の時には、ゼッケン番号は単に申し込みの先着順、などという嘘を教えられていた。信じたわたしが殊更馬鹿だったのかもしれない。

 インターハイにおける御弓高校のゼッケンナンバーは、彼方さんが41、久瀬先輩が42、むつほちゃんが43。

 そしてわたしは44番。まぁ、チーム内で一番経験が浅いし、これに不満は無い。

 しかしこの数字の意味を考えると、そこかしこにちらほらといる一番(エースナンバー)を付けた人達が怖く見えてくる……。

 スタート地点に来る前に大海高校の竜伎硝子さんとすれ違ったけど、あの人が付けているゼッケンは『301』番だった。あの人はバリバリのスプリンターだったし、たぶん総合優勝ではなくスプリント賞か、或いはステージ優勝を狙いに来るんだろう。

 このインターハイでも、プロのレースと同じように、総合優勝以外にも様々な賞がある。

 各日毎の一位通過者を決める、ステージ優勝。

 各ステージに設けられた中間スプリント地点や、平坦ゴールでの着順に応じて与えられるポイントを競う、スプリント賞。

 同じく、登り坂の通過順位に応じて与えられる山岳ポイントの合計値を競う、山岳賞。

 総合成績の最も高い一年生に与えられる、新人賞。

 どれを狙いに来ているかはチームによって様々だろうけど、御弓はそれらの中でも総合優勝一択だ。

 ……頑張らなくっちゃね。

 気合いを入れる意味も込めて、短く息をついたところで、後ろから聞き覚えのある声が届いた。

「おぉ~、御弓のみんなじゃあにゃいかぁ~」

 凄まじく間延びしたその声は、少し離れた地点でスタートを待っている、埼玉代表・鶴崎女子の亜叶観廊さんのものだ。のんびりと手など振っている。結構な人数が間にいて会話はしづらそうだったので、わたしは亜叶さんに軽く手を振り返しておいた。

 そんな様子を見た周囲から、何かを話す声が聞こえてくる。

「あれが千葉の御弓高校ね」

「去年の総合五位、《風のカナタ》が率いる御弓高校よ」

「今年の関東大会では埼玉の《距離無制限(ロード・セイバー)》に敗れて二位だったみたいだけど、やっぱり警戒が必要よね」

 そんな感じに周りが噂してくるのを聞いていると、なんだか強豪校の一員なんだな、っていう実感が湧いて、誇らしいやら、緊張するやら……。

「御弓と言えばアレよね。去年、審判車(ニュートラルカー)に積んであった予備の補給食を一人で全部食べ尽くした、久瀬水晶のいる学校よね」

 久世先輩そんなことしてたんですかっ!?

 凄まじく恥ずかしい噂話までされてしまっている。

「って……あれ? そういえば」

 久瀬先輩の行った悪行(?)についての追求は取り敢えず置いておくとして、わたしはふと気になったことを、すぐ隣にいるむつほちゃんに対して口にしてみる。

「亜叶さん、今日はジャージのデザインが違ったみたいだけど、アレ良いの?」

 鶴崎女子のチームジャージは灰色が基調のものだったし、実際チームメイトの皆さんは関東大会の時と同じものを着用していたのだけど、今日の亜叶さんだけは、赤基調のジャージを着用している。

 腕組みして精神統一っぽいことをしていたらしいむつほちゃんの回答は素っ気なかった。

「さーなー。朝、寝坊で遅刻しかけて、間違ったの着て来ちゃったんじゃねーのか」

「え、亜叶さんってドジっ子属性なの?」

 だとしたら可愛い。

 っていやいや、そんなはずないでしょ。学校名はちゃんと鶴崎女子のものが書いてあったし、ちゃんと本人のものだと思われるのだけど。

 ……まさか隊長機だからとかそういうのでもないよね?

「君が言うジャージとはこういうものかな?」

 突然、わたしのすぐ手前ぐらいにいた一人の選手が振り向き、怪談とかに出てくる、夜道などで唐突に自分の異形を見せて他人を驚かす妖怪みたいな内容の言葉を投げ掛けてきた。

 それまで気が付かなかったけど、言われてみればその人の着用しているジャージは、亜叶さんと同じデザインのものだ。書かれている学校名は違うけど――

「コレは地方大会のチャンピオンジャージだよ。《距離無制限(ロード・セイバー)》は今年の関東大会で優勝したから、一年間あのジャージを着て走ることが許されている。関東最強の称号ということだな」

「へぇ~、そうなんですね。……って、じゃああなたも――」

 ジャージに描かれている学校名を改めて確認しようとして、先にゼッケン番号の方が眼に入ってきた。『31』番。……彼方さんより、更に若い番号。

 首元に捲いた真っ赤なマフラーを風にたなびかせ、その人は小さく笑う。

「うちは三重県代表、尾鷲学園の」

「《密林のレッドマフラー》、嘉神(かがみ)芯紅(しんく)さんですよねー」

 いきなり会話に割り込んできて名乗りを妨害したのは、腕組みしたままのむつほちゃんだ。嘉神さんの方をぎろりと睨み上げながら――相手の方が、身長がかなり高いのだ――続ける。

「去年のインターハイで、初出場ながら総合四位と山岳賞を勝ち獲った超天才クライマー。全国最強クラス……いや、クライマーとしてなら、紛れもなく全国最強でしょーね」

「懐かしいねぇ、去年のインターハイ。後半山岳セクションばっかりで、かなちゃん苦しそうにヒーヒー言ってたっけ」

「話を大げさにするのはやめて貰おうか、芯紅。信じる者がいたら大変だ」

 他の選手との挨拶や歓談を終えたらしい彼方さんが、こちらの会話に合流してくる。

 近付いてきて見比べると、彼方さんと嘉神さんの身長は、だいたい同じぐらいのようだった。つまり、どちらも高い。ただ、嘉神さんは彼方さんと比べて体つきがかなり細いので、更に高いような印象があった。

「やあ、かなちゃん、久し振り。彼氏出来た?」

「いいや。残念ながら、そういう縁にはなかなか恵まれんようでな」

 苦笑した彼方さんは、両の手で、それぞれわたしとむつほちゃんの背中を軽く叩く。

「だが、一緒に戦ってくれる仲間には恵まれたぞ」

「そうみたいだね。どっちも一年生かな? だけど、中々の完成度みたいだ」

「無論のことわたし自身の仕上がりも含めてな。去年のようにはいかんから、首を洗って待っておけ」

「お生憎、うちの首は汚れてないよ。愛用のマフラー(これ)があるからね」

 なんて、雲の上にいるような人達の会話を聞きながら。

 ……間の抜けた話かもしれないけれどわたしは今更ながら、このインターハイという大舞台を意識していた。彼方さんより速い人が平然といるような、この状況。実力者が揃うこの戦場に、わたし自身も選手として立っている。

 ……こんな場所で堂々とチャンピオンジャージを着ていられる亜叶さんや嘉神さんの精神力は凄いな、って思ってしまう。わたしだったら、萎縮してしまって着られないんじゃないだろうか。

「……いや、違うよね」

 それじゃ駄目だ。

 わたし達はこのインターハイに勝つのだ。その為にここまで着たのだから、びびってちゃ駄目だ。

 関東最強どころか、日本最強の称号を得るため、今日から毎日、亜叶さんや嘉神さんみたいな実力者達と戦っていく。

「……鳥海、今、何か言ったか?」

 わたしの呟きを拾っていたのか、むつほちゃんがそう訊ねてきた。

「絶対に勝とうねって、そう言ったの」

 そう返す。

 そしていよいよ、インターハイの一日目がスタートした。


 インターハイ一日目は、軽井沢から国道18号線を通って長野市の中心部を目指す、およそ80キロのコースだ。スタート地点とゴール地点との標高は五百メートル近くも差があり、コース前半などは、短く登って長く下る、という場所があるものの、中盤を過ぎれば長い平坦と緩やかな下りが殆どだ。そして最後は市街地のど真ん中がゴール。

 先述の上り下りを除けばほぼ真っ平らな道ばかりの、平坦カテゴリに属するコース設定だった。途中の登りに設定されている山岳ポイントも、一番最低ランクの四級である。

「今年の一日目はスプリンター達の為に用意された闘いの場で、総合狙いにとっては肩慣らし、といったところか」

 というのは、彼方さんの弁。ちなみに去年は一日目が個人タイムトライアルだった為、彼方さんは三日目までずっと総合一位をキープしていたんだとか。三日目以降は最終日まで山が続き、強豪クライマー相手にTTで稼いだ秒差を失った、ということらしい。

「確かに去年の山岳でわたしが失速したことは事実だが、そんなに情けなくヒーヒー言っていたわけではないのだからな」

 と、弁明する彼方さんがちょっぴりかわいかったことも付け加えておこう。それはさておき。

 ――レースは軽井沢駅の近く、ゴルフ場などが並ぶ道路でスタートし、開始直後、いきなり数名の選手によるアタックが掛けられた!

 三人の選手がメイン集団を飛び出して、ぐんぐんと加速していく。集団前寄りに位置していたわたしは、その人達のゼッケン番号を見ることが出来たので、冷静に対処することが出来た。上位校や、或いはエース格の選手は混じっていない。

 それならコントロールもしやすいと判断したのだろう。わたし達だけでなく、メイン集団の先頭を牽いていた長野代表・鷹島学院の人達もその三人の逃げを容認し、全体の速度はそこで一旦、落ち着いていく。

 ちなみにこうした大きなレースで集団の先頭を牽くのは、何も別に罰ゲームとか嫌がらせとかではなく、一位のチームに課せられた役割のようなものである。自転車選手にとって、集団コントロールの義務は罰どころか栄誉と言っても良いかもしれない。だってそれは、この集団内で最も力のあるチームであることの証なのだから。

 そして、今日はまだレース初日で各チームの順位が付けられていないので、昨年優勝の鷹島学院がこうしてペースコントロールをしているというわけだ。

 逃げ集団とメイン集団とのタイム差はその後、最大で二分半まで開いた。但しそれ以上は開かない。鷹島学院の人も、ある程度追い詰めやすい距離と時間を計算しているんだろう。

 先頭を見やる。蒼いジャージに、他と比べてシンプルな一桁のゼッケンを付けた鷹島学院の人達は、揃いも揃って無茶苦茶強そうだった。なんというか、オーラが違う。さっきからずっと先頭を牽いてるのは『4』番のゼッケンを付けた人だけど、チームで一番大きい数字を付けているはずのその人ですら、尋常じゃない凄味みたいなのを背中から放っている。

 他は言うまでも無しだ。チームカラーらしい蒼とは対照的に赤いチャンピオンジャージ――中部大会優勝だろう――を着ている人もいて、更に『1』番を付けている人というのは、また別のジャージを着ている。

 白地で、半袖の袖口から胸のラインを横一直線に通る、五色のライン。あの人が鷹島の《神速のファンタズマゴリア》、天衣椿さんだというのは間違い無いんだろうけど……

「アルカンシェル」

「え?」

「九月に行われる全日本選手権U(アンダー)18で優勝した者が着用するチャンピオンジャージだ」

 彼方さんだった。複雑そうな、第三者からでは読み取れない表情を浮かべて、鷹島学院の方を見ている。

「天衣椿は去年、インターハイと全日本選手権の二冠をやってのけたからな。公式レースでは、あの栄誉あるジャージを着れるというわけだ」

「……凄い人達の集まりなんですね、鷹島学院って」

 呆然と呟くわたしに、彼方さんが説明してくれる。

「先頭を牽き続けているのは4番、《幻想の悪魔(マジック・ドライブ)由良(ゆら)那美(なみ)。全国でも名の知れたパンチャーだ。続く3番はエースクライマー、《月に村正(ムーン・チェイサー)四月朔日(つぼみ)りく。そして2番は中部地方チャンピオン、《神速のフェニックス》(おおとり)小鳥(ことり)。……まったく、嫌になるぐらい完璧な布陣だな」

「あううう、何だか凄い人揃い過ぎてもう覚えられ無さそうです……」

 さっきレース前に会った嘉神さんだって、同じぐらいの大物だというのに。わたしの小容量、且つ書き込み速度激遅の脳味噌はそろそろついていけそうにない。彼方さんは苦笑いしつつ、片手放し走行でわたしの頭を軽く撫でた。

「覚えきれないなら今は忘れて良い。どちらにせよ今の我々に大切なのは、目の前のレースだ」

「は、はい」

「連中との闘いが本格化すれば、後々嫌でも覚えることになるしな」

「……はい」


 ……しかしレース自体はその後かなり落ち着いてしまって、わたしとしては特にやることもない。周りに合わせて走るだけだ。久瀬水晶という強力なスプリンターを擁すれど、御弓はスプリント重視のチームではないので、今日のステージ優勝を狙う予定も無いし、アクシデントが無いかどうかだけ警戒していれば、それだけでいいぐらい。

 少し不本意ではあるけど、関東大会で綺堂さんが発した、サイクリングという言葉が脳裏によみがえってくる。

 とはいえ――

「三十五キロの地点には、中間スプリントの計測ラインがあるからな。仲良くサイクリング、というのもそうそう続くとは思えん」

 そう言ったのは、わたしのすぐ後ろを走る彼方さんだった。

「ポイントが欲しい学校が動き出す、ってことですよね?」

「ああ、この状況は一度崩れるはずだ」

 中間スプリントラインでは、通過順位に応じて、スプリントポイントが加算される。また、一日目と四日目の平坦ステージでは、それぞれゴール時の着順にもポイントが入るのだ。チームによってはタイムによる総合優勝よりも、そっちを獲りに来ているぐらいである。

「今のこの感じで行けば、各校のエーススプリンター達が狙っているのは四位通過のポイントだろうな」

 彼方さんのその台詞で、わたしは大会規約に書かれていた、スプリントポイントの加算量を思い返していた。

 確か一位の人が15ポイント。そこから順に、13ポイント、12ポイント、10ポイント、8、7、6、5、3、1……と続く。

「一位のポイントを、逃げの人に渡しちゃっていいってことですか?」

「中間のポイントより、平坦ゴールの方が旨みが大きいからな」

 確か、平坦ゴールでは三位までしかポイントが入らないんだけど、その代わりに倍のポイントを貰えたはずだ。つまり、30ポイント。これは大きい。

「中間の一位を格下に譲る代わりに体力を温存させておいて、何が何でも今日のステージ優勝を狙う方が、確実性は高い。どうせ今逃げている三人は、後々の争いに絡んでくることもないだろう」

「なるほど……」

 確かに、スプリント賞候補のような有力スプリンターがこの時点で逃げに加われば、集団は大混乱だ。抑えようとする人も出てくるし、ついてこようとするスプリンターも出てくる。そうなって肝心のポイントを獲り逃す可能性を生み出すよりは、着実に四位を狙おう、という人が多いってことだね。

「但し……四位は殆ど、決まっているような気もするのだがな」

 苦笑気味に、彼方さんがそう付け加えた。口の中の苦みを噛み潰しながら、というようなその言い方に引っ掛かりを覚え、わたしは聞く。

「これだけ人数がいて、それでも勝ちそうな人がいる、ってことですか?」

 だとしたらそれは相当な怪物だ。わたしのその疑問には、久瀬先輩が答えてくれた。

「いるわ。二年連続でスプリント賞を獲得した怪物が」

 珍しく緊張という感情が浮かんでいる久瀬先輩の視線を追っていった先。それは、鷹島学院に続いて、このメイン集団の前を積極的に引いているチームだった。『幌見沢農業』と書かれた、濃緑色のチームジャージを着たその人達。……あれが、有力候補なのかな?

 彼方さんが言う。

「北海道代表、幌見沢農業高校の三年生、田鎖(たぐさり)鉄輪(かなわ)。《スーパー・ソニック・スピード・スプリンター》と呼ばれる女だ」

「二年連続でスプリント賞ってことは……一年生の頃で既に、エースどころか賞を獲るぐらい速かった、ってことですか?」

「うむ。何せ奴の入学によって、幌見沢のチーム構成やレース方針が変わったぐらいだからな」

「そんなに影響力が!?」

「元々は総合系のチームだったはずだが、今ではすっかりスプリント賞の常連、といった感じだ。今年もやはり、アシストは全員スプリンター寄りで揃えてきているな……。いいか、夕映、よく見ておけ。ああして田鎖鉄輪の為に前を引いているアシストの三人は、全員が水晶や観廊らと同格か、或いはそれ以上のスプリント能力を持った選手だ」

「ぜん……ッ、えぇ!?」

 驚きのあまり、わたしは自転車からずり落ちそうになった。いや、それぐらい本気で驚いた、ってこと。だって久瀬先輩と亜叶観廊さんと言えば、今年の関東大会ワンツーフィニッシュのトップスプリンターである。そんな人と同レベルの選手を三人も揃えて、それをアシストに使うだなんて……!

 現役の陸上選手を子分にして、毎日パンを買いに走らせるような、そんな無駄な贅沢さがある。……この例えはむしろ分かりにくいかな? いやでもとにかく贅沢だ、って話。

 脚質のブルジョア、といったところだろうか。贅沢さに対するインパクトでは、ある意味鷹島学院以上なんじゃないかとすら感じてしまう。

 集団先頭付近を陣取る幌見沢農業、その最後尾に構えた田鎖鉄輪さんというその人のことを、わたしはよく観察した。日本最速スプリンター、という触れ込みから想像していたのは、彼方さんとかのように長身の体格だったのだけど、実際にはそんなこともなく、むしろ身長はわたしとそう変わらないぐらいだろう。

 スプリンターとしては、かなり小柄であるように思える。筋肉質であるとかそういう風にも、特に見えないし。これについては外見だけでは分からないものだけど。

 向こうの方が前を走っているので、当然ながら顔は覗えない。けど、背中のゼッケン番号は見えた。『201』番。如何に総合成績と無縁の人かがよく分かる。但しそれは、あの人が弱いってことじゃなくて……むしろ誰よりも速いスプリンターだから、ってことだね。

 集団全体が、ぴりぴりとした緊張感に包まれてきているのが、わたしの肌にも伝わってきた。タイム差から言えば、そろそろ前方の逃げ集団は中間スプリントラインを通過する頃だ。争うのか、それとも諍い無くスルーするのかは分からないけど、とにかくその三人によって、三位までのポイントは獲られてしまうことがほぼ確定している。スプリント賞が欲しい選手達からしてみれば、本来は渇望するようなポイントだったはずだ。だからこそこの後の中間四位争いは、白熱したものになる。

 ――そこでふと、思ったことがあった。わたしの、不思議な、疑問。

「久瀬先輩は、スプリント賞は狙わなくていいんですか?」

 千葉・御弓の久瀬水晶といえば、やはり関東最強クラスのスプリンターとしてそれなりの知名度もあるはずなのだ。今年の関東大会では亜叶さんに敗れたとはいえ、全国の強豪達と並んだって何の遜色もない、はずなのである。

 だったら久瀬先輩だって、そういった人達と脚を競いたいんじゃないか、って思ったんだけど。

「鳥海、馬鹿だなー。ウチは総合狙いのチームだから、スプリント賞まで狙いに行くよーな余裕はねーんだよ」

 答えてくれたのはむつほちゃんだった。面倒臭そうにこちらへ振り向きつつ、

「久瀬さんがスプリントポイントを狙いに行っちまったら、部長のアシストが俺らだけになっちまうだろーが」

「あ、そっか……。でも……」

「それこそ鷹島学院みてーに、アホみたいに豪華なメンバー揃えてりゃー別なんだろーが、ウチはオレとお前っていう、一年生の小娘を二人も抱えてるんだぜ。チーム力で劣ってるからには、目標絞らーねとどっちつかずの結果になっちまう」

「……でも」

 でも。

 しかし。

 やはりそれを『戦略だから』と切り捨てられず、勿体ないと感じてしまうのは、わたしがまだまだロードレース初心者だからということだろうか。

 ……でも。

 何だか今日は『でも』が多い気がするけど、でも。でもでも。彼方さんだって言っていたんだ。関東大会の日に、今のわたしと同じようなことを言っていた。だからきっと、彼方さんだって思っていない訳じゃないと思う。

 勝負をせずに勝負が決まるのって、すごく勿体ないし、残念なことなんだ。

 わたしのこの感覚が、子供じみた感傷(こだわり)に過ぎないことは分かっている。それを言い聞かせようとむつほちゃんが更に口を開き掛けたとき、後ろでわたし達の会話をずっと聞いていたらしい彼方さんが先手を打った。

「ふむ――水晶。今日の調子はどうだ?」

「悪くはないわ。良好」

「そうか。では、夕映」

「は、はいっ」

 いきなり呼ばれて、わたしは緊張に方を強張らせた。ひょっとしてだけど、怒られるんじゃないかとすら思って、少し警戒する。

 だけど、彼方さんの力続けて出てきた言葉は、少し違った。

「お前は水晶を連れて、中間スプリントポイントのアシストをして来るんだ」

「わ、わたしがでしゅかっ?」

 驚きのあまり、ちょっと噛んじゃった!

「流石にわたし自らがアシストに出向くわけにもいくまい?」

「それは、まぁ確かに……」

 総合狙いのエース自らそんなことをしてしまっては本末転倒である。

「今日はもう登りも殆ど無く、残りは平坦と下りだけだし、少しの間アシストが減っても、大きな問題は無いだろう。結橋に頑張って貰うさ」

「うげ」

 むつほちゃんがあからさまに呻いていた。

「彼方」

 久瀬先輩が、静かに聞いた。彼方さんの意思を確かめるように。

「わたし達がここで消耗してしまってもいいの?」

「良くはないさ。だからステージ優勝までかっ攫ってこいとは言わん。だが中間ポイントぐらいなら、集団内トップを獲ったあとで、わたしの元に戻ってくるのは難しくなかろう?」

 彼方さんはさらりと、並み居るスプリンターを蹴散らしてこいと言っている。それこそあの、北海道の最強スプリンター、田鎖鉄輪さんをも倒してこられるだろうと。

 そうしてチームとしての力を見せつけて、他のチームに対するアピールをしてこい、ということだ。

「なるほど。理解したわ」

 微笑して頷いた久瀬先輩が、わたしを見る。いつも通りの、気持ちが読み取れない平坦な表情――ではない。確固たる意志を持った強い顔で、久瀬先輩は言った。

「夕映。頼んだわよ」

「りょ、了解しました!」

 集団の中での移動はちょっと大変だったけど、周りの方々が少しずつスペースを作ってくれたので、わたしはどうにか久瀬先輩の前に付くことが出来た。丁度そのぐらいのタイミングで、集団が加速を始める。

 今や前を引くのは、殆どが北海道の幌見沢農業高校だった。鷹島学院はスプリント賞に興味がない為か、そこから少し下がった場所をキープしている。

 中間スプリントラインまでの距離はあと五キロほどなので、各校エーススプリンターの皆様もそろそろしびれを切らし始める頃合いだ。とはいえエースの発射自体はまだもう少し先。今はアシスト達がペースを上げていくタイミングだろう。幌見沢が先頭ではあるけど、他のチームも少しずつ先頭交替に加わって、加速を手伝っている。

 そして。

 むつほちゃんのようにスマートではないまでも、わたしは久瀬先輩を後ろに付けた状態で、大きく進路を変えて、とある一つの隊列の後ろに付いた。

「んん~? おぉ~、御弓の水晶ちゃんと、夕映ちゃんだ~」

 相変わらずのゆるい喋り方で、鶴崎女子の亜叶さんが笑う。

 亜叶観廊さんはアシスト三人に引かれて、メインの隊列からは大きく外れた位置で早くも、スプリントを開始しようとしていたところだった(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。

 超長距離スプリントの使い手、《距離無制限(ロード・セイバー)》亜叶観廊さん。チームの力を合わせれば、十キロぐらい手前からでもゴールスプリントの為のアタックが出来るという驚異の特殊能力を有するこの人なので、五キロ手前のこの時点で、既に動きを見せていた。

「へぇ~、今年の御弓は総合に目標を絞っているんだと思ってたけど、案外欲張りさんなんだねぇ~。それに、わたし達の発進を見抜いていたなんてね~。やるな~」

「亜叶さんなら流石にそろそろ、動き出す頃合いじゃないかって思いましたからね。わたし達も、鶴崎のトレインに乗せて貰おうかと思いまして」

「悪くない取引だねぇ~、埼玉・千葉の同盟。《スーパー・ソニック・スピード・スプリンター》が相手だし、ここは乗せていってあげようかな~」

「……ちなみに勿論、無賃乗車ってわけにはいきませんよね?」

「当たり前じゃない~。運賃の支払いは~、やっぱり夕映ちゃんの方だよねぇ?」

 ロードレースでは、チーム間での協調というのはよくある話である。今回のように、強敵を擁するチームに対抗するため、チーム同士で力を合わせて走るというのも、決して珍しい話ではない。

 亜叶さんは発射台(トレイン)の運賃としてわたしにも、前を引くアシストとして参加しろと要求してきているのだ。

「いいですよね? 久瀬先輩」

「不服は無いわ。むしろ、田鎖鉄輪を相手にするのであれば必要な措置と言える」

「ていうか~、あの子を相手にするんならこれでも全然足りてないかもだしね~。できればぁ、あと三、四人ぐらい、エース級のスプリンターを連れてきたいぐらいだもん~」

 ……いったいどんだけ速いんですか、田鎖鉄輪さん。

 集団の虚を突いて飛び出した鶴崎女子のトレインは、上手い具合に別の流れを作れていた。

 短距離で前を引いた亜叶さんのアシスト達は一気に二人減り、鶴崎と御弓、それぞれ二人ずつが残る。鶴崎の脱落が早い気もしたけど、今日の平坦ゴールに備えて、アシスト全員を完全に使い切ることは避ける作戦なのだろう。

 後ろを見やると、集団との距離はそれでも五秒以上十秒未満ってところ。この程度の秒差じゃ、全く安心なんてできやしない。

 残り二キロで、鶴崎のアシストと交互に先頭交替しながら、わたしはこの協調体制をどこまで続けるか計算した。ギリギリまで続けることが出来れば、短距離のスプリントでは久瀬先輩の方が有利なはずだ。だから亜叶さんも、そろそろ協調を打ち切って独走し始めたいところのはずである。

 向こうが動いたら、わたしがチェックに入って、久瀬先輩を発射させればいいだろうか。

 そんな方針を作る辺りで、後ろの集団から何かが届いた。

 何か、としか咄嗟に表現しようのなかったそれは、言い換えるなら、威圧感、と言うべきものだった。百以上のチェーンが軋む音を掻き分けて、それ以上の存在感を主張する、圧倒的なプレッシャー。

 わたしは思い出していた。

 一年生の頃から既にインターハイでスプリント賞を獲得していた、北海道の《スーパー・ソニック・スピード・スプリンター》、田鎖鉄輪。

 日本最速の女子高生。

 その威圧感に気を取られた。

 瞬間、鶴崎女子の二人がわたしと久瀬先輩を置いて、一気に速度を上げていく!

 協調体制を打ち切ってのアタック。つまり亜叶さんは、もう勝負を付けるつもりだということだ。

「久瀬先輩! わたしも行きます!」

「任せたわ」

 残りの距離は一キロちょっと。鶴崎最後のアシストも隊列を離れ、亜叶さんは単独ロングスプリントの体勢に突入した。追い縋るように、わたしも速度を上げる。

 ここで集団に追いつかれればもうおしまいである。ポイントは獲得できず、無駄に体力を消耗しただけになってしまう。というかこのままじゃむしろ、亜叶さんのアシストをするために来たようなものである。

 そんな失敗をするわけにはいかなかった。

 ――だけど、わたし達の目論見をあっさりと打ち消すように、幌見沢農業高校の引っ張るスプリンター集団は、わたしと久瀬先輩を呑み込んだ。

 折角鶴崎女子と協調のアタックまで仕掛けたというのに、一瞬で作戦が崩れ去った。更に、四人のスプリンターが集団から抜け出して逃げていく。それぞれバラバラのチームジャージということは、おそらく全員、四位狙いのエーススプリンターだろう。

「まだまだ!」

 ……追いつかれたからといって、わたしもまだ諦めたわけじゃない。条件が五分に均されてしまったけど、それで勝ちの目が無くなったことにはならないのだ。最後の数百メートル地点で、久瀬先輩をなるべく前に出しておくことさえ出来れば、それで充分勝負にはなる。

 だとすれば全てはわたしの頑張りに懸かっている訳であって……諦めてなんかいられなかった。ここからもう一回、タイミングを見極めて最後のアタックを仕掛ける!

 ――そこまで思考したところで、前に変化があった。

 集団を抜け出していたスプリンターの一人が、唐突に落車したのである。

 ゼッケン番号からして、わたしより上級生のエース級スプリンターであることはほぼ間違い無いと思うんだけど、スピードが出すぎていたせいなのか、もしくは落ちていたゴミや石ころか何かが車輪に引っ掛かったのか、とにかくスプリント中の高速状態で滑るように転倒したその選手は、かなりの大惨事になってしまっているようだ。

 不幸中の幸いか、路肩寄りに転倒したので、後続に事故を誘発するようなことは避けられた。しかし落車した当人は無事では済まないだろう。見えたのは殆ど一瞬だったけど、ジャージが破けて、擦過傷が出来ているのは分かった。頭なども強く打っているだろうし、リタイアって可能性も充分にある。

 大変だけど……痛いし苦しいし辛いけど、これがわたし達の走る道、ロードレースなのだ。

「落車したのは石川・湯乃鷺高校の《真剣白刃斬り(エア・エアー)》ね。でもあの子は頑丈だから、大丈夫」

「結構怪我してましたけど……」

「それでも大丈夫なのがスプリンターよ」

「……凄い世界ですね」

 気を引き締め直し、わたしは前を見た。と、いきなりもの凄い雄叫びが、スプリンター集団の中で上がる。ドラゴンの咆哮とも呼ぶべきそれは、茨城代表・大海高校の竜伎さんが上げたものだった。前を走る三人(更にその前を単独で走る亜叶さん)を追撃するべく、双頭の竜が速度を上げる!

 関東大会で、竜伎さんのスプリントを見ていたからだろう。わたしは半ば無意識の内に、その竜伎さんの後ろに付いていた。加速して集団を抜け出した辺りで、竜伎さんは御弓(わたしたち)が張り付いてきていることに気付いたのだろう。一瞬、身体を反らすような仕草を見せる。それが隙だった。

 わたしは瞬間的にスピードアップして竜伎さんを躱し、前に出る。失策を悟った竜伎さんが舌打ちする音が聞こえたような気がした。或いはそれは、アドレナリンを分泌する脳が起こした錯覚だったかもしれないけれど。

「あと三人……じゃなかった、あと四人!」

 亜叶さんを数え忘れてた。

 ともかく再び集団先頭へと返り咲くことに成功したわたしは、サドルから腰を上げ、立ち漕ぎ(ダンシング)で加速していく。残りの距離や体力からも、まず間違い無くこれが最後のチャンスだ。

 絶対に、ここは逃せない。

 中間スプリントのラインまで、あとちょっと。

 前の三人、その最後尾が近付いてくると、脚が若干楽になった。前のスリップストリームに入ったのだろう。そこで最後の加速をして完璧に追いついたところで、わたしは久瀬先輩を発射させようとした。

 瞬間、背中にちくりとした痛みを覚える。

 実際にはその痛みは錯覚でしかなかったのだけど、一度軽く振り返ることで、その正体はすぐに判明した。

 アシスト達の支援を受けていよいよ発進した、昨年の日本最強スプリンター、《スーパー・ソニック・スピード・スプリンター》の田鎖鉄輪さんだった。

 こちらが前を走っていることで、ようやくその顔を見ることが出来た。

 そばかすの残る顔に丸い眼鏡を掛けた、いかにも優等生、って感じの人だ。長めの黒髪は一本結びになっているけど、三つ編みとかにしたらさぞかしクラス委員長に相応しい感じになるだろう。

 全身の筋肉を総動員するスプリント運動の最中だというのに、表情はそれほどつらそうにも見えない。まだまだ余裕があるということだろうか。だとすれば、それはとんでもないことだけど。

「く、久瀬先輩っ! お願いします!」

 わたしは渾身の速度で走り、マシンが最高速度に達したところで進路を久瀬先輩に譲る。アシストとして出来ることはここまでだ。あとはもう、久瀬水晶というスプリンターに全てを任せるしかない。後方から迫ってくる選手達の進路を妨害しないように気を付けつつ、わたしは中間スプリント勝負の行方を見守った。

 関東大会での雪辱をはらすかのように、亜叶さん含め四人のスプリンターを見事に抜き去った久瀬先輩。

 しかし、そんな超高校級の攻防をまるで意に介さず、田鎖さんはあっさりと五人を追い抜かして、四位の中間スプリントポイントを獲得したのだった。


 上位校が中間スプリントの計測ラインを通過したことで、集団の形は再び元に戻り始めていた。アシストのためバラバラに散っていた各チームの選手達が、再度集まって大きな集団を作り上げていく。

 幌見沢農業の人達も一度仕事を終えたからだろう。集団の先頭は、再び昨年王者の鷹島学院が務めるようになっていた。おそらく今日のゴールが近付いてくれば、また前に上がってくるのだろうけど、とりあえずは集団内で体勢を整えて一旦休憩、といった感じだろうか。

 わたし達御弓も同様に、追いついてきた彼方さんとむつほちゃんらと合流して、隊列を組んだ。エースである彼方さんを最後尾にしつつ、先程必死の戦いをした久瀬先輩は三番手。わたしとむつほちゃんの一年生ペアで、前を走る(厳密には他のチームの人も大勢いてくれているから、完全な先頭ではないけど)。

 カラカラになった喉を潤す為に、ボトルの中の水をぐいぐいと流し込んでいる時、彼方さんが後ろから声を掛けてくれた。

「良くやったじゃないか、夕映。水晶が五位通過出来たのは、お前のアシストの成果だぞ」

「はい……でも」

「でも、どうした?」

「わたしがもっと速く走って久瀬先輩を引っ張れていれば、田鎖さんに追いつかれるより先にラインを通過出来たんじゃないか、って思って」

 結局の所、四位通過の田鎖さんや六位の亜叶さんとの違いは、アシストの能力値だったんじゃないかと、そう感じてしまう。

 けど。

「無茶を言うな」

 と、彼方さんはあっさりわたしの言葉を否定した。

「さっきも言ったが、幌見沢農業のアシストは全員がトップクラスのスプリンターだ。鶴崎女子だって、全国で通用するレベルのチームだぞ。そんな連中と張り合えたのだから、今のお前はもっと胸を張って良い」

「そもそも鳥海の場合、オールラウンダーのくせに純粋(ピュア)スプリンターとまともに張り合おーってのが欲張りなんだよなー」

 そう言ってくれたのはむつほちゃんだ。

 大会前、あのサービスエリアで綺堂さんと会ってから、口数の少なくなったむつほちゃんではあるけど、そんな優しい言葉でわたしを励ましてくれた。

 そして、スプリント勝負を終えてお腹が空いているらしい久瀬先輩が、大量の補給食を飲み込むような勢いでガンガン食べながら、

「ありがとう、夕映。お陰で良いお土産が出来たわ」

「お土産……?」

「私はスプリンターで、彼方のアシストだから。平坦ステージで彼方を助けるのが役割だった。けど、夕映が私をアシストしてくれたから、ああしてスプリント勝負に絡むことが出来たのよ。本来だったら、勝負に参加することの出来なかった、私が」

 その言葉と共に、久瀬先輩は優しく微笑んでくれる。

「だから、ありがとう、夕映」

「久瀬先輩……」

 わたしは久瀬先輩の方を見て、そして言った。

「食べながら喋ってると、良い台詞が台無しです……」

「だって、走ってお腹が空いたんだもの」

 やっぱり久瀬水晶という先輩は、マイペースである。


「さて。残りの距離はあと半分、というところだが」

 補給地点を通過し(ちなみに今日も、久瀬先輩のサコッシュは中身満載の特製品だった。何故かお弁当みたいなのまで見えた)、彼方さんが仕切り直すようにして言う。

「これ以降のわたし達は、当初の作戦通りに行動するぞ」

 その言葉に、わたし達御弓のメンバーは全員が同意の首肯をした。

 ……わたしの我が侭による、久瀬先輩の中間スプリント勝負への参戦というイレギュラーがあったものの、本来今日のチーム御弓は、有力校に遅れないようにすることだけを念頭に置いて走るのが目標だったのだ。

 勝負は第二ステージの山岳コース、そして第三ステージの個人タイムトライアルだ。

 今日は遅れさえしなければ、賞も順位も関係無い。

 少し後ろ向きすぎる気もするけど、こうした戦略こそが、ロードレースでは非常に重要となる。……ますますもって、さっきのわたしの我が侭というのはレースのセオリーからかけ離れた個人的感情だったのだということを再認識する。ううん、反省しなくちゃだよなぁ。だってアレでもしわたしや久瀬先輩が怪我したり、消耗しきって走れなくなっちゃってたりしたら、彼方さんは貴重な平坦アシストを失ってしまっていたのだ。

 審判バイクの掲げているボードで、タイム差を確認する。逃げ集団との差は、一分半まで詰まってきていた。

 前が遅くなっているというよりは、さっきのスプリント争いで集団のペースが爆発的に上がったからだろう。ここから差が再び開くか、それとも更に縮まって逃げ集団を吸収するかは、今現在このメイン集団の前を引いているチームの采配次第、といったところ。

 でも、ステージ優勝最右翼である幌見沢農業としては、逃げの三人はもう少し泳がせておきたいのではないだろうか。さっきの田鎖鉄輪さんの、別次元とすら思える圧倒的なスプリント能力を見た後では、そう考えることしかできない。だってゴール前で各チーム毎のスプリントになれば、誰もあの人には勝てないだろう。

 それぐらい、完全に、レベルが違う速度だった。

 どんな才能があっても抗えないような、そういう圧倒的な力だったんだから。

 あとは、他の有力な総合狙いのチームがどう考えていて、どう動いてくるかだけど……うーん、難しいなぁ。そんなの完全に読み切れないよ。

「なんだか悩んでいる様子だねぇ」

 すぐ隣から聞こえた、軽い感じの声に、わたしはそちらを見やる。

「察するに、他のチームの動向がよく分からなくて悩んでる、ってところかなぁ。《風のカナタ》を連れた御弓高校は今年も総合狙いだろうし、この後何が起きても出来るだけスマートに対応していきたい。けど他の人の考えが読み切れない、と」

 ニコニコの笑顔でわたしの心中を語るその人は、ベリーショートの茶髪を紫色のヘルメットで覆った、穏やかな雰囲気を漂わせる女性だった。ちなみにジャージの色は赤で、マシンの色は青。ハンドルのバーテープは右が白で左が黒。色の選択を間違えた、カラフルなパレットのような人である。

 ゼッケン番号は……『241』番。ジャージに描かれたチーム名は――

「ああ、自己紹介しておかないと、だよね。ボクは熊本県から来た、天艸(あまくさ)女子の二年生、金銅(こんどう)(あきら)。何の因果か、《異質なる世界樹(ミステリアス・マーメイド)》と呼ばれてる」

「天艸女子って確か……」

 レース前のミーティングで、彼方さんが警戒していた学校の一つだ。激戦区だったという九州大会の優勝校。よくよく見てみれば、その金銅さんの赤いジャージは他のチームメイトと違うデザインであり、それが亜叶さんや嘉神さんの着ているものと同様、チャンピオンジャージなのであろうことが分かる。九州地区のチャンピオン、ということだ。

「えと、千葉県御弓高校の一年生、鳥海夕映、です」

 異名はまだ無い。

「へぇ、夕映ちゃん、かぁ。かわいいね」

「か、かわいい!?」

 初対面の人にいきなりそんなことを言われたのは初めてなので、わたしは驚く。

「うん、とってもかわいい。凄く、ボクのタイプだ」

「タイプって……」

「ボクはかわいい女の子には目がないんだ。女の子が大好きでね」

「そ、それってもしかして……」

「まぁちょっとしたガチレズということかな」

「自分で言った!?」

「どうかな、夕映ちゃん。良ければボクのチームに来ないかい?」

「ふぇっ!? そんなの出来るわけないじゃないですかぁ!?」

 会っていきなりで凄いことを言う人は、走りながら片手をそっと伸ばしてきた。わたしの頬に手を添えつつ、

「大丈夫さ。愛があれば大丈夫。レース中、ボクのアシストをしてくれればそれで良いんだから」

「無茶苦茶言わないで下さい!」

「まぁいきなり言われても戸惑うよねぇ、夕映ちゃんも。じゃあここからは大人の女の話し合いだ。チーム内で、何か困っていることとか無いかな? あればボクが相談に乗ろう。ボクはかわいい女の子の味方だ――」

「そのくらいにしておいて貰えるかな。《異質なる世界樹(ミステリアス・マーメイド)》」

 突然、凛とした声が割り込んだ。彼方さんが会話に割り込みつつ、わたしと金銅さんの間に、マシンごと無理矢理押し入ってくる。彼方さんはわたしの頬に触れていた金銅さんの手を、軽い仕草で引き剥がしつつ、そちらを睨め付けた。

「……おや、これはこれは、《風のカナタ》か。二度目まして」

「? 初対面のように思ったが、違うのか」

「ええ。ボクは去年のインハイにも参加してますからね。まぁその時の結果は、ゼッケン番号をご覧の通りだったけど。だから貴女がボクを覚えていないのも無理はない」

 金銅さんのゼッケンから推察するに、去年のチームとしての順位は二十四位。三十校以上が参加している中でこの順位は、かなり下の方ということになる。

「昨年まで弱小チームだったはずの天艸女子を、一躍九州最強の一角に押し上げたのは、お前の力によるものだな。この一年間で何かを掴んだか」

 彼方さんの目がきらりと光る。だけど、そんな視線に晒されても、金銅さんは微かな怯みも見せなかった。戯けてるのではないかってぐらいに、優しい笑顔で頷く。

「自らの才能に目覚めた、ってとこですかね。眠らせていた、圧倒的な才能(ちから)に。そう言う意味じゃあ《風のカナタ》、貴女も似たようなものでしょう。一昨年は平凡なアシストに過ぎなかった貴女が、去年のインターハイでは突然の五位入賞」

「……自分の資質を過度に軽んじるつもりはないが、わたしが昨年五位を獲れたのは、支えてくれた仲間がいたからだと思っているよ」

「初日の個人TTで作った優位を維持した結果じゃないですか。誰のものでもない、純粋に貴女一人の力だ」

「違うな。いや、強く否定はせんが。ただ確実に言えるのは、支えてくれる仲間いなければ、去年のわたしはもっとタイムを落としていただろう。だから一人の力ではない」

「それですよ、風咲彼方」

 唐突に。

 金銅曜さんは、彼方さんを指差してまで、そう言った。それまで彼方さんの言葉を否定し続けていたはずの金銅さんが、掌を返したように、いきなり肯定し始めたのだ。

「仲間の力。良いものですよね」

 語りながら、金銅さんは唇を笑みの形に歪めていく。吊り上がる唇の両端は、どうしてか邪悪なそれに見えた。但し、綺堂さんとかの持つ雰囲気とは、また違う何かに。

「やはり思っていたとおり、貴女はボクに近いみたいだ。いや、ボクが貴女に近いのかな。まぁどちらにせよ、光栄ですよ、《風のカナタ》。お近付きの印は……そうですね、また今度と言うことで。貴女が今後、総合争いに残っていたら、ね。……じゃあね、夕映ちゃん。また今度、ゆっくりお話ししよう。デートしようね」

 金銅さんはアシストに連れられて、少し前の方へ上がっていくようだった。最後には何故かわたしの方に手なんか振りつつ。

 天艸女子の人達が完全に離れてから、わたしは呟いた。

「……何だったんでしょう、あの人」

「よく分からんが……とにかく、経歴と成績からして厄介な相手だと警戒していたのは、どうやら間違いではなかった、ということだな。ちなみに、夕映」

「なんですか?」

「金銅曜からのデートの誘いには、応じるのか?」

「いやいや、嫌ですよっ。なんで行かなくちゃいけないんですかっ」

「そうか。……うん、良い子だ」

 わたしは何故か、彼方さんに頭を撫でられた。

 彼方さんに撫でて貰うのは嫌じゃないから、別にいいんだけど。


 レースは残り三十キロの地点で動きを見せた。

 それまで果敢に、実に五十キロの間を逃げ続けていた三人が、とうとうメイン集団に捕まったのだ。この距離で吸収されたということは、チームとしての作戦というよりは、どちらかと言えば体力的に逃げ切れなかった、という感じだろう。

 そしてそれまでの三人が集団に呑み込まれるのと同時に、カウンターアタックが発生する。

 アタックを仕掛けたのは四校だったけど、その中にはエース級の人が混ざっていたようで、集団もしっかり追走し、即座に捕まった。アタックは失敗だ。

 そこからは誰のアタックもなかなか成功せず、逃げ集団が作られないまま、じりじりとゴールまでの距離が迫ってきている。

 集団内の空気が、少しずつピリピリと張り詰めていくのが感じられた。このプレッシャーは、今日の平坦ゴールを狙っている、スプリンターを擁するチームの放つものだろう。中間のスプリントポイントの上位は先程の逃げ集団に参加していた人達が獲得していたわけだけど、この平坦ステージのゴールで一位を獲れば、倍の30ポイントが入って、一気にポイントの一位になれるわけだし。

 中間スプリントポイントと違って、そこで消耗しきって隊列が崩れても問題無いのだから、《スーパー・ソニック・スピード・スプリンター》に勝つためには、そういう機会を狙って行かなくてはいけないはずだ。

 ……けど、そんな田鎖鉄輪さんは平坦ゴールもちゃんと獲得する気満々なようで、今のこのメイン集団も、すっかり回復したらしい幌見沢農業高校の皆様が完全に前を引っ張っている状態だったりするのだ。

 ぶっちゃけ、速度はかなり速い。

 平坦が苦手なむつほちゃんなんて、さっきからもう必死になって走っているぐらいだし。見渡せば、他のチームにもつらそうな選手はいくらかいる。たぶん、クライマーの人達だろう。

 残り十キロのゲートを潜る。その後暫くしてから、鶴崎女子がチームアタックを仕掛けた。

 アシストの一人が、全力の立ち漕ぎ(ダンシング)でチームを引っ張り、幌見沢農業に支配された集団を抜け出していく。

 亜叶さんは、ここで勝負を付ける気だ。中間では久瀬先輩と田鎖さんに追い抜かされての六位通過だったけど、今度は追いつかれないよう、事前にもっと距離(アドバンテージ)を作ってからの超長距離スプリントをしようという目論見だろう。

 無論その程度のことは、亜叶さんの特技を知っている人であれば簡単に想像が付く。

 幌見沢の人達もわたしと同じことを考えたようで、集団を引っ張る速度は、グングン増しているようだった。

 他にも、先程の中間スプリントラインで見掛けた顔触れが、ちらほらと集団前寄りに上がってきている。

 今日のゴール、即ちステージ優勝を狙うスプリンター達だ。

 でも……あれ? こんなにゴールが近い状況で逃げ出した人がいるのに、スプリンターの人しか前に上がってきていない。御弓(うち)は集団中程だし、金銅さんや嘉神さんら他の有力校も、大体同じぐらいの位置取りになっている。

「他のエースはこれでいいのかな?」

「いいのさ。これ以上前に出たいチームがいたとしても、それがスプリンター系である限り、我々は見送ることにするぞ」

 疑問符を浮かべていたわたしに、彼方さんはそんな指示を出した。そして、簡単に説明してくれる。

「今日のステージ優勝候補、亜叶観廊や田鎖鉄輪といった選手達は皆、生粋のスプリンターだ。だから総合優勝を狙うチームは、そういったスプリンターの戦いに無理について行こうとはしない」

「でも、それじゃタイム差が付いて……あ、でも明日挽回すればそれでいいってことですね?」

「正解だ。山岳では平坦以上に明確なタイム差が付くことになる。だから今日スプリンターが多少早めにゴールしたところで、明日にはそれも引っ繰り返る」

 なるほど、だから金銅さんや嘉神さんとか、総合狙いの有力校は動かないんだね。

「ウチも同様に、な。むしろこの状況下で警戒する必要があるのは、そういった動かない有力校の方だろう」

 それまでより僅かに緊張を孕んだ面持ちで、彼方さんは周囲に視線を巡らせた。今現在前に上がろうとしていないチームというのは、単純に前で勝負をするだけの力が無いか、或いは明日を見越して温存している実力者か、ということだ。

 もしもそういった、爪を隠している鷹達が動くようなことがあれば、わたし達も動かざるを得ないんだ。特に今日のコースでは、わたしや久瀬先輩こそが、彼方さんのために働くことになる。

「そう固くならなくても大丈夫だ、夕映。お互いがお互いを警戒し合っている間はそうそう動きなど起こらんし、起こったとしてもたいしたことは出来んからな」

「それならいいですけど……」

「今、それ以上に警戒するべきは、落車事故に巻き込まれることだ。速度上がると落車の危険性も増す。そう言う意味では、前の方が安全という見方もあるのだがな」

「でも、あんなに激しく争ってる前の方に行くのもそれはそれで危ないような気が……」

「だから状況を見極めて動くんだ。そういった判断は、以降全て水晶に任せることにする」

 わたしは頷き、一度周囲をぐるりと見渡した。

 普通であれば何も起こらない、という理屈を、どこまで信じていいのか分からなかったからだ。別に彼方さんを疑うというわけではないんだけど、わたしの彼方さんに対する信頼に匹敵するぐらい『普通』を逸脱してしまっている人が、この集団の中には大勢いるのだから。

 後方を見やる。

 同じ集団ではあるけど、結構後ろの方に、不気味な沈黙を続ける巌本高校の黒いジャージが見えた。


 但し結果から先に言えば、彼方さんの言葉通り、大したことは何も起こらなかった。ステージ優勝を欲しがっている多くのチームによる戦いが行われたものの、それはそれ、予測と常識の範囲内であり、驚くほどの出来事とは言えない。

 一日目、平坦ステージのステージ優勝は幌見沢農業高校の田鎖鉄輪さん。二位は鶴崎女子高校の亜叶観廊さん。三位は愛知代表・名古屋藤村(なごやとうそん)高校の留学生リタ・バレーラさん。

 わたし達御弓高校は、トップのスプリンター集団からほんの少し遅れはしたものの、他の有力校と大体同じ集団でゴール。

 ルール上、一塊の集団でゴールするとタイム差は付かないので、今日のレースではとりあえず何の優劣も付けられていない。

 勝負は明日以降に持ち越し、ってことだ。

 明日の第二ステージは、峠を越えた先にゴールがある、山岳カテゴリ。

 総合優勝を狙う選手や、山岳での栄誉を欲する選手が、いよいよ動き出す。




第1ステージ スプリントポイント

着順   名前   学校名    ポイント

1   田鎖 鉄輪   幌見沢農業高校   40

2   亜叶 観廊   鶴崎女子高校    33

3   リタ・バレーラ 名古屋藤村高校   24

4   荒河音 纏   黒森工業高校    15

5   中星 凛子   柿嶋高校      13

6   笹中 幻詩   瀬戸口高校     12

7   久瀬 水晶   御弓高校      8

8   夏峰 光希   白山毛欅高校    6

9   釜井 鎌    坂井西高校     5

10  竜伎 硝子    大海高校     3

11  右京 左織    四条大宮高校   1



第1ステージ 山岳ポイント

着順  名前     学校名    ポイント

1   中星 凛子   柿嶋高校    1



一日目 総合成績

順位   名前   所属校     タイム

1   田鎖 鉄輪   幌見沢農業高校   2:05:06

2   亜叶 観廊   鶴崎女子高校   + 2

3   リタ・バレーラ 名古屋藤村高校  + 2

4   右京 左織   四条大宮高校   + 2

5   釜井 鎌    坂井西高校    + 2

6   大國 うさぎ  皿石学院     + 2

7   竜伎 硝子   大海高校     + 2

8   夏峰 光希   白山毛欅高校   + 2

9   坂神 来胡   花泉大附属高校  + 2

10  指船 清見   瀬戸口高校    + 2

11  鬼島 匁    湯乃鷺高校    + 2

12  小森 楓子   幌見沢農業高校  + 2

13  偉能 蓮    三柴高校     + 2

14  荒河音 纏   黒森工業高校   + 2

15  葛井 雅    幌見沢農業高校  + 2





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