恋奏歌①
皆が帰った丘の上。
気が付くと、私は約束の樹を眺めていた。
ここにいるのは
私と、エンの『身体』だけで。
この結果を
こんな未来を
人は、幸せって呼ぶの?
だったら、私は、幸せになんかなりたくなかった。
不幸なままで良かった。
ずっと、エンの側に、いられたのなら。
どうして、こうなっちゃったんだろう。
今にも、責め立ててしまいたかった。
責め立ててしまいそうだった。
間違いなく、私のために行動した村人達を。
私のために
エンを殺した皆を。
……あぁ、そうか。
エンが殺されたのは、私のせいだったんだ。
償わなきゃいけないのは、やっぱり
私の方だ。
「ごめん。ごめんね。
でも、でもね。私は、エンを、死なせたくなんかなくて、」
ただ、ずっと
「一緒に、居たかった……んだけどなぁ」
どうして
こうなっちゃったんだろう。
誰か、教えてよ。
『エンを好きになったこと』は
そんなに罪深いことだったのですか?
「エン、私ーー
エンのこと、好きだったんだよ?
言え、なかったけど。
初めてあった時からずっと、」
抑えきれない涙が、ぽたぽたと地面に吸い込まれていった。
……自分でも、馬鹿みたいだなぁと思う。
泣いたからって、何も変わらないのに。
私、こんなに泣き虫だったかな?
エンがいなくなってから、泣いてばかりな気がする。
「一緒にいた時は、わからなかったけど。
君の存在は、こんなに大きかったんだね……」
手を伸ばして、冷たい樹の幹に触れて。
現実を、受け止めたら。
『もう、いいや』
……確かに、そう、感じた。
こんな世界、大っ嫌いだ。
こんな世界、間違ってる。
私が一番悪いんだから
私を死なせてくれれば良かった。
そうすれば
村人は、人殺しなんてしなくて済んだ。
エンは、殺されなくても良かったのに。
「ごめんね、エン。
でも、私に出来るのは、これだけだからーーーー」
これから私がすることは
褒められることじゃないのかもしれない。
皆、怒るだろうなぁ。
だけど、私は。
次回、村人視点の話です!