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幸福日記

このシーン書きたかったんです。

ーーこんな状況で、不意に思い出す。

フレアに、初めて会った日のこと。


あの日も、星は出ていなくて

その代わりに、雪が夜空を染めていた。


その光景は、まるで時が止まっているみたいで

酷く、息苦しかったのを覚えている。


そんな、夜。

フレアは、この樹の下に立っていた。

多分、泣いていたんだと思う。

ここなら、僕以外の誰にも見つからないから。

……まぁ、僕は気付いてしまったんだけれど。


赤くなった目元をさらに擦って、涙を隠そうとする姿を

なんとなく、見ていられなくて。

僕は、『村の人に話しかけてはならない』かったのに

声をかけずにはいられなかった。


人と話すのなんて随分久しぶりだったから

自分の気持ちを、ちゃんと伝えられた自信はない。

その上、言った途端にフレアがまた泣き出したから

どうしていいかわからなくて

困った記憶がある。


それから、フレアと会うようになって

こういうのを人は、『幸せ』と呼ぶんだと知った。

だけどやはり、それは許されない。

『僕とフレアが一緒に居られる』のは

いつもフレアを見送っている村の人間が、許容してくれている期間だけ。


こんな日がくることは、数百年前から決まっていた。


「ぐっ……」


腹部を蹴られて、一瞬意識が飛ぶ。

……あぁ、もしかして今までの、走馬灯だったんだろうか。

このままだと、死ぬだろうし。


「げほっ、ごほ、」

「お前、何でフレアに近付いたんだよ。

近付かなければ、殺さなくても済んだのに。


お前だってあの子に関わったらどうなるか、わかってたんじゃないのか」


ーー少なくても、ハッピーエンドにならないことは、わかってたな。


それでも、一緒に居ることを選んだのだから

殺される覚悟くらい、出来ている。

出来ていた、はずなのに。

僕の頬を伝う、この雫は何?

あの日の、フレアと、同じ雫。


……そうか、僕は

死にたくないのか。


「ごめんな。死んでくれ」


僕の首に、誰かの冷たい指が触れるのを感じた。

そして、言葉とは裏腹に

必要以上の力が、首を締め上げていく。

息が、出来ない。


「ふっ……うぅ、あ、」


死ぬのも、約束を破るのも嫌だけど

彼等の行動もまた、一つの正義。

『大切な人の幸せ』を、祈っての行為だから。



ごめん、フレア。


いままで、ありがとう。


君のおかげで、幸せだったよ。





感動にならなかった……

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