全てのオワリと全てのハジマリ
「おはよー、灯」
「うん、おはよ」
日の当たる坂を登りながら、小学校からの親友と笑い合う。
私の名前は灯。
数億年前までは、『フレア』だったんだけれど。
あの日、私は確かに死んだ。
もう二度と目覚めることは、ないはずだった。
だけど、16年前の今日ーーーー
私は、普通の家庭に生まれ直したんだ。
『フレア』じゃなくて、『灯』として。
フレアだった時の記憶を、持ったまま。
「ねー灯、どうしたの?なんか元気ないね」
「そうかなぁ、いつも通りだよー?」
だから、私は今でも覚えてる。
村のみんなのことも
初めての恋も
……もちろん、エンのことも。
時々胸が痛くて泣きそうになるけれど
それでも、『忘れたかった』なんて思わなかった。
覚えていられて、良かった。
生まれ直した世界は、今までとは全然違っていて
テストとか友達とか、色々あって。
私は幸せなんだと思うけど、でも
やっぱり、さみしいよ。
たくさんの場所を探したり
私達が居た村のことを調べたりしても
結局、エンは見つからなくて。
遂にもう、16年目。
「そういえば、今日雨降るらしいけど……
傘持って来た?澪」
「うっそ、持ってないよ!」
『前世から好きだった人が見つからなくて……』なんて言っても、信じてもらえるわけがないから
咄嗟に天気の話で誤魔化す。
澪は、親友なだけあって
それ以上は問おうとしないでくれた。
心配をかけたくはないから
私は精一杯元気そうに振る舞う。
こんな作り笑顔も、だいぶ慣れた。
帰り道は、天気予報通り雨が降っていて。
少し待って見ても止むそぶりはなかったから
部活がある澪とは玄関で別れて
私は一人、帰路に着いた。
雨の音が、沈黙を破る。
朝と同じ道なのに、空が暗いだけで
別の景色に見えた。
こんな日は
いつも以上に寂しくなるから困る
「……会いたいなぁ」
そもそも、この世界に居るかどうかもわからないんだ
期待するのは、おかしいとも思う。
だけど、望まずにはいられない。
『またエンに、会いたい』って。
ふと、水たまりに映った自分が
ひどく情けなく見えて
私はため息を吐いた。
私がなやんでいる間も雨は強くなる一方で
「早く帰ろう」と思い
いつもは通らない裏道に進み、顔をあげたーーーー
瞬間。
私の思考は、唐突に停止する。
「あ、……」
街一番の大きな桜の樹。
雨に濡れた桃色の花弁。
視界を霞ませる土砂降りの雨。
樹を見上げている、黒い髪の男の子。
少しだけ、身長や雰囲気は変わっているけど
相変わらずその左目は、光を映していなかった。
懐かしい感覚。
間違えるはずがない。
ーーだって、ずっと探し求めていたんだから。
そして、何より
脳が、心臓が、心が、痛いほど叫んでいる。
エンが、そこに、居ると。
ちょっと展開早過ぎですかねぇ?




