表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代と蜘蛛  作者: Ex
3/5

蜘蛛の生態

「君は蜘蛛についてどのくらい知ってる?」無地の平世界を切り裂くように蜘蛛男が突然僕にそう尋ねた。


「殆ど知らないな。害虫を食べてくれるだとか、毒のある種がいるだとか、そんな瑣末なレヴェルだよ」


 そう言うと蜘蛛男はどこか落胆の影が身を潜めた会釈をした。窓から差し込む光の具合のせいかもしれないけれど、とにかく僕はそういった印象を抱いた。


「必死で糸を紡ぐんだ」

「蜘蛛というのは糸を紡いで巣を張らないと生きていけないんだ」


「それはとても大変だろう」と僕は言った。


「そうなんだ。糸を沢山紡いで巣を大きく広げるのはとても大変さ。今日紡いだ糸は明日には昨日になって、昨日紡いだ糸は明日には一昨日になるんだ。そういうのって、なんだかとても疲れるんだ」と蜘蛛男は言った。


 べとりとした汗が体から噴き出し、シャツの袖でその汗を拭った。僕はテーブルの上にあるリモコンを手に取り、エアコンの設定温度を二、三度下げた。

 そして僕は毎日糸を紡ぐ生活を考えてみた。朝起きる、糸を紡ぐ、夜は散歩をする、そして朝が来る。どんどん巣が大きくなる。どんどん僕は総体を見回すことが困難になり、総体は僕を見回すことが困難になる。深い海のような底の見えない深遠の中を、僕は必死にもがき続ける。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ