ヌヴェル17 森の精霊
“世界の森公園“が再開されるのではないかという噂が広まり、それに呼応するかのように公園の管理者である百森フェアリー女史の会見があると、多くの報道関係者が集った。
「この“世界の森公園”は、文字通り世界の森を模した公園として、祖父である百森耕造が半世紀前に一代で造り上げたものです。ロビンフッドで名高い“シャーウッドの森”、アーサー王伝説で有名な“ブロセリアンドの森“、グリム童話や数多の伝説の舞台となった”シュヴァルツヴァルトの森“、森の主バサジャウンやラミアと呼ばれる精霊の住む”イラティの森“、死の沼と言われる”デッドフレイの森“など有名な森がこの広大な土地に生まれました」
百森耕造の孫と言われる百森フェアリー女史の会見が続く。
「祖父は、当初は多くの人に森の魅力を体験してもらえればそれでいいという思いだったのですが、しだいにビジネスワークとして考えるようになりました。その結果、名もなき森から“精霊”を手に入れ、それを見世物にしたりするようになりました。真の森の姿を見失ってしまったのです。やがて森の怒りに触れ、狂人となった祖父は森に火を放ち、世界の森公園は焼失してしまいました。祖父はそのときに亡くなりました。精霊は何処かに消えてしまいました」
百森フェアリー女史は振り返り、暫く“世界の森公園”を眺めた後、会見を続ける。
「その後、父は森を再生しようと苗木を植え続けました。祖父は本当は森を愛していた。その祖父の本当の心をもう一度形にしようと来る日も来る日も木を植え続けました。その結果が、皆さんの目の前に広がるこの森なのです。まだまだ若い成長途上の森ですが、森は我々の資産であり、資源であり、かけがえのない存在なのです。実は精霊も戻ってきているのですよ。この森の真の姿を見極めて」
百森フェアリー女史は、再び振り返り、両手を高々と上げ森を抱きしめるポーズをとった。
「ゆえに私は宣言します。“世界の森公園”は再開しません。一つの森として、大切に保存し、今後の成長を見守って参りたいと思います。皆さまもどうか温かく見守り続けてください。お願いいたします」
深々と頭を下げるフェアリー女史。暫く瞬き続けるフラッシュ。
記者A「百森耕造氏に孫っていたかな?」
記者B「いや、聴いたことがないなぁ」
記者A「だよなぁ。じゃ、彼女は一体だれなんだろう?」
記者B「ひょっとして森の精霊だったりして」
二人が見返した百森フェアリー女史が輝いて見えたのは、たかれ続けるカメラのフラッシュだけのせいではないかもしれない。
参考文献 ビジュアルで学ぶ木を知る図鑑 著者 セルジュ・シャール 株式会社グラフィック社




