1話 ありえないことばかり
ガヤガヤ………
日曜日。
本当は来たくなかったショッピングモールに私は来ている。こんなとこでクラスの人達に出会ったら絶対ヤダ。もう帰りたい。そんな事を思いながら、私はママの後ろを歩いている。ママが「久しぶりに一緒に出かけよう!」とか言わなければよかったのに。私はもう中学生だよ!。嫌だよママと買い物をしているところをクラスの人たちに見られたら……。友達と休日遊ぶ予定を毎週作っていない私も悪いけど…………。
ガヤガヤ………ガヤガヤ………
…………今、何が起きた?
騒がしかったショッピングモールが静かになった。人の声が聞こえなくなった。
いや、声を発する者がいなくなった。
この場所に私以外誰もいない。そこの椅子に座っていたおじさんも、レジにいたお姉さんも、走り回っていた小学生も、知り合いに似た後ろ姿をしたあの子も、抽選会の行列も、ママも…………。一体何が起きてるの?もしかしてこの世界には私しか存在してなくて、今までのは私が見ていた幻?いいやそれだったら私はそもそも私は存在していないはず。
「だれか……いる?……」
普段家でしか話さない私の小さな声が広いショッピングモールでこだまする。だけど誰も返事は返してくれなかった。
「あ、いた。」
「ぎゃあっっ!!!」
思わず変な声を出してしまった。だって誰かの声が聞こえたもん!そう、とっても聞き慣れた声……。私は振り返った。それと同時に後ろの誰かが喋った。
「や……やっほ。過去の私。私は未来のミカ。」
「はぁ?!未来の私?!」
美香というのは私の名前だ。久しぶりにママとパパ以外にミカという名前を呼ばれた気がする。でも未来から来た人なんて怪しい。未来人なんてありえるわけない。でも今、人が消えるというありえないことが起きているわけだから何とも言えない。
「あの〜……。3分しか過去に戻れないから、ちゃんと話、聞いてよね?。」
「あっ、はい!!」
背も高くて、頭が良さそうで、スタイルがいい、この人が未来の私だということは信じられない。もし本当に彼女が私だったとしたら、自分が映った動画や写真をあまり見たくないように、彼女も私を見たくないと思うだろう。でも、この世界に私しかいないのであれば、『未来の美香』と装える人はいないだろうし。これは半信半疑で信じるしかないのだ。
「あなたに伝えたいことは3つあります!!まじで一回で聞いてね。」
「ほぅ。」
「一つ目、私には闇の能力があります。」
「あ~……………。へぇ。」
いきなりのイタすぎ発言。もし、この人が本当に未来の私だったとしてもこの人みたいにはなりたくありません。うん、信じろって言われてもねぇ……。『闇』ってつく時点で信じれないんだよ。なんだよ特殊能力って。
「具体的には時を司る能力なんだけど…って聞いてる?」
「聞いてるよ。で、何その闇の能力って。」
「闇の能力は一人づつちがう能力となっているんだけど、それを説明する時間はない。ただこの能力はとある宝石がないと使えないんだ。」
へぇ。こいつが未来に帰って、その石を見つけれたら試してみますわ。でも質問に答える暇はないみたいだね。いや、答えられないのか。本当に彼女が未来から来ていて、能力が使えるならば、その能力で過去に来たのだろう。いいじゃん。この人が未来に戻ることができる&私が能力を使えるだったら、彼女の言っていることは正しいってことになる。
「二つ目、あなたはタイムマシンをこれから創ります。」
「はぁ?」
言ってたことが違うんですけど〜!時を渡れる能力を持ってるんじゃないんですか?能力持ってるのにタイムマシンを創る必要がある?そもそも作れると思う?
「なんでタイムマシンを作る必要があるわけ?」
「そのタイムマシンで今よりも過去に戻るの。そして人が消えるのを防ぐのよ。そしたら、人が消えた世界線と人が消えなかった世界線は……
「パラレルワールド!!パラレルワールドを渡り、時も戻せるマシンを作ろうってこと?」
多分目的は2つあると私は思う。1つは今言ったパラレルワールドを渡ること。もう1つはおそらくだが、一緒に時を渡りたい者がいるのだろう。さっき、闇の能力は『一人づつ』ちがう能力と言っていた。つまりは私の他にも生き残りがいるのだろう。私は少し安心した。
「ああ、君を探すのに無駄な時間を使っていたみたいだ。もう時間がない。三つ目……
彼女の体が少しづつ透明になってゆく。未来へ帰されるのだろう。やっぱり彼女は未来人だった。彼女が私かどうかは分からない。だけど、
「まって………行かないでよ!」
一人は寂しい。この世界に生き残りがいたとしても、しばらく会えないと思う。しばらく一人を過ごす事になると思う。きっとこの人が帰ったらママもみんな戻ってくるということはない。大切な人がいなくなる。一人になる。せめて君といたい。未来の私でもいい。誰かと会うまで一緒にいて。一人じゃ……
「あいつに喰われるなよ。」
私以外のだれもその場所にはいなくなった。また、一人になった。もうちょっと『人』と話していたかった。誰の声も聞こえなくなった。静かになった。
私は『あいつ』には会ったことないし、聞いたこともない。だけど何故か知っている気がする。夢で見たのかもしれない。
怖い。人が消えた世界が。
怖い。あいつに遭遇することが。
怖い。他の生き残りがどんな人なのか。
タイムマシンを創らなきゃいけない世界線の私の運命。ありえないことばかりの現実世界。
泣いたのは久しぶりだなぁ。
こんなに泣いたのは、はじめてだと、私は思う。