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【神話生物】事件 後編 7

「【観測拒否アルベレイター】、ゲームスタート」



安倍怜音が【観測拒否アルベレイター】を使用する。


(ーー未来なんて大嫌いだ。


だが、その未来に抗うために、全員がどれだけの負担を強いただろうか。


死ぬかもしれない。


でも、もういい。


観測拒否アルベレイター】を無視して、須藤与一に託した時から、未来なんてもうどうでもよくなった)


「【観測拒否アルベレイター】……動けよ、俺が欲しい未来のために!!!! 俺は、皆が死ぬ未来を、観測拒否する!!!!!!!」



いつもと違う。


与えられた未来を回避するためのシミュレーション能力が。


高度な演算を、観測をしたくない未来の除去に使われていく。


機器に与えられた過負荷が、熱を帯びる。


安倍怜音のスマホを掴む手が、その熱で火傷していく。


だが構わない、それでもーーーー。




そして、見えた、唯一の光。


「!? は、はは……! うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



それは、不意を打った攻撃だった。


上手く背後に回って攻撃出来たことが、幸福だった。


それ以上の幸福は無い。


たった一撃を与えたところで、戦況は変わらない。


なにせ、致命傷を与えても蘇るのだから。













それこそが、逆転の一手だった。


それは、盲点だった。




「? え、が、ぁ、ぁあ?」


如月桐火が膝を着いた。


噴き出る汗、止まらない苦悶の表情。





ーー安倍怜音が打ち出した技は、考えれば妥当だった。


人体の弱点を突く攻撃。


それは、死に至らぬ技であっても苦痛からは逃げられない。


ある種の拷問技で相手の心を折る。


それこそが、安倍怜音が導き出した答えであり、【観測拒否アルベレイター】が出した正解だった。




「う、嘘……! なんで!?」


小笠原雹香が悲鳴のように叫んだ。


「ま、まさか、そんなっ」


東 呉十郎が震えた。その攻撃は、自分が真っ先にやるべきだったと後悔して。


「……What? What happened? Am I having a nightmare?」


シルク・ストロベリ―がその攻撃箇所を指さした。


「む、むぅ!? むぅ!!?」


松前鈴鹿が顔を覆った。指の間からちらちらと見ている。


「--そういうこと、なんだね。怜音!!!!」


安倍時晴がすぐさま動いた。ニ撃目に向かうために。


そして、蘆屋緋恋は、にやっと笑ってステージの端にダッシュした。








安倍怜音が、叫んだ。


「こいつっ!!! 男だあああああああああああああああああああ!!!!」




「「「「「「な、なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」」」」」」



「ナイス報告だ!!!! 安倍怜音!!!!!!!」



安倍時晴が如月桐火が両手で抑えている股関部を、手ごと撃ち抜くように全力で蹴り飛ばした。


「ぎゃっ!?!?! ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!?」



如月桐火が、吼える。


それは、奇しくも、人生初の痛みだった。


知らない痛みだった。


何せ彼女は、いや。


彼は、「如月桐火」あれかし と育てられた存在。


男であっても、女と言えば女として育てられた。


それだけの、話しだった。


時晴が爽やかに笑う。


「男の娘ってことか!!! なぁ怜音! どうだい? どっちが一番いい悲鳴を上げさせられるか勝負しようよ!!」


「は、はは。はははははっ!!! お前、思いのほか面白いやつだったんだなぁ!!! 知らなかったぜ!!!!」



「ちょ、調子に、うごぉおおおおおおおおおお!!!?」



ちーん!!!!


怜音の一撃が刺さる!!!! 時晴が叫ぶ!


「殺さずにずっと苦痛を与え続けることで、【不死なる祖の気まぐれ(リザレクション・HP)】を発動させない!! そうか、死ななきゃ復活できないんだ!!! よし、みんなやろう!!! 魔法少女の金〇狩りだ!!!」




「字面が最低すぎますわよ!!!!」


小笠原雹香が絶叫した。



「--その技を一番うまく使えるのは、僕だぁ!!!!」


「うぎゃあああああああああああああああ!!!」


東 呉十郎、参戦。





女性陣を尻目に、遂に魔法少女の攻略方法が確立される。



金〇だ。


金〇こそが、弱点だったのだ。



むなしいかな。


これは、同人和風ギャルゲー【厄モノガタリ~花咲き月夜に滅ぶ世界~】だからこそ男の娘が生まれ。


それによって、弱点が生まれた事例ともいえる。



「これなら、”アレ”が発動できる! 頼んだぞ、【夢幻現の如し】伏見 遊星!!!!!!」


安倍怜音が、観客席に向かって叫ぶ。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side  須藤与一



「はぁ、はぁ、はぁ」


ち、くしょう。


全然勝てないぞこれ。


【餓者髑髏の花嫁】の優位性は、異界の展開と呪言、彼岸花、そして圧倒的な骨の強度。


それを全部、あの境界斬りが全部台無しにする。


全部斬れるんだ。


かといって俺が接近戦を仕掛けようものならあの不定形が人間の形をしているくせに意識外の攻撃をしてくる。


ーーこりゃ、俺たち以外は全滅する。


俺たちだからまだ戦えてるだけだ。


「どうした、クソガキ。立て、まだ戦えるだろう。立て、立つんじゃ。まだやれるじゃろ。10年、10年じゃ。この焦がれた思いを、貴様なら斬れるだろう。まだ逆転の一手はあるじゃろう。来い、がっかりさせるな。頼む、死ね、まだ死なないでくれ、死ね、須藤与一っ」


畜生め、ぬらりひょん。倒錯しすぎなんだよ俺に。


やってらんねぇよ。


俺の周りに来る奴、いっつもこんな感じだし。


……畜生。


諦められねぇよ。


勝つんだよ。


みんなで勝つんだよ。


全部守るんだろ。


立て。


立つんだよ俺。


がたがたと、足を震わせながら、【獅子王】を杖に立ちあがる。


……【獅子王】、すまん。


お前、大分無理させてるだろ。


借り物なのに死ぬほど使っちまってごめん。


最後まで、使い潰してやるから許してくれよ。



「与一さん! 通信来ました!」


「いろはっ!?」


幻覚で姿を消したいろはが、俺に話しかけた。


合図、来た!!!!!


「は、はは。はははっ! はははははっ!!!!」


「!? 来るか、須藤与一、切り札を!」


「あぁ、ああ!! ……あいつら、すげぇよ。最高だぜ。悪かったな、待たせたぜ。こっから先は、俺も切り札を切る!!!」


俺は下腹部をぎゅっと握りしめる。


「俺はそんなつもりなかったんだぞ」


「?」


「お前なんか使ってやるもんかって、今でも思ってるからなぁ!!!!! 裏世界だろうが、なんだろうが!!! 走ってこいよ!!!! 命令だあぁあああああああああああああああ!!!!!!」


雷鳴。


豪雨。


暴風。


そして、凪。


一瞬にして世界が塗り替わる。


来る。


奴が来る。


俺が、もっとも今呼びたくない存在が。


アイツが、来る!!!!!



「来い!!!!!! 【千年狐狸精・傾国九尾】銀子!!!!!!!!!!!!!!!」



ゆら、り。


それは俺の身の丈を超えた狐だった。


いや、それは妖気が見せる幻影。


来たのは一人の狐の耳と尾をつけた女。


彼女は国を亡ぼすとされる傾国の美女であり、仙人であり、狐狸であり、精霊であり、犯罪者である。


ただ微笑むだけで、人を殺す。


ただ眉を顰めるだけで、人を殺す。


ただ指でなぞるだけで、人を狂わせ倫理を飛ばす。


ただ目配せをしただけで、人は彼女の足を舐めた。


一人で、ただ歩くだけでこの国を滅ぼせる女である。


九つの尾と、色鮮やかな漢服を身にまとい。


「『あ、あは、あははっ』」


当然のように。


全てが呪言。


そして。


本人も気付かぬままに。


足元から花が咲く。


それはそれは美しい、【月下美人】が咲き乱れる。


花言葉は、「危険な快楽」。


彼岸花に混ざる様に咲く、月下美人の白さが。


「『与一様ぁああああああああああああ好きぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!』」



状況を混沌とさせた!



「きゅ、九尾じゃと! 何をいまさら!」


「『あ、は、あはは、契約ぅ、もう契約したからぁ、げ、げへへ、ぐへへへ、言質獲った、言質、げんちぃいいいいいいい!!!』」


「な、なんじゃこいつ(困惑)」


「『あは、あはははははははは!!!! 術式ぃいぃ、展開ぃいいい!!! 与一様ぁああああ見ててください!! 今術式イっちゃいます、出ちゃう、術式出ちゃうぅうううううううう!!!』」




「きしょ」


思わず、俺の声が漏れた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ほんまにやってられへんわ」


観客席でのほほんと胡坐をかいていた男がいた。


彼の名前は、【夢幻現の如し】伏見 遊星。


九尾の狐の、弟子である。


「軽う優勝しよう思たら、陰陽師とちがうやつはいるし、やる気失くしてまうしさぁ。そのくせ、俺の好きな人は他所の男のケツを追うてる。やってられんよほんまに」



今日の朝の事だ。


突然九尾の狐、銀子に呼び出された伏見はウキウキしていた。


確かにリタイアはしたものの、自分の高潔な精神を評価してくれると思っていたし、何よりとても忙しい九尾の狐が自分の為に時間を割いてくれたと思うと、天にも昇る気持ちだった。


しかし、話しは全然自分と関係のない話だった。


「大規模な、感覚共有術式? それも裏世界まで? 何言うてるん?」


「はい。この後、魔法少女が裏切るので、その後須藤与一が裏世界にぬらりひょんを連れていくので、どちらか片一方に強烈なダメージが入ったらその二人を感覚共有させて地獄を見てもらいます。私が裏世界に行くので貴方はこっちで頑張ってください。術式をまとめたレジュメがあるのでこちらを参考に」


「いや、いやいやいや! 展開早すぎるて! ……その、また須藤与一なんです? アイツ、なんなん? ずっとずっと、与一与一与一、なんでそないな奴の話ばっかりするんですか! 俺の、俺の事を見といてくださいよ! 俺、あんたの弟子やないか! 見とぉくれ、俺の事を!」


「……言ってるじゃないですか」


銀子は、一切表情を揺らさず、伏見に答えた。


「私は、好意を持たれたら嫌いになるんです。だって、「あぁまたか」ってなってしまうんです。過去の行いを思い出したことで、好意を持たれた時点で、もうその人の事が術中にはまってる可能性を感じるんです。どれだけ誠実であっても、好きと言われた時点でもう愛せないんです。ごめんなさいね」


「っ、畜生……!!!!」


「さぁ。仕事です。良いですか? まず合図を送ったら」













「ほんま、あほくさ」


結界に向けて、手をかざす。


「惚れたらもん負けかぁ。しょーもない。ほんまぁ、しょーもない」


結界を取り囲むように、超巨大な術式が展開される。


「須藤与一。しくじったら殺すどボケ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


side 須藤与一




「ガッ!!!!!?」


突如、ぬらりひょんの体内に激痛が走る。


ぬらりひょんに金〇は作られていない。


しかし、その内臓から響く激痛のみが共有される。


脳みそに電を打たれたような衝撃。


「なに、がっ!?」


その痛みは、明確に隙を作った。


「『此れより語るはわが身の呵責』」


九尾の狐が、詠唱を開始する。


「『咎の凄惨、淫欲の劫火、叡智魔道の極点孔。腐り落ちていく輪廻転生。--今宵語るは傾国御伽噺』」


そこは、宮殿である。


かつて栄華を誇った、歴史の残り香。


その宮殿内部にあったのは、拷問器具の展覧会。


「『第35幕、法悦殺し』」


月下美人が、揺れていく。


「『改悟に琴調』」




その技は。


見た目では分からない。


だが明確に。


「いぎっ!??? ぎゃぁああああああああああああああ!!?!?!?!?」


剣豪、ぬらりひょんの肉体が、悲鳴を上げる。


理由は分からない。


ただただ、泣きわめく子どものように叫んでいた。


ーー理由が、分からないのにも関わらず。




「『()()()()()()()()()()()()()()()()()1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「うわああああああああああああああああああ!?!?!?!??!」



突如悲鳴を上げる如月桐火。


如月桐火の神経が明確に告げていた。


誰かに、弾かれていると!



『第35幕、法悦殺し 改悟に琴調』


敵の神経を楽器に見立てて、琴を奏でるが如く弾く技である。


演奏者は存在しない。


ただ、演奏が終わるまで術が終わらないだけだ。


対処法は明確で、「演奏止め」と誰かが口にすることである。


そんなこと誰も知らないので、ほぼ3分間苦痛にあえぐだけの時間が過ぎるだけだ。


「が、っ回復っ、がぃぶぐぅ」


「オラァ!!!!」


安倍怜音が、金〇を蹴り上げる!!!


「ぎぃいいいいいああああああああああああああああああああ!!!!」





「あれなんで潰れないの?」


松前鈴鹿が質問すると、生来の真面目さが災いして小笠原雹香が回答する。


「--安倍時晴さんのせいでしょう。蹴りと同時にその、アレを回復しているんです」


「金〇を回復? なぜ」


「……時間稼ぎでしょうね。所詮あの攻撃だけでは敵を倒せない。千日手です。明確に如月桐火を倒す技を思考する時間を稼いでいるのでしょう。……いえ。蘆屋緋恋さんがいらっしゃらないので、おそらくは、待っている」


「むぅ。成程。……む?」


「……」


シルク・ストロベリーが白目で魂が抜けた顔をしている。


「むぅ。すごい顔」


「I don't get it...」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



side 須藤与一




「うごぉおおおおおおおおおおおおお!!!! ま、またこの痛みぃ!!?」


「『与一様!』」


銀子が叫ぶ。


「『所詮これはこの敵にとっては足止めの術式です! 恐らくこの不定形は核を壊さなければ攻略できません! なんか前の戦いでそんなことを言っていた記憶があります! 核の位置を割り出してください!』」


「分かってる!!! 核の位置は……、てめえの、心臓ーーが前の位置! 今の位置は、移植して仕込み刀に混ぜ込まれてる!!!!!!!」


「!?!? な、何故!? 何故分かった!? 何故!? 渾身の隠し場所を、何故割り出せた! それを知っているのは、一人だけーーーーーーー」


「あぁ、そうだろうなぁ!!!!! 核を移植した本人から聞いたからなぁ!!!!」


「-------嘘だ、まさか、貴様、そこまでしたのか!!!!?」


ぬらりひょんには、ネタがバレてしまったみたいだ。


「あぁ、壮大なネタバレといこうじゃねぇか!!!!!!」


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