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【神話生物】事件 前編 6

明晴学園 

グラウンド内バトルフィールド


「地上最強の高校生陰陽師が見たいか―!!!!!!!」



「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」


「わしもじゃ、わしもじゃみんな……」







「浅い刃牙パロみたいなことしてる学園ファンタジー嫌なんだけどぉ!!!!」


いややりたくなるけどさぁ!!!


え?まだ餓狼伝の可能性もある?


似たような……もんだろうが!!!(←炎上)


異世界物の学園ものってトーナメントあるけど凄いとこゴリゴリ真似るじゃん。


同人ゲームの良いんだか悪いんだか分からんあれがもう如実に出てる。


「まずは【明晴学園】からの入場じゃ!!」


お、出番か。


どうも去年の優勝校は明晴らしいからか、全体的に注目株って感じがするぜ。


「まず一人目!! 今や時の人! 巴御前の再来と小学から呼ばれ、今では神の象徴か。圧倒的天才、昨年1年生の身にして優勝した怒涛の才覚。二つ名に神の名を冠した【今毘沙門天】 蘆屋 緋恋の登場だぁ!!!!!」


怒号のような、波濤のような歓声とともに、ぬるっと彼女は出てきた。


ゆるーくふわふわした羊のような髪型に、カーディガンの制服を着たまま、何の準備もしていないJKがふらふらしながら会場に姿を現した。


……幼馴染ちゃんはいつも通りだな。


興味のないものは徹底して興味のない様子で、眠そうな姿。


しかし戦闘時の苛烈な姿は、戦神の名を冠するまでに至った。


でもまさか去年優勝していたとは。


おそらく時期的に、餓者髑髏の花嫁事件前に優勝している。怖すぎる。


「そして二人目ですが、本来であれば賀茂モニカさんが登場する予定でしたが、急遽欠席が決まり、リザーバーとして土御門家の【土蜘蛛の弟子】土御門つちみかど 松陽しょうようの登場だー!!!!!」


……ま、まぁ。それは、そうか。


アイツまだ呪詛返し食らってるしな。


これは三日前の事なんだが、町に出たらたまたま顔を合わせてしまって、すごいめっちゃ低い叫び声をあげて震えながら逃げられたのだ。


しまった帰ってきてたこと言えばよかったって後悔したよね。あれは間違いなく俺の顔を見て呪詛返しが発動している。


あれは……間違いない。下痢だ。


おご、ほぉぉお♡って言ってたし、下痢だ。


俺の顔をキーにして、下痢になったに違いない。お腹も抑えていた。なんか下腹部から変なマークの光が出てたし、直腸に直にくる呪詛返しだったのだろう。可哀そうに。


あの後鬼のように連絡来て「もう二度と外に出ない♡ 人として終わった♡ 無限の後悔♡」と言われ罪悪感を覚えた。


まぁ、俺との相性の問題なだけだろうし……俺は今年でもう出ないだろうからまぁ来年とかに天下取ってもらえればいいと思う。


しかし土蜘蛛の弟子、か。


陰陽庁直轄の教育式神4人衆。


【土蜘蛛】【赤鬼】【九尾の狐】【だいだらぼっち】


この式神たちから直々に指導をしてもらっている立場ということは、間違いなくエリートだ。


油断も隙も無い。彼もまた、エリートの人間なのだ。


日焼けした赤髪の筋肉質な男が、ポケットに手を突っ込みながら歩きだす。


「そして三人目、陰陽師という存在を遥か高みに運ぶと堂々宣言、安倍家の最高傑作、至上の才能、青龍と玄武を率いた【陰陽王子】こと、安倍 時晴がやってきた!!」


金髪で陰陽師の戦闘服、陰陽道義を身に着け、朗らかな笑みを浮かべた青年が、美しい姿勢で歩き出す。


周囲に漂うオーラはおそらく式神による威圧だろう。安倍家最高傑作と言っても過言ではない、最も晴明に近い存在として押し出されている。


その3人が並んだ瞬間、俺も出番と思い歩き出す。


「最後に、なんか、良く分からん力が働いて突然選手として決定した謎の無能力者、侍らす女はめっちゃ美人、須藤与一だぁああ!!!」


「言い方ぁ!!!!」


くそ、突っ込んでしまう。ほらぁ言い方ひどすぎて若干ブーイングも出てきたじゃねぇか。


「あら、美人ですって与一さん。困りましたね。誰かに告白されないようにしっかりつなぎ留めてもらわないと。すすっ」


「寄るな。腕を絡めるな」


「与一さん、後で会場外にある焼き鳥屋さん行きたいです、行きましょう。ちゅちゅんとな」


「お前も寄るな。絡めるな。共食いするな」


「あの男学園の生徒でもないくせにモテやがって!くたばりやがれー!」

「ちくしょう!流石にモテすぎだろ!俺も陰陽師養成学校やめようかなぁ!!」

「あいつだけっ、あいつだけは赦すなー!」

「石投げろあいつに石を!」

「よく知らないモブっぽいやつが出る展開良く分かんねぇよこっちの立場からしたら!説明しろ説明を!」



めちゃくちゃ嫌われとる反応……。


くそ、お前ら同じ状況だったらあれだからな。金●がいつもひゅんってなる恐怖と戦いながらっていうのを知らないからそう言えるんだ。


毎日のようにひゅんってなるんだぞ。なめやがってぇ。



「……おい蘆屋」


【土蜘蛛の弟子】土御門松陽が幼馴染ちゃんに話しかける。


「分かってんだろうなテメェ。ウチのモン全員潰したんだ。それ相応に痛い目見てもらうぜ」


かわいそう。


そっか、No4に入ったのに俺が入ったせいで出れないって愚痴っただけなのに幼馴染ちゃんにボコボコにされてるんだもんな……。


かわいそう……。


俺が原因だけど。


「与一くんー。私一週間前から家にいるって知らなかったんだけどー。これ終わったらお話ししよっかー。そこの泥棒猫ニ匹置いて」


「ひゅっ」


こわっ、怖すぎる。


なんかオーラ出てる。


順番通りに並んでるから横一列に幼馴染ちゃん、土御門ニキ、安倍ニキ、俺って並びなのになんか隣にいるような錯覚すらある。


「おい聞いてんのか蘆屋」


幼馴染ちゃん、土御門ニキをガン無視である。


「お姉様お姉様、あのすごい怖い女の子知ってます?」

「泥棒猫よ」


俺の両隣で腕を絡めるチーム式神もすげー煽るし。


「おい、蘆屋聞いてんのk」


「黙れ」


どっ、と汗が流れるような重圧。


隣の、安倍時晴からだ。や、やばすぎる。並の術師であれば両ひざが付くレベルだ。


俺も膝から崩れ落ちそうになったが、両サイドから無理やり脇から抱えられた。介護かな?


異常な殺意、いや、なんだこれは。


なんか、黒い重厚感のあるオーラにピンク混ざってる気がする。


「全員に、俺から言いたいことがある!!!!」


安倍時晴が、陰陽術を使い会場全体に聞こえるように声を拡張させる。


「俺は優勝したら、再び蘆屋 緋恋に告白するつもりだ!!!!!」


えぇ……?


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」


「俺は安倍家として家の発展の為に、ではない!! 本気で彼女に惚れている!! ぶっちゃけ云うとかなり好きだ!!!! LOVEだ!!! 俺はこのトーナメントに向けて、その為だけに緋恋を倒す訓練を重ねてきた!!! 彼女を倒したら彼女も僕に惚れてくれると信じて、すごく信じてここまで来た!!!!」


「気安く下の名前呼ばないでねー。」


幼馴染ちゃん、冷酷な一言。


でも全く聞いていない安倍時晴。


「だから!!! 俺が一番許せないのは!!!! その緋恋になんかよくわからないけど好かれてて!!!! 学園の生徒でもないのになんか急に出てきたぽっと出のモブキャラが!!!! 女侍らせて何の努力もせずトーナメントに参加し!!!! あとで、あぁああとで二人っきりでお話をするぅだぁああ!?!? 赦せないっっっ!!!!!」


「おぉぉおおおい俺に矛先くんのやめろぉ!!?!」


「つきましては!!! 初戦の第一回戦は彼とやらせてくれ!!!! 俺はコイツに勝たないと、緋恋に胸を張って告白できないっっっ!!!!!!!」


「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」」」


「おい観客お前らノリだけで生きてるだろ!!!」


な、なんつー空気感だ。


え、ナニコレ。


土御門ニキ、ドン引きしてるし。


幼馴染ちゃんは……。ナニソノ表情?


どやってる?


なんでどやってるの幼馴染ちゃん?


「与一くんおねがーい、私の代わりにその人ぽこぽこにしておいてー」


ぽこぽこ?


なにそのボコボコを可能な限り柔らかくした上でやること同じの表現。


おい、司会者。


刃牙パロした司会者?


なんとかしてくれ。頼む。マジで頼むぞ。


「分かりました!! ではワシの独断と偏見で、オープニングを飾る第一試合は、【陰陽王子】安倍時晴vs【スケベハーレム】須藤与一じゃあああああ!!!!」


「「「「「「うおおおおおお!!!!! おぉ? うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」


「なぁにその二つ名っ!!!!!! はっ倒すぞゴルァ!!!!!!」



嫌すぎるだろ【スケベハーレム】が二つ名って。もっといいのあるだろ。


数ある内の最悪のネーミングセンス飛んできたんだけど!!!!!!


「スケベハーレムですってよいろはさん。酷いことを言いますよね。決してハーレムは許さない党代表の私から抗議しましょう」

「スケベだったらもうとっくに私たち退廃的であはーんなオーラ出しますよね。そもそもハーレムってなんです?」

「男の夢と表現する昭和の価値観の方々もいらっしゃいますが、実際は男性が誠意のある対応を取らず好意に甘え性に溺れ失恋のショックに耐えられないからとりあえず全員幸せにすると言って不幸を生み出す永久機関です。特にデートや夜の時間の時に他の女とイチャコラするのを指くわえて見せてる時点で寝取られ脳破壊を生み出しているという事実に気づかないボンクラ男の誠意のない好きになられたから幸せにするとかいう他責的思考が生み出した地獄ですわ」

「ハーレム、それは女の園のようで男の生み出す人形劇……勉強になります、ひとみお姉様!」

「だから貴方もいつでも与一さんの下から離れていいのですよ?」

「それとこれとは別なので」

「メス鳥が……」


「嫌なコンビネーションの罵倒……」


司会が叫ぶ。


「それでは、続いてどんどん紹介してきましょう!!!!」


他の学校の連中も、ぞろぞろとやってきた。




「【六波羅学園】!! 五行の水を使いこなし、氷結の呪いに特化した小笠原の精鋭! 10代にして破格の性能を持ち、妖怪討伐数はこの世代最高です!!【永弓凍土】小笠原雹香おがさわら ひょうか!!!!!」


蒼と白を基調にした制服の少女が現れる。


白く長い髪、すらっとしたスタイル。


どこか大人びた彼女、なんとなく冬の女王という表現が正しいような気がした。


「伏見稲荷からの刺客!! 【九尾の狐】から師事を受け、千変万化の陰陽道、神道祝詞による浄化の力も世代最強! 六千もの符術を操ると噂の現役神主! 【夢幻現の如し】伏見ふしみ 遊星ゆうせい


緑髪でかなり背が高い。180cmはあるだろうか。


戦闘服らしき神社装束を身にまとい、ふわふわと周囲に符を泳がせている。


即時戦闘が可能の状況を作っているくせに、目は細くずっと笑顔を浮かべている。




「平安時代、陰陽道最盛期の技術を蘇らせた伝説! 現代における六波羅探題という時代の名残において、人と妖怪の討伐技法はそこに集結された! 京都六波羅の地位向上を目指す若き天才、【六波羅警邏 3番隊副長】常盤ときわ 夢人むうと!」


真面目そうな男が出てきた。


六波羅探題、今は既に存在しない組織だが、実際神秘の研究機関として裏で活動しているとは聞いていた。


おそらく彼は京都の裏の警備を任されているのだろう。


つんつんとした髪型に、ぎらついた瞳。


勝利の為、いや、元々そういう男なのだろう。軍人のような気風を感じる。



「遂に念願のお披露目!! 歴史が誇る東寺において、仏教流の妖怪退治の本流!!! 健全な肉体に健全な精神! 悪意鏖殺、妖即滅!

肉体のみで幽霊や妖怪と戦い続け、極秘とされた御留流!!! 【寺生まれのG】あずま 呉十郎ごじゅうろうだぁああ!!」


少林寺拳法の胴着を着て、丸坊主の少年が歩いてきた。


拝むように手を合わせ、心持ち穏やかそうだ。


だがその両手で気を纏わせ、今もなお修行をしているのではないかと感じる。


かなりストイックそうな雰囲気だ。背は小さいが、恐らく短期かつ単騎での戦闘に長けているに違いなかった。




だがなるほど。


どうやら学園ランキング順に呼ばれるみたいだ。


ウチはリザーバーがあったからちょっと順番が入れ替わったが、恐らく順位的には1位幼馴染ちゃん、2位安倍、3位土御門だ。


つまるところ、関西の学内における1位が小笠原、2位が伏見、3位が常盤で4位が東なのだろう。


小笠原……。小笠原か。


ふと隣にいたひとみに目を向ける。


彼女は……何も気にしていなそうだった。





「【聖弓欧学園】!!! まさかの陰陽師に革命! 西洋からやってきたれっきとした名家の血筋、祖にはイギリス、アンドリュー・ドラゴンハート!! 純粋西洋魔術のみでやってきた驚異の黒船!!! 人呼んで【現代魔女】シルク・ストロベリ―だああああああああ!!!」


黒いフードととんがり帽子をかぶり、箒を持ってくる。ウェーブがかった金髪が揺れ、その瞳には星が宿っている。


魔女っぽい格好、いや本当に魔女なのだろう。


ちょっとほっぺにそばかすがあって、愛嬌のある顔だった。


でも、誰にも負ける気はないと言わんばかりの表情が、どこか戦いの始まりを感じてぞくぞくする。



「お前あの祠壊したんかぁ! 旅行先の青森県某所における廃村にある祠を偶然破壊してしまい、祟り神に憑りつかれてしまった彼女!! 陰陽道? 初めて知りました。でも彼女を害するものは全て神が守ってくれる!!! 人類初の「神」を式神にした例外的存在、【祟神サーの姫】姫川 杏子ぅううう!!!」


おどおどとしながら、ボブカットの少女は自らの手を握りしめ、ちょぼちょぼと歩き始めた。


メガネの中の瞳が地面を向けて、ぼそぼそと独り言をつぶやいている。


しかし、彼女の目線に目を落とすと、影が彼女の形を取らず、何か奇妙な形態をしていたのを認識してしまった。


神に憑りつかれた少女、その実力は如何ほどか。


なんとなく、俺と似たような陰陽師の才がない人間の気配がするぜ!


「北海道の山河で発見された偉大なる才能! 儀式をしてたら警察に鮭の密漁と言われあわや逮捕寸前! 賀茂家によって保護され、現在自らの力について勉強中! 今年入学し、入学初日に学校3位に下克上! 独自の力の進化論、北の大地の【トゥス-クル】松前 鈴鹿!!」



シロクマの毛皮をかぶって、民族衣装に身を包み、弓や様々な武器を背負ってやってきた少女。


黒い髪がきれいで、その髪が揺れて頬が見えた。入れ墨をしているようだ。


なるほど、北の大地の人間アイヌだ。 自然と共に生き、アイヌとして生きる彼女。おそらく名前も和名で、本名は別だろう。


誰もその力の形態を知らない分、強敵であることは間違いない。ゴールデンカムイとシャーマンキングを読んでいるから分かるんだ俺には。



「禁術、禁術、また禁術!!! そろそろ陰陽庁出禁待ったなしの忍坂家がなんとトーナメントに参戦!!! 危険すぎて失伝した陰陽術も、人間が扱うには危なすぎる下法も全部使って何が悪い? 勝てば官軍負ければ賊軍【黄泉比良坂で会いましょう】忍坂おしさか 義和よしかず


顔面に経文が書かれた包帯をぐるぐるに巻き、首元までボタンをきっちりしめた男子学生服。


腕は皮の手袋を身に着け、腰にアクセサリーをじゃらじゃらと纏っている。しかも、小さなぬいぐるみや人形も一緒に垂れ下げているようだ。違和感のある組み合わせ、いや、恐らくあれは全て呪具である。


禁術を対価なしで行使するための人柱をぬいぐるみや人形に対価を押し付けているのだ。合理的である。


ただ合理的過ぎて明らかに変な人なだけで。





さて、これで知っている情報の人たちが出てきたわけだ。


実際に見てみたらやっぱり格が違う。


俺なんかでは瞬殺待ったなしのメンバーばかりだ。


なんで親父はこんなトーナメントに俺を……(100回目の疑問)




「さて、ここからは【五星附属術浄学園】の面々を紹介するぞぉ!!!」


お、五星附属かぁ。


ロクなもんじゃないだろうなぁ。


まぁとりあえず見てみーーーーーーーーーー。


えっ。



「【五星附属術浄学園】から、まさかの最年少の登場だ!!!!」


その顔に、俺は覚えがある。


「なんと1位は飛び級入学の若き天才! 本来ならば中学2年生の彼女は、小学生の頃に力に目覚め、以降その陰陽術スタイルは「魔法少女スタイル」と呼ばれる一つの型として誕生! 五星附属内で現在流行の戦い方として、時代を生み出した流星のような彼女!【流星の魔法少女】如月きさらぎ 桐火きりかぁああああ!!!」


ピンクのツインテール、笑顔が素敵な女の子。


魔法のステッキを持って、白とピンクの衣装に身にまとい、ちょっぴり照れながら歩いてくる。


俺は、彼女を知っている。


その笑顔が、すごく素敵で、いつも……。


彼女に、勇気をもらっていたから。





「--原作の、ヒロイン……」




如月 桐火。


メインヒロインの、一人だ。



「続いて紹介するのは、まさかの安倍家!! 明晴学園ではなく五星附属を選んだ理由は問題児が過ぎたから!! その実力は本物、なれどそのまま呪いを撒き散らかしてほったらかすダメ人間!! しかし五星附属で学んだ現代兵器を用いて戦う新しい陰陽師、【獅子強攻】安倍怜音あべの れおん!!!」


だらしなく制服を着崩すイケメン。どこか時晴に似たワイルドな顔立ち。


髪を逆立てて目に深い隈を乗せて、へらへらと笑いながらサンダルを履いて登場する男。


この世の全てを皮肉るような表情だった。



「!? あ、安倍家!?」


俺が驚いたのは、安倍家がいたこと。


通常、安倍家がいるのであれば他の学園でもトップクラスを狙えるのは必然だ。


しかし安倍家は名の通り明晴学園に通うことが誉とされていて、安倍家の中でも鎬を削ることが多い。


故に一時期の明晴学園のTOP4は全て安倍家で埋まっていた時期もあったほどだ。


よしんば落ちこぼれて別の学園に行こうと安倍は安倍。


血筋において最強格は揺るがない。


それを、如月桐火が、勝った……?


原作において、唯一、非戦闘員のヒロインだった彼女が、安倍に勝ったということか……?!





「またも最年少! 如月桐火と共に上がってきた飛び級勢! 彼女と同じ「魔法少女スタイル」を使用し、侍のように祓魔剣を振りかざす最速の少女!! 現代陰陽師の戦闘方法はここがスタンダードに変わっていく! 時代の象徴【聖伐執行】犬鳴いぬなき ひびき!」



青い髪の強気な表情を浮かべた釣り目の少女。


年齢は中学2年生と同じというが、委員長のように正しさを求めるような雰囲気を漂わせている。


凜とした仕草一つ一つに気品すら感じる。


そして。


彼女も原作ヒロインだ。



「そしてもう一人も最年少!如月と犬鳴との3人組として有名です! 相手からコピーした術式の上位互換の術式で作ったミサイルを操る天才児、生きた戦車のような戦い方で全ての妖怪を一網打尽! 死体すら残らなず生まれた荒野! 【宴夜航路】迫野はこの 小登里ことり!!!」



グレイな髪の毛で誰もかれもを馬鹿にするような笑い方。


萌え袖をするためのぶかぶかのジャケットを着て、お化けのように手首を垂らして胸の前で揺らして猫背で歩く彼女。


……。


彼女も、原作ヒロインだ。




何が、何が起きている?


おい、なんだこれ。


なにが、本当に何が起きてる?





「それでは、こちらの方で用意した呪力抽選を行い、トーナメントを確定します! みなさんこちらをご覧ください!」






突然大きな映像が空中に浮かぶ。


そちらを見ると、既にトーナメントに名前が記載されていた。





一回戦


一試合目

【陰陽王子】安倍時晴

vs

【スケベハーレム】須藤与一


二試合目

【宴夜航路】迫野 小登里

vs

【永弓凍土】小笠原雹香


三試合目

【獅子強攻】安倍怜音あべの れおん

vs

【寺生まれのG】東 呉十郎


四試合目

【黄泉比良坂で会いましょう】忍坂 義和

vs

【現代魔女】シルク・ストロベリ―




五試合目

【今毘沙門天】 蘆屋 緋恋

vs

【祟神サーの姫】姫川 杏子


六試合目

【聖伐執行】犬鳴 響

vs

【トゥス-クル】松前 鈴鹿


七試合目

【夢幻現の如し】伏見 遊星

vs

【六波羅警邏 3番隊副長】常盤 夢人


八試合目

【土蜘蛛の弟子】土御門松陽

vs

【流星の魔法少女】如月 桐火








「これは……与一さんハードモードですね」


ぼそっといろはが呟いた。


確かにそうだな。


一回戦から【陰陽王子】、二回戦はおそらく下馬評通りなら……【永弓凍土】小笠原雹香が勝つのだろうか。そして準決勝で……【現代魔女】が来るだろう。恐ろしすぎる。



んで、決勝までいけばおおよその確率で【今毘沙門天】蘆屋 緋恋。


幼馴染ちゃんとバトルってわけか。


やってられっか。俺は帰らせてもらうぜ。ガチで涙


……でも。


原作ヒロインが、なぜ飛び級で高校に来てトーナメントに出ている?


魔法少女スタイル、ってなんだ?


原作にそんなものは出てきてない。


非戦闘員だった如月桐火がどうして一位になってる?


ーー親父は、これを予見していたのか?


様々な疑惑の最中、「高校生陰陽道最強決定戦トーナメント」は、幕を上げたのだった。












これが、後の【神話生物事件】と呼ばれる本当に大きな渦に、俺は巻き込まれた最初のきっかけだった。











【神話生物事件】前編 開幕


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