【神話生物】事件 前編 2
「高校生陰陽道最強決定戦トーナメント!?」
『うん』
俺こと須藤与一は混乱していた。
4月に入り俺も高校2年生。
正妻面した某あの子は隣の部屋で、ペット面したあの子と一緒に暮らしているし、部屋に乱入する回数も土日以外は減った。
平穏無事、陰陽師関連の事件は特に起きず過ごすことができたのだが。
突然登校前、朝っぱらから親父から連絡が来たのだ。
「高校生陰陽道最強決定戦トーナメント!?」
『うん』
「こ、高校生陰陽道最強決定戦トーナメント!?」
『なんで3回も聞いたの?』
そのイベントは、原作のゲームでもよく知っていた。
原作主人公が参加し、優勝を目指すことで原作ヒロインとの好感度を増やしつつ、必殺技の会得の為に奔走していたのだ。
確か必殺技は、……宮内庁のすごく偉いカリスマ幼女の人気キャラランキング3位、日輪様の執事が持ってる能力で一つ好きな能力の習得方法を教えてもらえるのだ。
執事もやべーけど日輪様ってシナリオ上やばいからな。
本気になれば過去も未来も全部見通すレベルのチート。
でも宮内庁の用意した環境の外に出た瞬間あらゆる悪意と呪いが降りかかるから一生宮内庁から出てこれないという箱庭で生きるシナリオだからなぁ。
下手に日輪様に気にいられたら主人公も宮内庁から出てこれないというヤンデレシナリオだったはず。
でもメインキャラじゃないんだよな。
人気のあるサブキャラみたいな立ち位置だったはず、日輪様。
さて、原作通りであれば今回の高校生陰陽道最強決定戦トーナメントを日輪様は観戦するのだ。
出場する学校は、4つ。
陰陽庁管轄の陰陽師の養成学校。
【明晴学園】
陰陽本場の京都における学校。
【六波羅学園】
賀茂家の流れを汲み、西洋宗教と陰陽の両立を目指す学園。
【聖秋欧学園】
そして、現代怪異を専門とし、五星局を司る研究員を育てることを名目とした学園。
【五星附属術浄学園】
この4つの学園から代表者4人を出し、16人トーナメントで優勝を目指すのだ。
「うんうん。俺知ってるよぉー? そういうバトルが繰り広げられてすごく盛り上がる大会だしぃ~? なんならもう次世代の戦闘職のスカウト合戦が始まるレベルだもんねぇ?」
『うん』
「なんで俺が明晴学園でエントリーされてんだよぉおおおおおおおおおお!!!!!!? 俺そっちの学園行けなかったからこっちにいるんですけどぉおおおおおおおおおおお!!?」
『なんでだろうね……』
何でだろうねじゃ無いだろ流石に。
「おぅいクソ親父ぃ~~~、あのな? 知らないかもしれないけど、そのトーナメントな? 学園のTOP4までの人しかでれないんだわ。戦闘試験における成績上位者4名だぞ? 中にはもう現役で妖怪どもをびしばし殴っとる奴もおるわ」
『うん』
「なんで俺なんですかねぇ!!! なんでっっっ!!!!! 俺なんですかねぇええええええええええええ!!!!!!!!!」
『あっはっはー』
「あっはっはー!?!?!? 正気かお前ぇえぇ??????」
『いやでも、……その。あのー」
「はい」
『……いや実はねぇ。この前お父さん宮内庁に行ってね! 息子自慢しすぎて「じゃあ息子見せてみろよ嘘乙www」って煽られちゃったから「できらぁ!」って言っちゃったんだよね! ごめんね』
「ごぉぉぉめんじゃねぇなぁ!!!?」
『はは。でも大丈夫大丈夫。与一自体は陰陽師としての戦闘技能はしょっぱいんだけど』
「くっ、事実陳列罪……っ」
『今回は助っ人がいるからさ』
ばたん!!! と大きな音を立てて、玄関の扉が開かれた。そう、あの二人だ。
「話は事前に聞かせて頂いております! 花嫁of餓者髑髏、小笠原ひとみと!」
「ただ後ろで突っ立ってるだけで良いと言われた貴方のペット、須藤いろは!」
「「とりあえず全員しばいて与一さんを優勝させるキャリーキャンペーン、実施します!!!!」」
「う、うわ、うわああ、うわぁぁぁ、ぁぁぁぁぁ」
困ったことに、これならちゃんと勝てそうという算段になる程度には、勝ち目がありそうだった。
というわけで、2か月後の6月に明晴学園のナンバー4として出場が決定してしまった。
さて、実は困ったことがある。
明晴学園、関東随一の学び舎であるここには、あの二人がいるのだ。
そう。
幼馴染ちゃんとメスガキママ。
蘆屋緋恋と賀茂モニカが。