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act.6


Act.6




「まさか、―――――――――わかっていたとは、思わなかったんだけれど」


振り下ろす。


「うん、まぁ。それほど驚くことでもないかもしれないなぁ……、現にこうして彼も、私を訪ねてきたわけだし」


足元の人型へ、振り下ろす。


「まぁ、こんな悲痛な姿にはなっているけれど―――――。私自身の知的好奇心と、彼の小さな正義感は満たされたろうから、一概に不幸な展開だったとも、言えない訳だろうねぇ…」


まぁ、


「私の感想、だけれどねぇ」


記式 寧―――――――――。


『解体者』は、その温和そうな表情を――苦笑をもって、ボクを見た。


「なんで、わかったのかと、聞いてもいいかな?」


「ボクは、知りませんでしたよ」


誰が解体したかなど、どうでもよかったのだから。

あくまで辿り着いたのは、そこで、鉄パイプで打ち据えられ、打ちのめされて倒れ臥している梁名木 安騎ただ一人だ。

あるいは、生無 朝顔と、咲夜 世亜ならば、わかっていたかもしれないけれど。


人を疑わないが故に、人に付属する全てを疑う朝顔さんと。

異常に過ぎる知能を有する世亜ならば、わかっていたとしても、不思議じゃあない。


まぁ、世亜の場合、知能と反比例して低い知性を持つことがネックなのだから、わかっていなかったとしても、それはまた、不思議ではないのだけれど。


「ならば―――、どうして私のところに、来たんだい?」


「いえ、そこでボコボコにされている人から、連絡がありまして」


『解体者』がわかったから、―――――と。

俺がやられたら、後を頼む、―――――と。


そんな義理、ないのだけれど。

じゃあ逆にそんな義理があったのだとして、ボクはそれにアイデンティティを殉ずるような性根じゃあないから。


人間欠陥―――――――――――――――――。


あの仙人に、そう呼ばれたのだから。

だったら、どちらでもよかったから。

なんとなく、なんとなしに、それこそ意味もなく、そつなくつれなく、どうでもいいとして、ココに来た。


「だったら」


記式 寧。

『解体者』が、笑う――――――――哂う。


「ここで私の糧となっても、それはどちらでもいいの、範疇なのだよね?」


「まぁ、―――――――そうなりますけれどね」


ただ、


「ただ、ボクの『連れ』が、それで納得するとは、到底思えないんですよね」


瞬間、

ボクの発言に訝しげな顔をした記式 寧の顔が、飛んだ。


否、正確には。

頭が、首から切り離されたのだと、そう言っていい。


切断面からは、本来あるはずの通り道を失った赤い体液が鉄の匂いと同時にその質量を中空にぶちまけながら、床に着地した。


遅れて、頭部も、重い音を立てて、落ちきる。


「つまんねぇな――――――――」


くらがりから、オレンジの長髪を揺らしながら、黒い和服の中背が現れた。

子供っぽさを残す端正な顔に、不適そうに吊り上げられる唇。

橙色の瞳。


絶対勝利(アグリエッドスクランブル)》―――――――四之宮(しのみや) 玖星(きゅうせい)


『勝利しかしない』異質を持つ男。


「んだよー。こいつただのネジ外れた爺じゃねぇか、おれはもっとよぉ、強いのとやりてぇんだけど」


「安心しろよ、お前より強いやつなんて、腐るほど居るからさ」


「そりゃそうさ」


玖星は、後ろ腰に帯刀された長さ150センチの長刀、『絵鏡』を抜き払い、ボクの眼前へと突きつける。


「体に宿る異常で特別な能力―――――異能。そして、それが当たり前でそれが当然であるそいつ自身の異常な性質――――――異質。はては普通のやつまで、俺より強いやつなんて腐るほど居るだろうぜ」


でも、だからこそ、


「おもしれぇじゃねぇかよ。なんたって、俺は『まけねぇ』んだ。どんなに俺より強かろうが、俺には『勝てねぇ』。―――――――まぁ、だからよ」


愉快そうに、橙色が笑う。


「ここで、俺より強ぇ『七枷(ラストナンバー)』のお前と、やり合ってみるのも――――――――」


視線の交錯。

ボクは目を背けない。

玖星も、目を逸らさない。


おもしれぇ。

そう呟いた玖星は、そう呟きながらも、まるでそんな気などないように、『絵鏡』を鞘にしまう。


「―――――嘘だよ。お前はまだ、もったいねぇし、それに」


―――――――――――――――――――俺の友達(ダチ)だからな。


言って、玖星は暗がりへと消えていく。


「あぁ、ついでに、そこに転がってる、ぐねぐね黒髪の学生風。気絶してるだけっぽいぜ? まぁ、気づいてるだろうけどよ」


それと、


「上の階で小学生くれぇの孫らしきが五体の間接全部折られて死んでた。あー、補足すると、おっぱい、乳首切り取られてるとこに眼球ねじ込まれててなぁ……あ、半裸で。よほど猟奇的なロリコンだったんだろうぜ」


じゃぁあなーー。


そう言って、玖星の気配は、消えた。


「はぁ」


息を吐いて、ボクは目を瞑った。


別に、感想はない。

思うところも、勿論ない。



「帰るか」



帰れば、世亜が待ってくれているのだろう。




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