episode : 1 ・事故防衛 act.1
これからが本番です。王道からはかけ離れているので、注意してくださいませ。
episode1 : 事故防衛act.1
「意味がない、という点において、それは全てに平等なんだよ。例として、私たち人間、否、人類。それらが発見し、構成し、発展させ、進化させた文明文化、精神肉体、そのあり方、存在の仕方が、知識や知能と言った種族の平均を数値化できるならば、おおよそその全てが、今現在人類が確認できている範囲での全ての生物から突出している。利便を思い、不便を考えるコトで、利益を思い、欲求に従い、理性で囲うコトを知った。それらは、自らの確立という、正しさを見つけた。そうだね、今現在においては、どんな偽善者だろうと偽悪者だろうと、勇者だろうと魔王だろうと、自らの正しさという根本的な間違いを知っている。だからこそ自分を正しいと思っていないものなどいないし、中には自らの正さを疑うコトを正さだと思っている連中もいる。そして適応や順応は固定概念を強固にし存在理由を求めるコトを強いる枷となる。だからこそ、枷を思考の糧として、正しさを自身で増しながら、すでに手に入れているはずの自分を探して生きている。これこそが俗世間でいう、生きる意味を探して生きる、的なものだね。いやいや、こう考えても見ると道徳倫理にも中々に根拠や論拠、事実確信が盛りだくさんなのだから、思春期の学生よろしくバカにするというのも失礼なことだろうというものだ。まぁ――――しかし、だ。いずれ生命は途絶え、今は消え、全ては消滅する。虚無論者ではないし、俯瞰的な視点を有しているわけではない私が言うのもなんだけれど、起きた事象はどこかに記録や記憶として保管される訳ではないし、たとえ保管されていたとしても、それもやがては消えるのだろう。ならば、そう、意味など、ないんだ。固執や理性に、欲求や感情に、概念や記憶に、行動や思考に、意味はない。いや、いやいや、これが極論であるコトは重々承知だ。しかしだよ? それなら、終わりまでを紡ぐ行動や思考、その他諸々の副産物に、意味があるとでもいうのかい? いや、ないさ、あってはならない。言い得て妙だが、まさにそう、あってはならないんだよ。あるのは、意図だ、意思だ、意味ではないんだ。まぁーしかし、人間というのは禁忌に惹かれ、冒すものだろ? いずれはその無意味も、なんらかの意味と解釈し、自己の確立に利用するのだろう。人は、そう、希望を求めるようにできているのだからね。そこに意味があろうとなかろうと、関係ないんだろうね。君風に言わせればそうだな、どっちでもイイ、と言ったところだろうか。なんにせよ、人間というのは面白い生き物だ。という話を、昨日したと思うんだけれど、覚えているかい? ん? なんだよその顔は、天気予報が外れてずぶ濡れになって帰宅した翌日、予報を疑って雨傘を持っていったのに、その日は終始快晴だった、みたいなその顔は。うん? 比喩がやけに細かいって?
いや、決して実体験ではないよ? あくまで例えだ。イヤ、本当だって。おい、その笑顔をやめろ。すごく腹正しい。ムカつく! やめろ、やめてください、やめやがってください、やめやがれ! 全く、私が天気予報士のお姉さんを疑うはずなんてないじゃないか。いや、天気予報は疑うけれどね。いや、閑話休題。しかし、こんな人里離れまくった森の、どう見ても胡散くさい旅館をよく見つけられるよね。最後の街から4時間はバスにゆられてきたよ? あー、まぁいい、それは余談だ。というか、どうせ君がさっきの話を忘れていた、なんてコトは、はなから予想できていたさ。それこそ精度はともかく正答率でいうならば、あのお姉さんの天気予報なんて比べ物にならないくらいに、私の思考はシャープだとの自負がある。自信じゃないのが、難点だけれどね。なに? シャープな割には蛇足が多い? いや、それはなんというか、性質とかそんな感じのだよ、きっと。いや、もうなにもいうまい。ところで、だ。そろそろ話を進めよう、いや、現状、問題になりつつある目の前の事柄を対処しよう。私の友人である有外頴娃梓くん。君は、これをどう思う? いや、これというのは失礼だな。故人には、憐憫の情を向けなれば、それがたとえ、生前、私たちに面識がなかった人物だとしてもね。さて、気を取り直して頴娃梓くん。この死人をどう思う?」
そう長い独白のあとの小休止とばかりに、饒舌な麗人、生無朝顔は目と口を閉じた。
夕焼けの発する橙の光を黒髪にかすかに煌かせながら、腕を組む。
それは周囲に意識を向けるように、反応を嗅ぎ分けるように、朝顔さんは、その「おーう、プリティーガールというよりエクセレントガール。梅干を使わないで白米平らげるような素晴らしいフェイス!」と、仙人に評価されたお顔に笑みを浮かべる。
アルカイックスマイル。
なぜか、そんな単語が脳裏をよぎった。
アルカイックって、どんな意味だったっけ?
反響や反応を感じ取れないのだろうか、ミス・モーニングフェイスこと朝顔さんは眉間にシワを寄せながら、今度は、くぐもった笑い声を口から漏らす。
正直不気味だ。
頭がいたいのだろうか?
頭がいたいのがそんなに嬉しいのだろうか?
ボクにはマゾの気がないからわからないのだけれど、そういうのって、一種の精神障害なんじゃないか?
いやまぁ、あくまでも性癖だとか性質だというのならばボクもあまり追求はしない。数少なくもない(他称・友人)のことを悪く言うような無粋な神経しか持ち合わせていないらしいボクには珍しく、口を噤んだまま、夕方なのにモーニングフェイスの変態ぶりを眺めていた。
閑話休題。
これから、この言葉にどれだけお世話になるのだろう。
毎度おせっかいながら、助かっている。
むしろ、自分からお世話されに行ってる感が否めないな、とちょっと反省。
しかし、便利な言葉は使用しなければとも思う。
発生されない―――――発声されない言葉に、価値はないのだから。
よし、ガンガンお世話されちゃおうとか、思ってみた。元も子もないが、ならば逆に元とこがなんなのかを教えてくれると助かる。いや、人任せじゃあ駄目なのだろうけれど。
というわけでさっそく。
閑話休題。
まぁ、反応と言っても、そんなコトをできる存在は、ここにはボクしか居ない。
死人に反応を求めるほど、野暮じゃない。
死人ってのは、文字どおり、ありとあらゆる生命機関が死んじゃってるわけで。
魂という概念が、仮にも存在して、それがなんらかのアクションを起こす、というのなら別にして。
あくまで死人は、これ以降の物語には、干渉などできない。
存在できないのだから。
いうなれば、用済みだとも、言える訳だ。
「どうって、なぁ…」
朝顔さんは面識がない、と言っていたが、この動かない全身頭部(当たり前だ)さんを見る限りは、確か、奥さんらしき人と一緒にこの民宿にきていた中年の宿泊客だ。
世亜と朝顔さんの荷物を運ばされていた時に、フロントで見かけた。
はたから見る限りには、中睦まじい、と言った風の夫婦だったけれど。
痩身で、気弱そうな人だったよな、と思い返す。
その特徴の一つも、今となっては判別できないけれど。
それの片割れが、散歩から戻ってきたボク達の部屋に、死体としてあった。
本来、頭部より上に存在する部分以外の全てが原型を放棄した形で。
というか、放棄されているのだろう。
もはや、体という言葉を当てはめるのも億劫になるほどに。
それが憶測になるのは、その胴体と永遠に分離された頭部の横、掛け軸近くに備えてあった壺から鮮血が流れているコトからの予想。
おそらく、あの壺の中に、ほかの部位が入っているのだろう。
中で、内蔵や筋肉や骨や神経が喧嘩せずに、生前の夫婦のように中睦まじく収納されていることをお祈りした。
に、しても、周りが綺麗すぎるな。それこそ、ツボと首の周囲だけが汚れている、って感じだ。
壺の大きさは、縦が50センチほどのもの。
人間、縮めようと思えばあの位にできるのだと知った。
ボクもできるのだろうか、結構、体は柔らかいとの自負はあるのだけれど。
忘年会や、新年会で役に立つんじゃないだろうか。
かなり大受けすると思う。
…いやまぁ、同時にどん引きされるだろうけれど。
さらには、なんか、癒えないトラウマとか残しちゃったりなんかをしそうだし。
ついでに、僕死んじゃったりするし。
特に、役にたちそうもない。と結論してみた。
お次には、頭部を観察してみた。
こっちに施された処置(いたずら。正しくメタメタ)は、あまり命の危険はないだろうけれど、その後の人生に、多大な影響と、後遺症を残してしまう類いのものだった。
左目には割り箸が2本、右目に両方の弦が刺さっていた。それぞれ、違う角度から進入していた。
あれ……中でぶつからないんだろうか?
というか、もともと尖っていない割り箸を、よく突き刺せたなー、と思う。
………いや、しかし、妙な技術だな…。
一家相伝の秘技とか、古来より伝わる人体破壊術とかなのだろうか。
意味のわからない一族じゃないか。
まぁ、少なくとも、受験には役立たないだろうから、覚える必要はなさそうだ。
いや、こんな技術を必要とする大学があったら是非とも教えて欲しい。
その建物の半径2000mエリアに近づかないから。
右目は右目で、……使い方が斬新すぎるし、レンズの効果ないだろ、あれじゃあ。
新手の流行か? いや、ないか。
あれ、メガネ当初の目的と、真逆に位置しすぎてもういっそすがすがしい、とすら感じてしまうではないか。
なんていうか、もはや見事すぎる。
まぁ、自分でやった訳じゃないだろうけど。
というか、なぜか、それ以外は無事だ。
いや、無事じゃあないだろうけど、頭部に限れば眼以外は無傷だ。
目だけを重点的に狙う…ね。
よほどの怨恨を持つ人が犯人、それで間違いないんだろう。いや、間違いだらけか。なんというか、このいたたまれない遺体の状態を見るには、そんな激情云々とは対照的な、愉悦や興味、といったものを感じる。
まぁそれはそれ、どうでもいいけれど、外部犯だとは考えにくい。
朝顔さんもぼやいて来たけれど、ここは相当の山中にあり、通行の手段は、事前に予約されたバスしかない。
ならば、犯人は、――――――――――これを思考し、施行した人間は、この旅館にいたということだ。
いや、まだ。
ここにいるのかもしれない。
「……ともあれ、旅館の従業員にでも報告しないとな」
至極まっとうな意見を、軽いのりで言ってみた。こういう常識や当然の判断が身についているということにおいては、あながち現代の道徳教育は失敗ではないのかもしれない。
朝顔さんは無表情で、全身イコール頭部だか全身イン壷の方を見ながら、口を開く。
「……あぁ、うん。それなんだけれどね? いや、この状況を、どう上手く人に伝えるつもりなんだい?」
なん大朝顔さん。さっきから黙ってるな、と思えばそんな簡単なことで悩んでいたのか。
「なぜかボク達の部屋に頭部と胴体が悲しくも周囲の人間によって引き裂かれてしまった哀れな人がいるんです! 、とか」昼ドラみたいな展開がお茶の間の奥様方に大うけするのではなかろうか。受けすぎて胃の内容物吐き出してもらっても困るからやめとくけれど。
「君が旅館の人達に不真面目なのはかまわないけど、私や咲夜さんの印象まで下がるのはいただけないな」なんだ、珍しくまじめな意見だった。
「いやまぁ、そこは寛大な心でお許し頂いて………」
「それは許すとか許さない以前の問題だろ。というか、助けを求めたところで、今は…17:40。こんな辺境の地まで来るのは早くても23:00くらいだろう」
あ~。確かに。
来る時もそれくらいはかかったしな。
「気長に待つしかないか」
それは本当に長いのだと思うけれど。
文字通り気長だ。
というか、これをやった犯人、その人って、目的はすでに終わったのか?
もしかしたなら、その人の目的は、ここにいる全員の殺害だと言いきれないコトもない訳で。
だとすればここにいるコト自体が、危険な訳だ。
まぁ、ボクと犯人を除いて、だけれど。
ていうか、今現在、ボクと朝顔さん以外の生命は、2人の主観では保障されていない訳で。
そもそも生命の危機は、ここにいる全員に保障されていて。
だとすれば。
……もはや、僕と朝顔さん以外は手遅れなのかもしれないな。
せめてこんな目の前の死体のように、滅茶苦茶な造形に無理やり加工されていないことを祈ろう。無神論者だから誰に祈ればいいのかわからないけれど。
いや、と、脳が一瞬停止する。
迂闊だった。
世亜。あいつ、どこだ?
今、ここは危険極まりないはずの場所で。
例えば本当に犯人がここにいる全員の殺害を目論んでいるとしたのなら。
ここで行ったかのような人体破壊を、また行うつもりなら。
また生体を死体に変えるつもりなら。殺して潰して裂いて―――――――加工するという目的と意思があるのなら。
一人でいる少女は、格好の的だ。
いや、それ以前に。
それ以上に。
それは異常に。
本来ならば、こんな、『狂気』が存在したなら、それは、絶対という領域に匹敵するほどに、それは、間違いを知らない。
否。
間違いしか、引き起こさない。
…………世亜!!
「そういえば、咲夜さんは…?」
朝顔さんが言い終える前に、僕は部屋を駆け出していた。
いかがだったでしょうか?
散漫な文章で、読みづらかったコトと思います。
自分でも、後半、なに書いてるか全然わかりませんでした。笑
直すべき点や、注意点などをあげていただけるなら、できるだけ改ざんして行きたいと思います!
これからよろしくお願いします!