①
多分、俺は死んだのだと思う。
辺りを見渡して見ても一面真っ白な空間があるだけで、他には何もないし誰もいない。
すると、どこからともなく声が聞こえた。
「気がついた?」
周りを見渡してみるが誰もいない。気のせいだろうか?
すかさずもう一度声が聞こえた。
「聞こえているかい?聞こえていたら返事してくれると助かるよ」
「あ、はい。聞こえてます」
「よかった。さっそくなんだけど、君は死んだ。死因は教えられないし、君が死んだ後の事も教えられない。それ以外のことだったら何でも聞いてくれていいよ」
「じゃあ、ここはあの世って事ですか?」
「少し違うかな。ここは神の部屋だよ。君の魂は選別の間に送られるはずだったんだけど、それを私がここまで連れてきたんだ」
「何の為ですか?」
「私の代わりにその世界を楽しんでくれる人が欲しくて、最近その世界に一人の人間を作ったんだ。まだ魂は入ってないからその中に入れる魂を探していたらちょうど君が亡くなったって訳。」
「よく分かんないけど分かりました」
「使命とかないし、好きに生きて欲しいだけだから。お金もいくら使ってもいいし、君の魂を入れる体は私が一から作ったからなんでもできるようになってるしイケメンで背が高くてスタイルもいいよ」
こんないい事しか無いと少し怪しく思えてきた。
「怪しく無いよ!ダメかな?」
心読めるのかよ、まぁ俺にとって悪いことはないし別にいいか。
「そこはどんな世界なんですか?」
「その世界はほとんど地球と変わらないよ。ただ、魔物とかダンジョンとかがあるだけ。ダンジョンの中から魔物は出てこないし、地球と変わらない安全性ではあるよ」
「そうなんですね、分かりました。良いですよ」
「ありがとう!君が住む部屋はもう購入してあって体もその部屋にあるからそこに魂を送るね」
「分かりました、ありがとうございます」
俺がこう言うと目の前が真っ暗になった。
目を開けると、そこは知らない部屋だった。
「あ、そっか。俺転生したんだっけ」
ベッドから起き上がり横を見ると、携帯電話と手紙が置いてある。その手紙にはこう書いてある。
秋庭 海里くんへ(アキバカイリ)
さっきぶりだね、神様だよ!
秋庭海里君というのは君の新しい名前だよ。その部屋はマンションの一室ですが、君の為に購入した部屋だから好きに使って下さい。ですが、日用品や家電はありません。家具は少しだけ置いてあります。玄関に財布が置いてありますので、その中に入っているお金とカードで買い物をしてください。それではこの世界を楽しく過ごしてください。
※携帯電話に私の連絡先を入れておきました。何か質問があればそこにお願いします。
神様より
なるほどね、少しは理解した。
「まずはこの家に何があるか把握しないとな」
携帯を持って部屋の外に出た。
神様はマンションの一室と言っていたが、この部屋は二階建てのようだ。
まずはベッドルームの左隣にある部屋を開けてみた。するとそこは、一部屋丸々クローゼットになっている部屋だった。
部屋の中に入って中を見てみる。クローゼットの中は黒いズボンと紺色の長袖のシャツが一枚かかっているだけだった。
奥まで入っていくと、ガラスケースがあった。中に何か入っていたので開けようとするがどうやっても開かない。開けかたが分からないので神様に連絡してみた。
『クローゼットにあるガラスケースはどうやって開けるのですか?』
『横に指紋認証するところがあるからそこに指を当てると開くようになるよ』
神様からの返信が来たので、その通りにするとガラスケースが開いた。中には箱が一つ入っていた。
その箱をガラスケースから取り出し、蓋を開けて中を見てみる。するとそこには腕時計が一本入っていた。見るからに高そうな時計だ。
時計を箱から取り出し、裏を見る。
「ユニークピースって書いてある!世界に一つしかないんだこの時計。すごっ」
時計を箱に戻し、ガラスケースの中に戻す。そして、クローゼット部屋から出た。
次は階段を降りて一階に行く。階段を降りてすぐリビングがある。
リビングには100インチはありそうな大きなテレビ、テレビの前には高そうなガラステーブルと5人は座れるくらいの大きさのL字型のソファーが置いてある。
その横に6人がけのダイニングテーブルと椅子が6つ置いてあり、台所には何一つ物が置いていなかった。
リビングを出て右に行くと、トイレとお風呂、洗面所があったが、そこにも何も置いていなかった。
次にリビングを出て左側の方へ行くと玄関があり、玄関の横の棚に神様が言っていた通り財布と部屋のカードキーが置いあった。
財布のチャックを開けて中を見てみると、中にはカードが3枚と帯付きの100万円が入っていた。カードはクレジットカードと銀行のキャッシュカードと保険証だった。
次は玄関の横にあったドアを開けてみた。するとそこは、大きなシューズクローゼットだった。中に入ってみると、黒いスニーカーが一足置いてあるだけだったので、スニーカーを取り出し玄関のドアの前に置いた。