64話 ジャイロキューブと同等。
64話 ジャイロキューブと同等。
無双仙女が必死に自分の精神を整えようとしている向こうで、
神々は、ペチャクチャと、
「まあ、でも、『弟子』というカテゴリに限定した場合、オイちゃんたちくらい強い子はいなかったでちゅけどね」
「アホか! んなもん、なんの自慢になんねぇだろ!」
「他の神々は、たいして弟子を育ててなかったもんね♪」
「おほほ。お師匠様は、その件でも、よく異常者扱いされていましたよね」
「ほんと、超ウケんだけど。神々は、みんな言っていたよね。ししょーは、頭が限界まで狂っているって。ししょーのビビられ方、ガチでエグすぎて、マジハゲんだけど」
(おっ……この角度なら、ヒメのスカートの中が……ギリギリ……っ、見えない、くそ! いや、しかし、それも、またアリ!!!)
「総括すると、我が師は、あらゆる点において、規格外であり続けられた無上なる御方。それだけのことよ」
兄弟弟子達のおしゃべりを一通り聞いてから、クロートは、不敵に笑い、
「つーこった、無双仙女さんよぉ。ここにきてからはカスしか殴ってないから、現状、多少の歯ごたえがあるヤツをボコりたいという気持ちもなくはないが、負ける可能性の高いヤツとまで戦いたいなんて気持ちはサラサラない。負けるのには飽きているんでね。あと、プライドの問題もある。上位の神々に負けるのは実力的に当然だから、まだ我慢できるが、てめぇ程度のカスに負けるのは流石に許せねぇ」
(全員で一丸となって、とりつくろうためだけのウソを並べ立てて。本当は、クロートが最強神のくせに。ほんと、みっともないったらありゃしない。何が神だ。ただの腰ぬけじゃないか。闘う勇気もないくせに、闘神を名乗るな)
怒りに震えている無双仙女に、神々は背を向けて、
「つーわけで、バイバーイ」
★
――無双仙女の元から逃げだし、ある程度距離を稼いだところで、
「かはは! しっかし、クロートは容赦ねぇな!」
「冥土の土産に闘ってさしあげてもよろしかったのでは?」
「オイちゃん、実は、あの仙女ちゃんと、ちょっとやってみたかったでちゅ。行ってきていいでちゅか?」
「ダメだ。やめろ」
「えー、なんででちゅか?」
「アレとやれば、お前でも負けるだろ」
「うーん、どうでちゅかねぇ」
「じゃあ、言い方を変える。負ける可能性、ゼロではないだろ?」
「……まあ、そうでちゅね」
「じゃあ、やめろ。俺たちは、絶対なる究極最強神の弟子。どんな理由があろうと、こんな『カスみたいな世界』の『ゴミみたいな雑魚』に負けるような無様はさらせない。師匠に恥をかかせるわけにはいかん」
「あのロリババァの力はカスじゃねぇだろ!」
「デビナの言う通りだ。『愚か』ではあったが、しかし、あの強さは本物だ。我が師とトントンだったジャイロキューブに近い……いや、ほぼ同等の力量を感じた」
「えー、じゃあ、ぶっちゃけ、ししょーでも、体調が悪いと負ける可能性ありってこと? あの女、そんなにだったの? マジすげぇじゃん。パねー。てか、超ムカつくぅ」
「お師匠様とジャイロキューブの勝率は五分だったわけですから、実質、あの無双仙女という方は、お師匠様と同等ということになりますのね。イライラしますわ。私たちが敬愛し、辿り着きたいと切に願っている真の頂き、絶対なる究極の領域に、反則的な手を使ったとはいえ、それも、ほんの一瞬だけとはいえ、しかし、確かに辿り着いただなんて――」
その意見を耳にして、酒神が珍しく眉をひそめ、
「色雪ちゃん、勘違いしちゃダメでちゅよ」
「え、なにがですか、酒神くん」
「お師匠たんは、ジャイロキューブよりもはるかに強いでちゅ。だから、あの仙女ちゃんがジャイロキューブと同等だからと言って、お師匠たんと同等とはならないでちゅ」
「いやいや、酒神! 何言ってんだ、てめぇ! 事実、ジャイと先生の勝率はぴったり五分じゃねぇか!」




