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63話 やはり、邪神など存在しない。


 63話 やはり、邪神など存在しない。


 呆れ果て、つい、モノも言えなくなってしまった神々のトイメンで、


「ミシャンドラ・クロート。私は、最強の神であるあなたをも超越した、真に究極の存在! 全世界で、唯一無二の、あなたよりも強い、たった一人の存在なのよ! 闘いたいでしょう! 自分の強さを試してみたいでしょう! 自分の限界を確かめてみたいでしょう! 私には、あなたの気持ちがよくわかる! なぜなら、あなたと私は同じだから!」


 ずっと知りたかった。

 どこまで強くなったのか。

 どれほどの領域にまで至ったのか。

 ずっと、ずっと、己がどの地点にまで辿り着いたのか、知りたくて仕方がなかった。


「さあ! つまらない冗談はおしまい! 闘いましょう! 理解しあいましょう! 互いの武に触れあって、未だ見ぬ世界で踊りましょう!」


 魂の懇願。

 命がけの誘い。


 だけれど、


「だから、ヤダ」


 すげなく袖にされて、


「……なん……で」


 無双仙女は絶望する。膝から崩れ落ちそうになる。


「あのなぁ……俺がスベったみたいになるから『恥知らず極まりない勘違い』をするのはマジで勘弁してくれや。ハッキリ言っておくが、俺は、俺より強いヤツなんざ、見飽きてんだよ」


「……ぇ」


「石を投げれば神に当たる世界――『虚無』には、俺より強い神が万単位でいた。神段にギリギリ足を突っ込んでいた程度の俺らより弱い神なんざ滅多にいなかったくらいだ」


 神段に到達していたプレイヤーの数は全世界で二万人以上。

 そのほぼ全員が、所詮は単なるCPUでしかなかった当時のクロート達よりも遙かに強かった。


「……あ、ありえない……そこまで遠いはずはない」


 無双仙女は、クラっとふらついた。

 あしもとがおぼつかない。

 神の世界の現実・常識という、あまりにもスケールが違いすぎる事実を耳にして、気が遠くなる。

 失神しそうになったが、寸でのところで、


(……いや……)


 思考がピタっと止まった。

 逆に、一周まわって冷静になったのだ。

 流石に心が拒絶したのだ。


(……流石にハッタリだ。絶対にありえない。ミシャンドラ・クロートは嘘をついた。人間などに負けるものかという意地が吐かせた虚言。このミシャンドラ・クロートという神の力は究極の領域に至っている。私にはわかる。クロートという神の強さは桁が違う)


 そこで、思考が、妄想の領域にまで到達する。


(クロートは強い。本当に強い。間違いなく、このクロートという神は、師である邪神さえも超えてしまっている。師を超えてしまった弟子が、それでも、恩師に敬意を示し続けるというのはどの世界でも普通に起こりうること)


 ついには、妄想が、空想を飛び越えていく。


(いや、あるいは、もしかして、邪神など、存在しないのでは? いや、きっとそうだ。感じた通り、クロートこそが最強の神。やつら神々は、おそらく、存在しない神の影をチラつかせて、人々の心を操ろうとしていたのだろう。だから、邪神の姿を見た者が一人もいないんだ)


 間者からの報告は何度か受けたが、邪神に関するデータだけは、どれも曖昧で要領がまったく得られなかった。

 得られたデータは、神々が語るムチャクチャなエピソードばかりで、誰一人、邪神の姿を見ていない。


 だいたい、おかしいだろう。


 これほどまでの武を誇るミシャンドラ・クロートよりも遙かに強い究極神などというド派手が過ぎる強大な存在が、本当に実在するのなら、もう目立って目立って仕方がないはず。


 なのに、その姿を見た者は一人もいない。

 あきらかにおかしい。


 まさか、『誰か』が『かくまっている』とでも?

 はは、ありえない話だ。


(クロートは武の極みに達した最強の神。だが、そんな最強の神を、人間である私が、一日だけとはいえ超えてしまった。たった一日だけとはいえ、己という最強の神を超えてしまった人間が存在する――その事実を、最強神であるクロートは認められず、ハッタリでごまかそうとしている。それが現状。それだけが現状!!)


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