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59話 すべてが繋がっていく。


 59話 すべてが繋がっていく。


「ありえない! ここまでの力だとは聞いていない!」


 殲滅開始から二分。

 A1以外のすべての者が地に伏していた。

 誰も死んではいないが、もはや、闘える者はA1しかいない。

 そのA1の心も既にへし折られている。


「これはどういうことだ? いったい、どうなっている? 訳が分からない。貴様ら神々は、大した事ないはず……」


 どの方面からの情報であっても、神々の力は武点数で言うところの二十点が精々。

 その気になれば、S1一人だけでも余裕で制圧できる程度でしかなかったはず。


 なのに、なぜ、『たった一人の神に全員がやられてしまう』などという、こんなありえない現状が発生している?


「アイムと忍集が嘘を……いや、ありえない! どういうこと?! 少なくとも、心底から邪悪な神に怯えているアイムは、決して人類を裏切らない! そのアイムの発言から推定する限り、お前たちの力はビッグの倍がせいぜい! なのに! これは、どういうこと?! S1! どういうことですか!」


 助けを求めて視線を向けるが、

 S1は、完全に気を失って転がっているだけ。


「……ちっ、本当にローキック一発で気絶したの?! クソの役にも立たない女ね!」


 苦々しい顔をしているA1に、クロートが、


「俺たちは元々、お前らよりも弱かった」


「……は?」


「だが、師は、そんな俺たちに、根気よく丁寧に気が遠くなるほどの長い時間をかけて、一つ一つ、武の全てをたたきこんでくれた。だから、やり方は知っている。当事者の目線に立った修行を経ている俺たちは、弱者の鍛え方を十二分に解している」


「なんの話を――」


「とりあえず、手っ取り早い方法は、相手より少し強いくらいの力で何度も戦ってやることだ。ワザと立ちッぱで負けたり圧勝したりするのが効率的には最悪。ギリギリの敗北が経験値的にはもっともおいしい。つまりはそれだけの話だ」


「……」


「あと、俺たち自身の練習でもあった。注意深く、『俺らを観察している奴ら』に、力の底を一切感づかせずに、いい按配あんばいで勝つという訓練は、相当の神経を使う。いい練習になった。感謝してやる」


「!? ばなか……し、忍びの存在に……気づいて……」


「気づくにきまっているだろう。気配の殺し方があまりに下手クソだったから、最初は、バレることを前提とした何らかの作戦なのかと疑ったぐらいだ。本当に偵察したいなら、もうちょっとマシなヤツを送ってこい、バカが」


(やつらは、この世界で最高の忍集なのに……それすら……)


 そこで、




「――まだだ!」




 一人の男がヨロヨロと立ち上がった。

 その男の目だけは死んでいない。

 燃えるような覚悟で、


「負けるわけには……いかないんだ! 母が……待っている……治療は……まだ施してもらっていないんだ……ここで、お前らに、負けるわけには……」


「おまえは、確か、A6とかいうヤツだな。えーっと」


 クロートが、懐から取り出したメモ用紙を確認しつつ、


「本名、ウラジミー・リー。母親の名前は、マリア・リー。そうだな?」


「な……なぜ」


「おまえの母親、才能ありそうだったから、昨日、治療して、弟子にしたぞ」


「……は?」


「ま、あのババアの病気を治したのは俺じゃなくて、色雪だけどな」


「その、片っぱしから弟子にしていくスタイル、ぶっちゃけ、勘弁してほしいでちゅ。あ、ちなみに、リーちゃん」


「……ぇ……」


「治療したのはマジでちゅよ。神段に達している気功術士の色雪ちゃんにかかれば、あの程度の病なんて、秒殺でちゅ。ちなみに、今のは、病気を殺すという意味をかけたポメラニアンジョークでちゅ」


「多角的に訳わかんねぇよ。酒神、お前、マジで、ちょっと黙ってろ」


 言いながら、クロートは、リーの元まで歩き、


「今、お前の母親には、病気で死んだ方がマシだったと後悔するほどキツい基礎修行をさせている。くく、お前も、まずは、地獄の基礎から積んでもらうぜ、覚悟しておけ」


「……」


 どういう感情を顔にだすべきなのだろうかと心底から困惑しているリーに背を向けて、


「さて、じゃあ、そろそろ、本題に入ろうか」


 クロートは、A1を睨み、


「お前、A1だったな」



「そ、そうだ。それがどうし――」


「呼べ」


「……よ、呼ぶ?」


「御大・無双仙女……だったか? ここに呼べ。噂を聞く限り、少しは動けるヤツなんだろ? 本来、俺の性質は初心者狩り寄りで、本当に強い化物とギリギリを競う死闘なんて、ダルいから、やりたかねぇんだけど、さすがに、これだけゴミばかりを相手にしていると普通の戦闘が恋しくなる。この世界の頂点が、俺らに匹敵するだけの強者である事を、俺も心から願っているぜ」


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