58話 みんな大好き♪
58話 みんな大好き♪
呆れ口調でおしゃべりをする神々。
「確かに、今までに見た子の中では、一番マシな闘気を放っていまちゅけど……」
「俺らからすれば、所詮、目クソ鼻クソなんだよな」
そこで、二人の後ろから、
「二人ともぉ♪ モエモエが応援にきたよぉ♪」
異常に甲高い裏声が響いた。
「ん……ああ、ロリエルか」
突然現れた妹弟子の姿を視界にとらえると、
クロートは、穏やかな口調で、
「ボードロとかいう国は制覇できたのか?」
「デビナちゃんと色雪ちゃんが楽勝で仕事を進めているよ♪ あっちは問題なさそうだったから、モエモエは、どうなるか分からない二人を心配してきたんだけど……」
そこで、ロリエルはサバキのメンバーをチラ見して、
「くる意味なかったね♪」
「いや、そうでもない。というか、実にすばらしいタイミングで登場してくれた」
言いながら、クロートは、すぐ近くの段差に腰をかけ、
「こいつらの躾、お前に任すわ。いい加減、雑魚をボコるの飽きた」
「怠慢だね♪」
「俺、ここまで結構働いてんだろ。あ、そいつら、殺すなよ。弟子にするから」
「お疲れなの? じゃあ、モエモエが癒してあげる♪ 疲れを溶かして、いっぱい、いっぱい、元気になぁれ、モエモエ、キュゥン♪」
「そういうのいいから、さっさと、あいつら調教してきてくれ」
「もう、照れ屋さんなんだから♪」
「オイちゃんは元気になりまちたよ。ロリエルちゃん、ありがとうございまちゅ」
「酒神きゅんは素直でいい子だね♪ 大好き♪ クロートきゅんのクーデレなところも好きだよ♪ みんな大好き♪」
そこで、ロリエルは指の関節をポキポキっと鳴らし、
「でも、あなたたちはそんなに好きじゃないから……容赦なくブっ潰すね♪ まずは、あなたからね♪」
ニコニコとあざとい微笑みを絶やさないロリエルを睨みながら、
S1が、
「神ごときが偉そうに……御大を除けば、人類史上最強であるこの私を、ナメてんじゃねぇぇぞぉおおおおおおおおおおおおおお!」
凄まじい速度で突撃してくるS1を見て、
「?? ん? ぇ、えっとぉ……なにしてんの?」
ロリエルは、つい虫を見る目をしてしまった。
慌てて表情をあざとい笑顔に戻し、
「手足がバラバラだよ♪」
言いながら、S1の突きと蹴りを優雅にさばいて、
「動きに芯もないし……というか、なんで、そんなにモタモタしているの? 足が止まっているのはどういうこと? けられたいの? いいよ♪ じゃあ、蹴ってあげるね♪ はい、ポォン♪」
言うと、ロリエルは、無防備なS1の足に、鬼のようなローを入れた。
風圧だけで全身を持っていかれそうになるほどの、凶悪な速度で空間を裂く右足。
「げはぁああっ」
一回転半して、ズガンと地面に頭を叩きつけるS1。
ダラダラと血を流し、一瞬だけよろめいてから、
「く……は……ぁ……」
動かなくなった。
一瞬の出来事。
強さの桁が違いすぎるがゆえの、しょうもない結末。
「あれ? もう終わり? うそぉ♪ 冗談だよね♪ え……マジ?」
つい素で問いかけてしまったロリエルの背後から、
「おいおい、殺してないだろうな」
攻めるような声が響いた。
「だ、大丈夫だよ♪ モエモエは、殺しとか苦手だもん♪ 好きなのは、お菓子とヌイグルミとネコさんと――」
「萌えアピールいらんから。残ってるカスどもを掃討してくれ。殺さずにな」




