57話 質問。
57話 質問。
「A1、質問させていただきたい」
「許す。なんだ、A5」
「例の邪神は、無数に存在する神々の中でも究極かつ最強という話。御大を超えている可能性も考慮すべきではないでしょうか?」
「ありえると思うか、A5」
「んー……まあ、ないとは思いますが……」
「アイム・ソーリは、稽古で何度も神々と手合わせをしている。そのアイムの発言だが、やつら邪神に従属している神々は、S1よりは確実に弱い、とのことだ。そんな従属神の頭。所詮、邪神はその程度の地位でしかない。神などという御大層な肩書きがついてはいるが、実際のところは、そこそこ強い異世界よりの侵略者でしかない。本音を言えば、御大の出番はないだろう」
「なるほど」
そこで、少し離れた場所で、腕を組み、壁にもたれかかって集会を観察していたS1が、
「A1、質問」
「聞かせてください、なんでしょう、S1」
「気合い入っているところ悪いんだけど、今回の襲撃、私一人にやらせてくれない?」
「……は?」
「昨日、寿司屋で、ちょっと、イラっとする事あってさ……暴れたい気分なんだよね」
「動いてくださるのなら、是非お任せしたいですね。S1が先頭に立てば、こちらの被害は、ほぼほぼゼロになるのですから。……本当に任せてよろしいのですね?」
「いいよ。じゃあ、決まりね。……明日、神を狩ってくるよ。ふふふ」
「S1、質問してよろしいでしょうか」
「許すわ。なに? A2」
「八人全員を狩るとなると、さすがに、かなりの手間と時間がかかると思われます。よろしければ、雑務を担うサポート役として同行させていただきますが、いかがでしょう?」
「ありがとう、A2。あなたの忠義にはいつも感謝しているわ。でも、大丈夫。私がその気になれば、あの八人程度を殺すのに、手間も時間もかからないわ」
「さすが、S1」
「S1、質問していいでちゅか?」
「許――ん、なっ……あんた! 酒神! クロートも!」
集まっている五十人の最後尾、そのさらに後ろから響いた声に反射的に反応しかけたS1の表情が険しくなる。
A1が、即座に警戒態勢をとりつつ、
「酒神とクロート……闘神か。なぜ、ここが……いや、そんな疑問は、現状、どうでもいい。とにかく、迎え撃つ。S1! 申し訳ありませんが、こうなった以上、我々も手を出さないわけにはいきません!」
そこで、A1はスゥっと深く息を吸って、
「総員、突撃ぃいいいいいいいいいいいいいいいい! 神を殺せぇええええええええ!」
「オイちゃんの質問は無視でちゅか。まあ、聞きたい事とかなかったから、別にいいんでちゅけどね」
呑気にそんな事を言いながら、襲いかかってきた数十人の攻撃をヒョイっと気軽に避ける。
八方から這い寄ってくる、数多の殺意と害意。
止まらないバリエーション豊かな攻撃の嵐。
だが、酒神とクロートは、人類の守り手であるサバキの全力総攻撃を、園児と鬼ごっこでもしているかのような気楽さで、ヒラヒラとよけながら、
「150段前後が50人と250段そこそこが一人。ちっ、クソが。酒神ひとりで十分だったな」
「オイちゃん、弱いものイジメ嫌いなんでちゅけど……クロートちゃん、本当に全員殺すんでちゅか?」
「ここまで弱いと、さすがに殺す価値もない。こいつらで革命は起こせない……計画変更。全員弟子にしよう」
「えー、マジでちゅか。もうすでに、500人くらい弟子を取っているんでちゅよ。なのに、さらに、こんなにいっぱい育てるなんて、面倒くさすぎでちゅよ」
「それほどの膨大で気が遠くなるような苦行を経れば、俺たちはさらに強くなれるだろう。武の極み――師匠に近づくためには必要な苦労だ」
「Mでちゅねぇ。まるでお師匠たんみたいでちゅ」
「そんなに褒めても、何も出ないぞ」
「全員、下がれぇええええええ!」
S1の叫びを聞いて、サバキのメンバーはピタリと動きを止める。
「今の動きを見る限り、どうやら、神々は、想定よりも多少は出来るらしいわ。ムカつくけれど、面白くない訳でもない。絶対に手を出さないで。アレは私の獲物。神殺しの称号は、一人占めさせてもらう」
酒神は、尊大で不遜な態度のS1を指差しながら、
「なんか、あの子、一人でくるみたいでちゅよ」
「あの程度で、よく、あれほど自信満々の顔ができるな」




