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53話 我慢できない。


 53話 我慢できない。


「あの男は、この余と唯一タメを張った偉大なる強者。『弱い』などという言葉を使っていい相手ではない」


「いや、でも……実際、クソ弱かったし……」


「不快なだけのハッタリをいつまで続けるつもりか。即座に撤回し、謝罪しなければ――」


 そこで、バイゼルが、


「寿司屋の青年!」


 ゴードの肩を掴み、


「君の作戦は理解できた。非常に頭の回転が速い。その点は素晴らしいといえる。君がヤツの気を引き、その間に、私がどうにかするという――的確だし、この場面では、確かにそれしかなかった! だが、いいんだ! 何もせず、全力で逃げろ!」


「……へ?」


「君が死ぬ必要などない。これは私の仕事だ。……それに、わかったんだよ、偉大なる闘神様に導かれて、ようやく理解できたんだ……私が本当にやりたかったことは……」


 バイゼルは、グっと両の拳を握りしめ、


「別に一番になりたかったんじゃない。あの女どもを苦しめたかったわけでもない。私が武道を志した理由なんて本当はひとつしかない。私は、ただ……ただ!」


 脚に力をこめる。

 恐怖を無視して、侵略者の元へと飛びかかり、


「この拳が、どこまで昇れるのか、知りたかっただけだ!」


 覚悟を込めた拳をつきだした。

 本気の一撃。

 しかし、


「ふん」


 簡単に回避される。

 バイゼル渾身の右ストレートを、あっさりと軸逸らしで避ける赤褐色の男。

 赤褐色の男は、即座に、彼我の力量差を理解したようで、


「悪くはない……が、余の相手にはならんな」


 優雅にそう言ってから、バイゼルの腹に、軽く膝をブチこむ。

 ズガンっと、芯に響く痛みを受けて、


「ぐぅ!」


 バイゼルは、悲鳴をあげたが、


「まだだ! 私は! まだ戦える!」


 目は死んでおらず、


「偉大なる神の教えを受けるまで、私は死なん! 私は! 純粋なる武の極みを求める戦士! 貴様なんぞに!」


「くく……理想を口にするのは自由だが、しかし、できれば、己の力量にあった夢を口にしてもらいものだな。呆れるという感覚は、特に愉快ではないのでね」


 のんびりとそう言いながら、握った拳をバイゼルのミゾオチに、叩きこむ。


「ぐあ!」


 苦悶の表情を浮かべるバイゼル。

 勝負になっていない。

 力量差がありすぎる。


「相手にならんな。武の極み? 知りたいのなら教えてやろう。これこそが、頂点! 神の領域だ!」


 二人の戦いを黙ってみていたゴードは、


(どっちも弱ぇ)


 飽き飽きした顔で、溜息をついた。


(特に、三男貴族の方……いやぁ、酷いねぇ。200段くらいか。ほぼ初心者じゃん。確か、どっかの道場には入ったけど、そこでも三番手が限界だったって話だっけ? たぶん、三人しかいない道場だったんだろうなぁ)


 ゴードの視点では、バイゼルなどカスでしかない。

 なぜ、そこまで弱いのだろう、と本気で不思議に思うレベル。


(てめぇが使っているスタイルの立ち回りさえ全く理解できていない。なんで、そんな脳死プレイが出来るかね。こういう試合、見ているのダルいんだよなぁ……ああ、やべ……ウズいてきた。八人も弟子を育てたせいで、人に教えたがるクセがついちゃってんだよなぁ)


 他人様のケンカに口出しなどすべきではないと、必死に我慢していたが、


(……ああ、だめだ……もう無理……我慢できない)


 ついに、ゴードは、声を荒げて、






「そこで『Zドラゴンニー』!」






「!」


 バイゼルは、ゴードの声が耳に届いた直後、咄嗟に、言われた技を使った。

 それは、ただの反射でしかなかった。

 どうしようもなくなって、つい、脳が反応してしまっただけ。


 ――だが、しかし、すると、


「かはっ!!」


 見事、敵の顎に膝が食い込んだ。

 侵略者の体がユラリとよろける。


「そこ! そのタイミングで、さっきから、あんたがやっている『Xタイガーコンボ』! 急いで!」



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