52話 あなたは神を信じますか?
52話 あなたは神を信じますか?
「どうにも、みじめになってね。ヤケクソ、だったのかもしれない……あるいは、自分を保つためには、それ以外の方法を知らなかったから……ふっ。どっちにしろ、おろかだ……」
(やべぇ……マジで、なんの話をされてんのか、まったく理解できねぇ。返答を求められたら、まともに返せねぇぞ、これ)
「すべてをブチ壊したくなって……形而上の存在に頼った。殲滅は無理でも、私に屈辱を刷り込んだあいつらに、致命的なダメージくらいなら、あたえてくれるのではないかと思って」
(ん? よくわからんけど、なんか、物騒な話になってきたぞ……大丈夫か、この話、このまま続けて……)
「まさか……あそこまで桁が違う神だったとは……思ってもみなかった」
「そう……ですか……なるほど(もう、ほんと、何から何まで、何言ってんのか、まったくわかんねぇ)」
とりあえずテキトーに相槌だけでも打っておこうと決めたゴードの横で、
バイゼルはつづけて、
「君は、神を信じるかね?」
「は?」
全力のキョトン顔を惜しげもなく披露してから、
「と、唐突っすね。えっと、神様……ぅぅん、いや、まあ、見たことないんで、信じるもクソもないっていうか……」
「はは。同じことを思っていたよ。少し前まで。あの方々だって、たんに、『異世界からきた化物の一種』でしかない、などと思っていた。ふっ、違った……本物だったんだ」
(もう、ほんと、ちょっとくらい分かる話してくんねぇかなぁ……つーか、いつのまに、宗教の話になったんだ? もしかして、俺、勧誘されてる? そいつは、流石に、勘弁、勘弁! 宗教にかかわったらロクな結果にならないって事くらいは、『アホが天元突破している無敵の俺様』でも、流石に充分理解しているっつーの)
「私はもう行く……話を聞いてくれて、ありがとう」
「ぇ、ぁ、はい……そうすか(なんだよ、よかったぁ。どうやら、勧誘じゃなかったっぽい)」
ホっとしているゴードの横で、
「――ん?」
バイゼルが立ち上がると、そこで、
「……まさか……」
二人の目の前の空間に亀裂が入った。
バチバチと音を立てて、空間をゆがめていく。
それを見て、二人は、
(ルート?! ちぃ! 侵略者か! どこの? 十二次元までなら、私一人でも、どうにかできるが……)
(まただよ。あの異常現象。なんか、多いなぁ。……この世界、大丈夫か? 世界単位でバグってんじゃねぇの?)
バチバチと音を立てていたルートがゆっくりと静かになった。
その直後、
「よーし、開通したな……ん? おい、そこの二人。案内を命じる。拒否は許さん」
現れたのは、ツノをはやし、赤褐色の肌と青い髪を持つ、まさに鬼のような、コワモテの大男。
(じゅ、十八次元の侵略者だとぉ! ふざけるな……個の強さでは、十九次元以上ともいわれ、性根の悪さでは全世界ぶっちぎりといわれている最悪の世界からの侵略者……くっ……無理だ……私一人では勝てん……)
脂汗を噴き出しているバイゼルの横で、
(また、すごい配色だな)
ゴードは、呑気に、
(あのバチバチから出てくるヤツは、弱いってだけじゃなくて、肌の色が違うって特徴もあるのか……)
「この世界に顕現した化物について教えろ。余が唯一のライバルと認めたバーナスを倒したという化け物について。……まあ、何かの間違いだとは思うのだが、一応、確認だけはしておこうと思って、ここにきた。さあ、案内せよ」
その発言を聞いて、ゴードが、
「バーナス? なんか、どっかで聞いたことがあるような……ああ、この前、会ったやつだ。そのバチバチから出てきた、あのクソ弱かったヤツ」
「「は?」」
「――え? なに?」
二人から同時に視線を向けられ困惑するゴードに、
赤褐色の男が、
「バーナスが弱い? ……貴様、狂っているのか? あの男は、この余と唯一タメを張った偉大なる強者。『弱い』などという言葉を使っていい相手ではない」
「いや、でも……実際、クソ弱かったし……」




