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49話 桁違いの波動。


 49話 桁違いの波動。


「――なるほど。明日か。襲撃は」


 足もとで平伏しているバイゼル(A3)の定時報告を受け、

 スペクトラル・ボウは、


「ずいぶんと時間がかかったな」


 ヒゲを撫でながらそう言う闘神に、バイゼルは、揉み手をしながら、


「げっへっへ。いろいろと、面倒事が多発しましたゆえ。――で、いかがいたしやす?」


「おそらく、今日、クロートと酒神が乗り込むだろう。それで終わりだ」


 バサっと羽織を着直し、くわえている長い楊枝をクイっとさせながら、気楽な口調でそんな事を言うボウ。

 その、浅慮と断ずるしかない発言を受けて、バイゼルが表情をゆがませた。


「……は? 二人だけ? いやいやいや! 聖下! サバキを侮ってはいけやせん! 偉大なる邪神様と共に、全員でかかるべきでやす! 他はともかく、S1と御大は強い! 邪神様の御力があってこその――」


「なるほど。貴様がサバキを裏切ったのは、我が師の情報を得たからか」


「……」


「どこで何を聞い……いや、まあいい。それより、貴様の中の誤解を、まずは解いておこう」


「ご、誤解?」


「今日で遊びは終わる。なら、バラしても構わないだろう」


「遊び……どういうことでげ――」


「今から貴様に、我の、本気の技を見せる」


 目を光らせたボウを見て、つい、


「……え、あの……」


 尻込みし、後退りをするバイゼルに、


「そう、心配するな。ダメージはない。強制的に対象者を確反状態にする気当て系の技だ。発生が遅すぎるので、上級者には通じないネタ技だが……ま、それでも、十分に、解るだろう」


「……わ、わかる……とは? いったい――」




「――豪絶錬気」




 ボウの眼光が鋭く光る。

 グゴゴゴっと、大気が揺れた。

 グツグツと練りあげられた闘気の渦が、


「ひぃいいいいいい!」


 バイゼルのからだを包み込んだ。

 あまりのおぞましさに腰が砕ける。

 体の震えが止まらない。

 気づけば無様に泣きじゃくっていた。


「ひぃい! ひぃいいいいい!」


 ボロボロと泣きながら、とにかくこの場から離れようと、ドタボタと地面を這いずる。


「もう解いた。落ち着け」


 脳味噌をヤツ裂きにされたと錯覚した。

 数秒間、それが錯覚である事に気付けなかった。 

 圧倒的な豪気が消えて十秒が経過してから、ようやく、バイゼルは、必死にその場から逃げだそうとする無様な動きを止めた――が、


「ひー、ひー、ひー、ひゅう……ひゅう、ひゅう、ひゅう……ひゅー」


 いまだ、うまく息が吸えず、その場で軽くのたうちまわる。


「大げさがすぎる。まったく、惰弱な……さっさと呼吸を整えろ」


「ひゅう……ひゅう……はぁ……はぁ……はぁ………………ぃ、いまのは……いったい……いったい……ひゅう……はぉあ……ぁ、あの、桁違いの波動……お、御大すら……相手にならない、絶大な力の波動……ありえない……あんな、力……どういう……」



「簡単な話だ。我らは、この世界の『忍び』に監視されていることを知っていた。お前に教えてもらうよりも以前からな」


 ボウの言葉に、バイゼルは目を丸くする事しかできなかった。


(さ、最初からバレていた? ぃ、いや、そんな事……ありえない……)


 サバキが密かに派遣していた忍び集。

 その実力は折り紙つきで、気配を悟られるようなバカは一人も在籍していない。

 相手が神々だという事もあって、監視は、常に、レベル5の厳戒態勢で行われていた。


(神々の監視に送り込まれたのは最上級の世影だけで構成された最強の部隊『由羅』。隠密能力だけに特化した彼らの気配を察知する事など出来るわけが……)


「監視を見破るなど不可能だとでも言いたげな顔だな。我らにとっては、その思い違いこそが、何よりの愉悦。最高の娯楽だ」


「お、お聞かせいただきたい。本当に……本当に……最初から……」


「そうだ。我らは、最初から貴様らの動きを全て掴んでいた」


 そこで、ボウはニヤっと嫌な笑みを浮かべ、


「さて、つまりは、どういうことだ? 推測してみろ」


「まさか……」


 もし、全てが事実なら、最悪の想像に辿り着いてしまう。


「ずっと……さほど強くないフリを――」


「クロートの案でな。面白かったぞ。貴様らが無様に踊っている姿」


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