表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/72

43話 治安が悪すぎる世界。


 43話 治安が悪すぎる世界。


「では、質問の続きだ。答えてもらおう。この世界に顕現した化物、私の獲物はどこにいる?」


 問いなど頭に入ってこない。

 恐怖と驚愕が、パナーの頭を高速回転させる。


(これが、最強世界と名高い十九次元界で王になった者の力……まさしく、神の領域。私では何もできない。ああ、認めよう。私では何の役にもたてない……だが、あの方々なら!!)


「黙秘を貫くか。それは忠誠か? それとも、ただ恐怖で口が動かないだけか? まあ、いい。言わぬというのであれば、こちらも――」






「あのー」






「……ぁ?」


 突如、空気に触れた声。

 バーナスが、少々イラだった視線を向けると、そこには、みすぼらしい男が一人。

 比較的がっしりとした体をしてはいるが、それ以上でもそれ以下でもない、ただの凡夫。

 そのクソみたいな凡人は、おずおずと、


「なんの話か知りませんけど、とりあえず、続きは、こっちの話を終わらせてからにしてもらえると助かるなぁ……と。すぐにすむんで、いや、ほんとマジで」


「状況が理解できていないようだな」


「ああ、はい。まったく」


「……鬱陶しい。何の価値もないゴミめ。おい、女、話の続きは、こいつを排除してからに――ん?」


 視線を向けると、そこには誰もいなかった。


「消えた? あの女、どこに……ちっ。探知スキルを使っても気配を感じないということは、ステルスではなく、瞬間移動系のスキルでどこかに飛んだな……ちぃ!」


 バーナスが、ゴードに意識を向けた直後、

 パナーは、瞬間移動で逃げ出していた。


「……ふん、まあいい。目につく生き物を殺し続けていれば、いずれ、向こうからやってくるだろう」




 ★




 一キロほど離れた場所に瞬間移動していたパナーは、


(最強たる十九次元の侵略者。下層世界になど興味を示さないはずの超越種……だが、絶望的な絶望ではない。こっちには闘神様がおられる。……出前にきていた青年よ、すまないが、時間稼ぎの囮になってくれ。跡形も残らず消されるだろうが、闘神様が必ず仇をとってくれる! ……ほんとうにすまない!)


 心の中で、出前の青年に、心底からの謝罪の言葉を述べながら、

 パナーは闘神二人のもとへとひた走る。




 ★




 バーナスは、ゆっくりと、ゴードの目の前まで歩いてきて、


「虫ケラよ。貴様は豪運の持ち主だといわざるをえない。全世界最強の絶対神である、この久遠天帝バーナスの手によって死ねるのだから。それ以上の名誉はこの世に存在しないと言えよう」


 尋常じゃなく尊大な態度。

 あまりにも不遜が過ぎる、そのふざけたザマを目の当たりにして、ゴードは、


(最強の神とは、また、随分と大きく吹いたねぇ。確かに、今までに見てきた連中の中では、一番マシな動きをしていた。でも、所詮は、八百段あるかないか。ただの番兵を殺したり、女を威嚇したりはできるかもしれないけど、俺には勝てないね)


 ゴードがポリポリと頭をかいていると、空間のゆがみから、さらに、


「お待たせしました、上様」


 羽衣をまとった絶世の美女が現れた。

 長く蒼い髪が幻想的な淑女。

 銀の肌と合わさって、特異な美を感じさせた。


「カウナか。別に待ってなどいない。というか、来なくていいといったはずだが?」


「上様の供回りこそ、わたくしめの存在意義。上様の身の心配などは、必要がないので、当然しておりませんが、上様ほどの御方が、身の回りの雑務に汗を流すなど、決してあってはならないこと。どんな些細なことでも構いませんので、わたくしめにお申し付けください」


「その忠誠心、見事。では、カウナ。さっそくだが、そこにいる目障りなゴミを片付けておけ」


「かしこまりました」


 うなずいた直後、カウナは、ゴードに、さげすみの視線を送り、


「みすぼらしい虫ケラめ。天と地のすべてを支配する無上の王、絶対の神であらせられる上様の視界を汚したその罪、万死に値する」


「……そっちが勝手に俺の前に出てきたんだけど……」


「虫がしゃべるな。不快だ」


 歪んだ表情でそう言い放ち、


「――死ね」


 ゴードを踏み潰さんと飛びかかっていったカウナ。

 彼女の勝利に疑問を持たないバーナスは、見るまでもないとばかりに、スっと背を向け、まずどこに向かうべきかと思案にふける。


(そうだな。まずは――)


 そんなバーナスの耳に、




「かはぁっ!!」




 信じられない声が届いた。

 血が混ざっているカウナの悲鳴。

 反射的に振り返ると、


「ほんと、絡まれること多いなぁ……どこもかしこも、治安悪すぎだろ、この世界」


 虫ケラの足もとで、


「うぅ……くぅ……あぁ……」


 カウナが、息も絶え絶えになっていた。

 恥も外聞もなく吐瀉物を垂れ流し、腹を抱えてうずくまっている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ