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36話 誰か、助けて。


 36話 誰か、助けて。


 列強の一つであり、アシテンア大陸北西部では最も大きな国、ボードロ神国。

 その特徴を一言でいえば、性奴隷産業を主とするイカれた独裁国家である。


「暴君トース……覚悟しろ。今日で、貴様の独裁政権も終わる」


 レジスタンスのリーダー、誉れ高き女勇者パナーは、この日のために磨き上げてきた魔法の剣を構えながら、


「母と姉が貴様に犯され殺された。妹は、貴様のオモチャとして、豚共の慰み者になって死んだ。お前が生きている限り、この国の女はすべて、貴様のオモチャとして弄ばれる。許せるものか……必ず殺してやる」


「龍脈、という概念を、君は知っているかな?」


「この地に宿る加護のことだろう、それがどうした!」


「そう。そして、龍脈は時として、特殊な闘気の持ち主の体を気路として、地表へと、たまった龍気を放散する。その際、気路として使われたものは、爆発的なエネルギーを得る。私は、龍脈のエネルギーを自在に操れる特異体質だ。その意味が、わかるかね?」


 言いながら、トースは、玉座から立ち上がり、


「元皇女殿下、現レジスタンスのリーダーであり、女勇者の称号を持つ才女パナー。城から逃げた後の君の噂は聞いている。ジェットドラゴンを狩ったこともあるそうだね。素晴らしい。やはり、女は危険だ。なぜか、この世界では、女の方に、闘いの才能が芽生えることが多い。……不愉快だ。実に不快だ」


 かつかつと、ゆっくり、パナーの方へと歩いていき、


「女の体を主な商売にしている理由など、じつのところ、ひとつしかない」


 眉間にしわをよせ、


「ムカつくんだよ、てめぇら」


 パナーの腹に、高速の膝が入る。


「が、はっ!」


「女なんざ、男の食糧であればいいんだ。たまたま女として生まれ、たまたま才能が開花したからって、この私を、まるでクソでも見るような目で見下しやがって。あのゴミ女ども……忌々しい!」


 トースは、


「おまえも元王族。『やつら』の事も知っているだろう」


 ――サバキ。

 世界を守る盾であり剣。


「あの鬱陶しい連中……メンバーの九割が女。龍脈を百パーセント吸収した時の私でさえ、あいつら全員を相手にすれば容易に負けてしまう。世界最強などと持ち上げられている、あの妖怪ババアに至っては、MAX時の倍の力を有していたとしても、おそらく手も足も出せん。しっかりと年貢を納めているから、向こうからこちらに手を出してくることはないが……この関係性も、飼われているようで不快だ。やつらに収めている年貢など、女を売れば簡単に稼げる額でしかないから、たいした痛手ではないが……これはそういう問題ではない。もっとも大事な、男の尊厳の問題だ。わかるか、えぇ?」


 地に伏しているパナーの足を踏みながら、


「この状況こそがこの世のすべてであるべきなのだ」


「ふ、ざけ……るなぁ!」


 力を入れるが、まったく動かない。

 トースの力が強すぎる。


 パナーは間違いなく天才の部類に入る戦士。

 並の人間では百人束になってかかっても瞬殺されるジェットドラゴンを一人で倒した実績は伊達ではない。


 だが、トースには勝てない。

 どんなに楽観的かつ低く見積もっても、

 トースの力は、パナーの倍以上。


「言っておくが、龍脈のエネルギーを扱えるのは私一人ではない。私ほどではないが、上手くエネルギーを溜められる戦士が、この城には、全部で十人いる。私の親衛隊だよ。私同様、なぜか、龍脈を扱える者は容姿が醜悪でね。全員、漏れなく不細工だ。おかげで助かったことある。女に虐げられてきた彼らは、女に対して激しい憎悪を抱いている。彼らは、同じ境遇である私の政策に心から共感し、絶対の忠誠を誓ってくれた。そんな彼らに、私はいつだって、褒美をやりたいと思っている」


 トースは、そこで、ニヤァっと笑い、


「今回の褒美はお前だ。そして、ここ数週間、やつらには、買うのも犯すのも固く禁じてきた。くくく……わかるかね? 我慢もそろそろ限界。条件は完璧に整ったということだ」


 おぞましい笑顔で、


「さあさあ、それでは、さっそく、はじめよう。君を犯すのにすら飽きた者によって戯れに殺されるのが早いか、君の精神が尽き果てるのが先か。真理の限界を測る極限のゲーム。……楽しい実験を、いざ、はじめようじゃないか」


「おまえは普通じゃない! 絶対に神罰がくだる!」


「くく。絞り出した最後の言葉にしては、あまりにも安い。ほとほと下賎だと言わざるをえない。少しは歴史を注視してみたまえ。私は神に選ばれたからここにいる。つまりは、神から、パナー元皇女殿下を玩具にしてもよいという許可をいただいているのだよ」


「ふざけたことをぉおお!! いい加減にしろ、クズ野郎!! さっさと、ころせ! 今すぐ殺せ! あの世から呪い殺してやる! 必ず呪殺してやる! 覚悟していろぉおおおおおおお!」


「呪いなどは存在せんよ。事実、私は、こうして元気に生きているだろう?」


「なら、私がこの手で殺す! うぉおおおお!」


 トースの足から逃れようと必死にもがくが、軸を踏まれているので、どうしても、立ち上がる事さえできない。


「ほらほら、頑張れ。どうした、まったく動いていないぞ? 私を殺すのではないのか?」


「くぅう、くそぉおおおおお!」


「ははははは! ほら、もっと歌え!」


「ぬぅう……ひっく……く、くそったれ……ひっく……ふぐっ」


「くく。なんと、みっともない。仮にも勇者の称号を持つ者が、無様に涙を流すとは」


(誰でもいい……だれか、助けて。この状況を打開してくれるのであれば、このクズ野郎を殺してくれるのであれば、どんな要求にも応えよう。悪魔と契約するのも辞さない。魂を言い値で売ったっていい。だから……頼む……だれか……だれか!!)


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― 新着の感想 ―
[一言] セン拳にも龍の名を冠したものがありましたね。 そして主人公はイケメンではない
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