32話 僕のサバキアカデミア。
32話 僕のサバキアカデミア。
サバキのメンバーになるための方法は二つある。
そのうちの一つが、ここ、サバキアカデミーを卒業すること。
十歳にもなれば、その身に宿る武の才能がどの程度か識別する事も可能になる。
サバキにスカウトされた子供が、
十歳から二十歳になるまでの十年間、
命を削って武を磨く世界最高の戦闘教育機関。
それこそが、ここ、サバキアカデミー。
「おい! 闘神の続報! ビッグの元に現れた八人の闘神は、ぶっちゃけ、どうしようもないってほどは強くないらしい。ビッグやアイム程度じゃあ、確かに相手にならないみたいだが、タイマン限定ならA1の方が余裕で強いだろうって話だ。ただ、闘神共の頭である邪神は、流石にそこそこ強いんだってよ」
シバクの最北端、ド田舎の外れにひっそりと建てられた八階建ての建造物。
その隣に広がっている『百人以上の大人が余裕で稽古に励める、かなり広大な道場』――に駆け込んできた、十年生の青年クレオが、訓練をしていた五人の同級生と90人ほどの後輩に向けて、
「聞いておどろけ! 邪神の武点数は、推定で50点以上!」
「へぇ。本当に、かなり強いわね」
サバキアカデミーの歴史上最高の才女と誉れ高き、
メリー・イエロースターが、
「確か、『武点数』って、御大を100点としたうえでの評価基準よね。ふぅん。御大の半分もあるんだ。正直、そこまでとは思っていなかったわ」
「だろ? いやぁ、さすが神! 50点っつったら、S1様と互角だぜ。かなりやべぇ」
「あんた、なんで、コードネームに敬称つけてんのよ」
「A1までは、なんとか呼び捨てにできるが、さすがに、あの方は無理だ。二か月前の特殊訓練で、あの方の指導を受けたんだが、あの方こそが神だと思ったね。もう、震えたぜ。そのS1様が陶酔している御大……いやぁ、ほんと、どんだけなんだろうな。一度くらいは会ってみてぇなぁ」
「私らみたいな、単なる一候補生が、偉大なる御大に会えるわけないでしょう」
「卒業すら微妙な俺は、そりゃ無理だろうけど、アカデミー史上最高の原石と名高いお前なら、頼み方次第で、いけるんじゃね? 結構な頻度で指導にきてくれるA2になら頼みやすいだろ。試しに、土下座とかしてみたらどうだ?」
「サバキの正式メンバーでも、A10以下じゃあ、めったに顔も拝めないそうよ」
「A10以上はキツいなぁ……ちなみに、おまえ、卒業後は、どの地位からスタートなんだっけ?」
「B2」
「おまえほどの女でも、Bスタートか」
「サバキの中でも、A組になると、強さの質がグンっと変わってくるからね。ま、いずれは上り詰めてみせるけど」
「A組、マジですごすぎんだよなぁ。あ、ちなみに、知っているか? 表では世界最強って言われているビッグ。あいつの強さ、武点数でいうと『5点』くらいなんだぜ。ははは! クソ! ザコすぎ! 世界最強(5点)! はははははは!」
「ビッグなんて、異世界の侵略者に対する牽制用の、単なる傀儡だもの」
「でもよぉ、いくらなんでも弱すぎねぇ? 卒業すら微妙な俺でさえ、10点超えてんだぜ? おまえにいたっては、25点だぞ。マジ、ビッグ、クソすぎ、ははは!」
「ビッグなんかと私を比べないでくれる? 存在の格が違うのだから」
「言うねぇ」
「ちなみに、そのビッグを弟子にしたという例の八闘神の点数は?」
「話を聞く限り、おまえとトントン、あるいはお前よりも下って所だな。どれだけ高く見積もっても『30点はない』って話だ」
「なあーんだ、その程度なの」
「そう。まさしく、その程度。決して神々は弱くねぇ。だが、それ以上に、人類は強くなりすぎた。御大のような、神をも超越してしまった究極超人が生まれ、お前やA1、S1様のような、桁違いの化け物が続々と生まれてしまった。結果、この世界は、調停者たる神を必要としない領域にまで達してしまった。つまりは、それだけのこった」
「まあ、確かに、御大の登場は神の想定にはなかったでしょうね」
「だよな。まさか、神である自分らよりも遙かに強い存在が、人間の中に……ん?」
「なに? 急に、どうしたの?」
「ぃや、妙な気配が――」




