2話 顕現した神々。
第2話 顕現した神々。
この世界最大にして最強の大国シバク・デ・ホンマ共和国。
アシテンア大陸の東南端、冬は湿潤し夏は乾燥する海洋性湿帯気候下の地域に国土を構える共和政国家。
そのシバクという大国では、地球の常識では考えられないのだが、なんと、選挙・投票などではなく、純粋な戦闘能力の順位だけで国家主席が決まる。
政策決定に影響を与えるような上級貴族――国政を司る各行政部門の長などは、当然、武力以外の、知性に属する多様な資質で決まるのだが、シンボルである頂点だけは、『特殊な理由』から、極めて純粋な『強さ』だけで決まる。
世界一有名な男『ビッグ』は、その圧倒的な力で国の代表の座をもぎとり、名実ともに、世界の支配者となった偉大なる存在。象徴とも言うべき最強の男。
そんな、武力だけで言えば、ぶっちぎりの圧倒的強者であるビッグが、
「……ありえん……」
現在、息も絶え絶えになりながら、地に伏していた。
ビッグは、如何にも歴戦の戦士といった様相の、全体的にガッシリとした、屈強極まりない大男だが、現状のザマからは、威厳や迫力などは微塵も感じない。
「な、なんだ、その強さは……何者だ、お前たち」
「おいおい、口の利き方に気をつけろよ」
突如、官邸に現れ、『世界最強の男』を右足一本で倒した男は、その『世界最強の男』の頭を踏みつけながら、
「俺は、究極最強神の弟子『ミシャンドラ・クロート』。てめぇみたいなカスとは、存在の桁が違う天上人。次、ナメた口をきいたら殺すぞ」
「……さ、最強神だと?!」
神という単語を聞いて、ビッグは、脳天を打ち抜かれたかのような激しい衝撃を受けた。脳髄に激震が走ったのは、ビッグだけではなく、その場に居合わせた、この世界の基盤を支えている重要官職に就く者全員。
「ま、まさか……」
誰もが口々に声を出す。
――まさか。――もしかして。――そんな、バカな。
そこで、ビッグが、絞り出すような声で、
「本当に……予言の……闘神なのか?」
「ん? 予言だぁ? なんだ、それは?」
「……か、神々の世界で、『真に最強なる神』を決める戦いが行われ、その頂点に立った究極の闘神が、この地を支配するため、八人の弟子を引き連れ降臨するという、遙か太古から語り継がれてきた、神降臨の予言……」
「ほう。なるほどな。となると、俺たちだけじゃなく、師匠もこの地に来ている事は確実だな。しかし、となると、どこにいらっしゃるのか……」
業火を縫い合わせたかのような、真紅の燕尾服に身を包んだ線の細い長身の超イケメン『ミシャンドラ・クロート』は、ゆっくりと振り返り、
「おまえらはどう思う?」
同じ最強神を師に持つ弟子達に声をかけた。
クロートの問いに、彼の斜め後ろに立っている非常に気が強そうな美少女が答える。
「先生のこったから、たぶん、この世界で一番強い化物でも狩りに行ってんだろ! つーか、それしかなくね?!」
ギラギラした闘気を無秩序に周囲へ放つ、褐色金髪ロングの美少女『デビナ・バーサキュリア』が、頭をボリボリかきながらそう言った。
竜胆色のツナギの上半身部分を脱いで腰に結んでいるガテンスタイルが特徴的で、胸にはサラシを巻いている。
そんな、ヤンキー感の強いデビナの発言に応じるように、
「うふふ、ありえそうですわねぇ。お師匠様は血気盛んな御方ですから」
ニコニコとした穏やかな雰囲気を崩さない、新雪を思わせるきめ細やかな白皙の肌をした、どこまでもお嬢様然とした美女『色雪』が、のんびりとした口調で答えた。
黄金のマーメードドレスに身を包む、気品と色気たっぷりのお姉さん。
そんな、色雪の背後で、
「モエモエは、にぃにぃが、今もどこかで、モエモエたちのことを見守ってくれているって信じているよ♪」
小柄にツインテールでミニスカの浴衣という、あざとさと萌え要素が過食気味に積みこまれている美幼女『モエタン・ロリエル』がキャピキャピとそう言った直後、
「究極にして最強であらせられる我が師の行動や思考を、不肖なる我程度が予測したところで、答えなど見つかるはずもない」
長い爪楊枝を咥えているヒゲ面のオッサン『スペクトラル・ボウ』が、カチカチの口調でそうつぶやいた。
『猛々しい昇り龍』があしらわれた『羽織』が似合いすぎている和服姿のコワモテ。江戸時代の剣豪、あるいはヤクザの若頭とでも評すべき、厳格だが、どこか粗野で、近づきがたいオーラを放つボウの言葉を聞いて、真逆の雰囲気を放つ少年が口を開いた。
「みんな、わかってまちぇんねぇ。お師匠たんは、お寿司職人を目指して奮闘してまちゅ。オイちゃん、新境地に踏み出したお師匠たんを、力いっぱい応援するつもりでちゅ」
赤いパーカーに黄色い短パンという、ラフという概念そのものを身にまとっているかのような、ただの中学生にしか見えない坊主頭の少年『酒神 終一郎』が、ヘラヘラしながら、ナメた口調で、そんなことを言ったのに対し、
「また、酒神が、わけわかんない事言ってっし。神々の頂点・最強の闘神であるししょーが、なんで寿司握んなきゃいけねぇんだっつぅのぉ。マジありえねぇし。あ、ちなみに、ウチはデビナの意見に一票だかんね。てか、それしかなくない?」
着崩したセーラー服に身を包むケバいギャル『ヒメ・ルギャ』が、アクビまじりにそう言った。盛りに盛った銀髪に、ハイヒールとルーズソックスのコンボという、闘う気が全く感じられない、ゴリゴリのギャルスタイル。ガチャガチャと、金のアクセを、至るところに配備し、ごってごてのギャルベルトと超ミニスカから、スラリとした美脚をのぞかせている。
ギャル特有の尖ったエロさだけを丁寧に積み込んだようなギャル系AV女優感の強いヒメをチラ見しながら、
(……やっぱ、ヒメの足はいいなぁ。この絶妙な露出がたまらん。うへへ)
全身黒一色の喪服スーツをキチっと着こなした、無表情で寡黙なミステリアス感が強い美青年『超苺・ブルー・カノープス』が、外面的にはクールにダンマリを決め込みつつ、しかし、心の中で下品なことだけを考えていた。
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