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23話 公務員だった邪神。


 23話 公務員だった邪神。


「血に飢えた悪魔……何が神か……」


 泣きそうな声で、そうつぶやいてから、グっと顔をあげて、


「か、勝てるのか?! 自信はあるのか? 邪神を倒せる自信は?! どうなんだ?!」


「吠えるな、うるさい。何度も言わせるな。神は、我々サバキの手によって沈められる。心配は無用だ。人類は既に神を超えている」


 A7は、余裕の表情で、


「シノビの報告から推測するに、神々の個々の力は、ビッグの倍が精々。正直、たいしたことはない。状況証拠から推察するに、やつらの親玉である邪神だけは確かに脅威だが、こちらには『御大』がいる。最後の最後に勝つのは、結局人類だ。その未来に揺るぎはない」


 そこで、A7の後ろで腕を組んで壁にもたれかかっているS1が、頭を振りながら、


「しかし……まったく、困ったものね。……『神様』という存在は『クソみたいな侵略者からこの世界を守ってくれる、偉大な剣にして無敵の盾』って話じゃなかったの?」


 神が登場する伝説・物語では、大概、『神様が、悪い奴らをみんな追っ払ってくれたので、この世界は平和になりました。めでたし、めでたし』の一文で締められている。


 神とは、世界の守り神であるはず。

 なのに――


「偉大なる人類の守り手を盛大に歓迎すべく、サバキは何百年も前から、いろいろと準備をしてきたってのに、全てが無駄になったわ。まさか、降臨したのが邪神だなんて」


 ――そこで、アイムが、不安感全開の顔で、


「闘神たちの話によると、この世界の主神を決める聖戦は、公明正大に行われたそうだ。全ての神々が見守る中、邪神は、堂々と正面から、他の神々を打ち滅ぼし、この世界の主神となる権利を得たらしい」


 その言葉に対し、A7は、溜息をはさんで、


「つまり、その聖戦で邪神が負けてさえいれば、こんな事にはならかったって事か。はぁ、まったく……他の神、もっとがんばれよ。何で邪神なんかに負けてんだよ、クソが。不運も、ここまできたら笑えねぇんだよ」


「不運というか、ここまでくると不条理だわ」


 S1が、天を仰ぎ、


「皮肉なものよね。神の名のもとに集まった組織が、世界で唯一、神を殺せる力を持った槍として、その力をふるうことになるなんて」


「A7、S1! 相手は神だが、躊躇などするな。闘神どもの頂点である究極闘皇神は、人類を破滅に導く悪神。人の命など屁とも思っていない邪の化身。排除しなければ、人の世に未来はない」


「私が、神ごときに躊躇するわけがないでしょう。世界を守る盾にも剣にもならない無価値なゴミに用はない。神は死ぬ。この手が殺す」


 おぞましい笑みを浮かべた彼女を見て、アイムの不安が若干和らいだ。

 S級の1位という、『エージェントの中では最強の称号』を有するこの女、性格は悪いが、実力は確か。


「さて、じゃあ、そろそろ帰るわ。A7、先に戻っていて」


「どこかに寄られるのですか?」


「お腹がすいたから、寿司でもつまんで帰るわ」



 ★



「マイさん、勘弁してくれませんか? ここんところ、毎日じゃないですか」


「私に気を使う必要などありません。どうぞ、ご自由に、望むままに御振舞いください」


「そういうわけにもいかないんですよ。大将から接待するように仰せつかっているんで」


「……ゴード様、一つお聞きしてもよろしいですか?」


「はい? なんすか?」


「なぜ、寿司職人の見習いなどを?」


「なんでって……まあ、理由は、いろいろありますけど……」


 金のため。

 宿のため。

 将来のため。


 寿司職人以外の道もなくはないが、しかし、特にやりたい事などない。


 ちなみに、現実の世界で公務員になったのは、

 『それが一番楽だ』と思ったから。

 それだけ。


 プロゲーマーや、

 ゲーム実況者としての道も、

 考えなかったわけではない。


 しかし、『ゲーマーの寿命は短い』ということは知っているし、

 『実況者として人気が出る確率の低さ』も知っていた。


 だから、もっとも安全で安定していて楽な択である『公務員』を選んだ。


 ――ちなみに、親に『議員の知り合い』がいて、

 公務員になりやすい環境だった、

 というのも、大きな理由の一つである。


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― 新着の感想 ―
[一言] コメディだな。 偉大な剣と無敵の盾を望まれたかつての主人公ゴート。 絶望を切り裂くだけの剣であろうとする厨二、廃神、セン
[一言] 最悪の向こう側を想定してもまだ足りない世界で、確たる証拠もないのに、敵を甘く想定するのはアカンw 弟子達が手を抜いている可能性を考えすらしないし、人類を守るために戦うという意気込みは気高いけ…
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