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22話 血に飢えた邪神。


 22話 血に飢えた邪神。


 クロートから手ほどきを受けた直後、

 くたくたになったアイムは、

 道場の片隅でバケツにゲロを吐きながら、


(本当に強い。あいつら全員……もし、やつらが常識的な神であれば……心から師事しても構わないと思うほどの美しい強さ……)


 『闘うのが強いだけの神』が降臨したのであれば、問題視などしなかっただろう。

 アイムも、この世界で、神の噂や伝説を耳にして育った。


 降臨した神が、神と崇めるに相応しい、『穢れ無き魂』を持つ清廉で高潔な絶対者であったならば、心からの敬意を捧げ、その足もとに平伏していただろう。


 だが、


(あの破綻した性格の闘神共が師と崇め、絶対の忠誠を誓っている闘神の中の闘神、究極闘皇神は、殺戮と絶望を司る魔の頂点。他のあらゆる神々からも、あまねく敵意と憎悪を向けられた、邪神の中の邪神)


 クソ闘神たちから聞いた話は、アイムを芯から震わせた。


 究極にして最凶の殺神。

 絶対なる悪の化身。

 混沌と殺戮を司る無情の邪神。


 ――それが、この世界に降臨した神々の頂点。


(殺戮と混沌を司る神を主神とする世界に、幸福や平穏などが訪れるはずがない。間違いなく、邪神は、この世界を、ありとあらゆる苦悩と悲痛に染まった地獄にしようとするだろう……そんな暴挙、許してたまるか)


 アイムは、確実に訪れるであろう絶望的な未来を想い、背筋を震わせる。


(はやく、なんとかしなければいけない。早急に対策を立てねばならない……だというのに、なにをモタモタしているのだ! サバキのばかどもめ!)


 いつもと違い、サバキの動きが妙に遅い。

 『神速の調停』を信条としている連中にしては、一手一手が、あまりにもノロい。


(やつらは今回、常時、後手後手に回っている。もちろん、今回の相手は、『最悪の悪魔』とはいえ、ようやく顕現した天上の神々だから、二の足を踏んでしまうのも分からないではない。しかし、躊躇に費やした時間の分だけ、問題の本質を理解できない手前らの無能をさらけ出してしまっているということに、なぜ気付かない)


 奥歯をかみしめながら、心の中で、サバキの連中に対して呪詛を吐き続ける。

 そんな彼の前に、


「敵陣地のど真ん中で、間者の身でありながら、あからさまな不満顔を浮かべるというのは、正直、問題ありと言わざるをえないぞ、アイム・ソーリ」


 ようやく、使いが現れる。


「A7! S1!」


 アイムは、つい大声を出してしまった己の口元をバっと抑えながら、即座に周囲を確認し、今度は声をひそめて、


「……やっときたか。遅いぞ」


「仕方がないだろう。試験の準備に追われていたのだから」


「試験? ……ああ、そういえば、もう、そんな時期か……って、アホか、お前ら! 新メンバーの勧誘なんぞやっとる場合か!! 今は、人類の危機なんだぞ!」


「わかっているさ。だからこそ、今年は特に力を入れているのだ。相手は神。限界まで戦力を底上げして挑んだ方がいい」


「ま、まあ、そう言われれば、確かにそうだが……」


「すでに神殺しの計画はまとまっている。新戦力を加えてから実行に移す。神は我々の手によって堕ちる。それは確実に訪れる未来」


「期待しているぞ……ところで、A7、なんだ、その痛々しい包帯は?」


「先日、侵略者と戦った。それだけだ」


「おまえに、それほどのケガを負わせるほどの侵略者だったのか。まったく、この世界は問題が山積みだな。異世界の侵略者に、凶悪な邪神に……」


「ふっ、もう一つ、ショックな事実を教えてやろうか?」


「?」


「俺どころかA1ですら手も足も出なかった侵略者を……どうやら、邪神が滅ぼしたらしい。それも、相手の心を砕き切って」


「じゃ、邪神とは……それほどまでの力を……」


「ちなみに、想像を絶する恐ろしい拷問のあとがうかがえた。とても正気とは思えない残虐性……邪神の名は伊達ではなさそうだぞ」


 その言葉に、アイムは、ゾクリと背中を震わせた。

 一瞬で血が凍えたような気がした。


「血に飢えた悪魔……何が神か……」


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