19話 絶望を数えながら死に狂え。
19話 絶望を数えながら死に狂え。
「心配するな。殺しはしない。もっとも、数時間後には、殺してくださいと懇願する事になるだろうが」
(うわぁ……また、絵に描いたような悪者に絡まれたなぁ)
軽く呆れながら、
(強盗かな? それとも変態? この街、ほんと、治安悪いなぁ。DQNが多すぎるんだよ。今朝の出前に行った時も、目つきが悪いとか言われて、肩パンされたし)
思わずため息がこぼれる。
(ま、でも、この程度のヤツが相手なら、どうとでもなるだろうから、ビビりゃしないけど。うっとうしい客を相手にする時と違って、下手に出る必要もないし)
「おい、聞いているのか?」
「……はんっ」
ゴードは、小馬鹿にしたような顔で、不敵に笑うと、
「ナメんなよ、色黒。こう見えても、俺は、格闘技をカジっていてな。『町のチンピラA』くらいなら余裕で倒せるんだよ。俺のナックルパンチが火を噴く前に、とっとと消えうせるんだな」
「くく……くくくくく! 無知とは酷いな」
「あ?」
「では、試してみるといい。貴様の格闘技とやらを、くく」
「いいの? 言っておくけど、現状の俺、とある理由で、かなりイライラしてっから、結構エゲつないことすると思うよ? 俺は博愛主義の主人公とかじゃないから、やる時は、マジでとことんやる。手加減も容赦もしない」
「いいから、さっさとかかってこい。死を教えてやる」
「おっ、そのセリフ、かっこいいね。似たようなセリフを、昔、ゲームで何度も言ったことあるよ。『煽るセリフ』を一生懸命考えていた時期があってさ……一番気に入っているのは、やっぱり、アレかな」
言いながら、ゴード・ザナルキア――最強の究極闘皇神は、
「我こそは、混沌と殺戮を司る最強神。絶望を数えながら、死に狂え」
ビシっとカッコイー(と思っている)ポーズを決めた。
それを見て、ゲイルは、
(……すべてがダサいのに……な、なんだ、この威圧感……)
奇妙な圧を感じていた。
ゆるやかなのに、ごうごうと熱い。
――最強神は、
「おいおい、ガードぐらいしろよ」
一瞬でゲイルの懐に潜り込み、
ゲイルのみぞおちに、音速のニーをブチこんだ。
「ぬぉお!」
硬質な肉体に突き刺さる神の膝。
ただの関節が、ロケット砲を超えた破壊力を生み出す。
「ぐはぁ! おぇぇっ!」
臓器すら吐き出しそうになるほどの苦悶。
異次元の火力に、一瞬、精神が崩壊しそうになった。
(な、なんだ、この異常な速度と信じられない破壊力は……ぁ、ありえん……)
混乱は、すぐに絶望へとシフトする。
「ごはっ……かはぁっ……」
吐血しながら、よろめいて、
「こんな、ばかな……この私が……十二次元界でぶっちぎり最強の……このゲイル様が、たったの一撃で……こんな……」
ドスンと膝から崩れおちたゲイルの頭を、右足でグシュっと踏みつけながら、
「言ったよな。ムカついているから、とことんやるって」
最強神は、黒い顔でニタァっと口角を上げ、
「とりあえず、両腕をもらうぞ」
「ちょ、ちょっと……待っ……」
「悪いことしようとすると、自分に返ってくるってことを教えてやるよ。逆恨みされて、寝込みを襲われたりしたら、たまったもんじゃないから、二度と俺にはかかわりたくないと思わせるまで、徹底的にやる。はい、まずは右腕」
「やめっ――」




