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豪邸と双子

イルミナに連れてこられた場所は見たことも無い豪邸だった。ハリルは門の前でその豪邸を見上げる。


「さぁ、何をしてらっしゃいますの?早く中にお入りなさいませ」


中に入るとさらに驚かされる。見るからに高そうな壺や、貴重な品が所狭しと置かれているのだ。ハリルの目に入るもの全て見たことの無いものばかりだ。貴族の娘という話は聞いていたが、まさかこれ程とは思っていなかった。


「お嬢様、お帰りなさいませ。今日は随分遅かっ…」


そう言いかけたところで執事らしき初老の男が慌てるようにイルミナに駆け寄る。


「ど、どうされました!?傷だらけではありませんか!」


「ちょっと魔法の練習をしていたら、暴発したのよ」


「大変でございます!すぐに治癒魔法を!」


「待って、私先に着替えて来るわ」


「分かりました、ではメイドに準備させましょう」


「わ、私一人で大丈夫だから!」


「ですが…」


「いいから!ついて・来ないで!」


そう言うと慌てるように奥へと消えていった。


「コホン、ところで君はお嬢様の御学友ですかな?」


「はい、ハリルと言います」


「おぉ、それはハリル殿ようこそおいでくださいました。見たところ…貴方も怪我をなされている様子ですが」


「あ、はいちょっと巻き込まれてしまいまして」


「それは、大変でしたな。ハリル殿も治癒を受けていかれるとよろしいでしょう。ささ、こちらへ」


「すぐにお嬢様も来られるでしょう。しばらくお待ちください」


数十分程待っただろうか、再びドアが開くとイルミナが私服姿で入ってきた。


「待たせたわね、すぐに始めましょう」


すると、イルミナの後ろに続くように2人の少女が入ってくると、僕の目の前に整列した。


「初めまして、ハリル様」


「私はアリュウ」


「私はクリュウ」


アリュウ「どうぞ宜しくお願いします」クリュウ


姿かたちそっくりな双子の少女が丁寧にお辞儀をしながらそう自己紹介をする。


「ふふ、驚いているわね。そっくりでしょ、私も最初は見分けるのに苦労したわ」


「双子を見るの初めてだから少し驚いたよ」


「簡単に見分ける方法があるわ、右目にホクロがあるのがアリュウ、左目にホクロがあるのがクリュウよ」


「お嬢様、私達のことは後にして、まずは手当の方を致しましょう」


「そうね、火傷がヒリヒリしてたまらないし」


「さあ、ハリル様もどうぞこちらへ」


イルミナとハリルは椅子に腰掛けると2人はそれぞれの背後に立ち、魔法を使い始める。


すると、焼けただれた皮膚がみるみる元に戻っていく。傷口も塞がり、痛みも消えていった。


「凄いよ!治癒魔法初めて見たけど、こんなに凄いものだなんて!」


「そうでしょ?治癒魔法を扱えるものはこの街ではこの2人とお父様くらいなのよ!構築が難しいうえに、半端な力量ではかえって身体に悪影響がでるから扱いが難しいの」


「ありがとうアリュウさん」


「私はクリュウですハリル様、それと私の事はクリュウとお呼びください」


「あ、ごめん。ありがとうクリュウ」


「それにしても、本当にありがとうございますわハリル。貴方には感謝してもしきれませんわ」


「僕は当然のことをしただけだよ、それに姉さんがやってしまった事だし、むしろ謝るのはこっちの方だ」


「いいえ、それでも命を助けていただいて、貴方には何かお礼を差し上げなければレイナース家の恥ですわ」


「そうだ、この子のうち1人を差し上げるなんていかがでしょうか!?」


「えっと…この子って?」


「アリュウとクリュウですわ」


「えええぇ!?ちょ、ちょっと待ってこの子達は君の大切な家臣じゃないの?」


「大切な人だからこそ貴方に預けたいのですわ、貴方ならこの子達を幸せにしてくれると確信出来ますもの」


「で、でもこの子達も物じゃないんだし、自分の意思もあるでしょ?」


「お嬢様は私達の命そのもの、お嬢様の命を助けていただいたという事は、ハリル様は私達の命を救ったということです」


「えっと…」


「さぁ、決めなさい!」


「ハリル様、私達からもお願いします」


「そう言われても…」


「もう、はっきりしなさいよね。じゃあ私が決めるわ!そうね…じゃあクリュウ、ハリルに仕えることを命じるわ」


「かしこまりました、お嬢様」


「よろしくお願いします、ハリル様」


どうしてこうなった。


外に出るともう日が沈んで辺りは暗くなり始めていた。


「灯りを灯しましょう」


そう言うと両手から光の玉を浮かび上がらせる。


「その、クリュウ」


「はい、ハリル様」


「君は嫌じゃないのかい?イルミナとも離れることになるし、アリュウとも離れることになるんだよ?」


するとクリュウは首を横に振る。


「ハリル様に仕えることも、お嬢様に仕えるのもどちらも同じくらい私にとって幸福でございます。ですから、もうそのような心配はなさらないで下さい」


確かに、彼女の笑顔を見ているととても嫌々仕えさせられたのでは無い事が分かる。でも、父さんと母さんになんて言おう…。


「私とアリュウは、生まれた時から奴隷だったのです。それをお嬢様に拾っていただきました。小さい頃から私とアリュウは、お嬢様のお世話をして参りました。恐れながら、お嬢様は私達のことを家族として扱って頂きました。その家族を貴方様に託すのです。その意味をご理解下さい」


魔族領では奴隷を買うことは珍しくない、最も買えるのは貴族や商人と言った富裕層だけだが。


「分かった、取り敢えず家に帰ろう。父さんと母さんには僕から話すよ」


ようやく認めて貰えたのが嬉しかったのか、クリュウは満面の笑みで微笑んだ。

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