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アーティファクト

それから再びベルトランへと向かうことにした、当然ギルバートと呼ばれる少年も一緒だ。


「魔物だー!」


その声で目が覚めた。慌てて馬車から顔を出てみると、犬のような魔物に囲まれている。


「ブラッドウルフね、あまり強い相手じゃないけど数が多いわ」


イルミナとアリスは直ぐに臨戦態勢をとると、攻撃魔法で魔物を撃退していく。


「くっ、なんて数なの!?倒しても倒しても次から次へと湧いてきてない!?」


「そりゃそうだよ、魔物の発生源を絶たないと」


馬車の中からひょこっと顔を出しギルバートがそう言った。


「あなたねぇ、少しは手伝いなさいよ!」


「何で?僕は強い、強い力は強い者へと向けられるべきだ。弱いものに向けてどうする?」


「あなたねぇ!」


「魔物は魔獣と違って生物じゃない、魔核によって生まれたものなんだ。だから魔族の領土でしか生まれない。魔力の濃い場所には魔物が発生するような原因がある」


魔力の濃い場所…アリスは目を凝らすと確かに明らかに魔力が濃い場所がある。アリスはそこへ向かって魔弾を撃ち込んだ。すると何かがバキバキと砕けるような音がする。


「これでこれ以上増えないはず、片付けるわよ」


「はぁ!」


しばらくすると、敵の数も徐々に減っていき、アリスとイルミナのお陰でなんとか退治することができた。


「助かりました、流石レイナース家のご令嬢ですな」


「ふふん、当然よ!」


「変ね、魔物の死体が何処にもないわ」


アリスは辺りを見回してみるが、大量に倒したはずのブラッドウルフの死体は何処にもなかった。


「当然さ、魔物は魔核の塊、死ねばその形状を維持出来なくなり霧散する」


「不思議な生き物ね、始めてみたわ」


「初めて?別に魔族領では珍しいものでもないと思うけど」


「あ、アリスはずっと引きこもってたから!あまり外に出なかったし、ねアリス」


「え?あ、うん」


「ふーん」 


「魔物についてもう少し教えて」


「興味あるの?まぁいいけど、魔物は魔核が集まってなんらかの影響を受けて意思をもったものなんだ」


「ちょっと待って、魔核が意志を持つですって?そんな事はありえるのかしら?」


「ただでさえ魔核は火や水、風や土といったあらゆる物質に変化させるという性質がある。それが肉体を生成して、意思を持つようになったって不思議じゃないだろ?」


「不思議よ!摩訶不思議よ!肉体を生成するならまだしも、それが意志を持つだなんてありえないわ」


アリスは魔剣の事を思い出していた。


「もしかして、魔剣もそうなの?」


「ピンポーンあれも強力な魔力で生み出されたものだから、性質は魔物に近い」


確かに私も魔剣の声を聞いた。あれは魔剣が意志を持っていたからなのだろうか。


「まぁ意思といっても、さっきのブラッドウルフのような下級の魔物はただ単に目についた者を襲うだけの物だけどね、そこにそれぞれの個体の意思はないと思うよ」


「じゃあもっと上の魔物には意思があるって言うの?」


「そりゃあるさ、その最上位がご存知ドラゴン等の龍種なわけ」


ギルバートは馬車から飛び降りると、アリスが魔弾を撃ち込んだ場所にトコトコ歩き出した。


「今回の発生源はこれみたいだね」


「これは、魔力石?魔石の原料ね」


「これは純度も低いし、魔石になるだけの魔核は秘められてないけど、下級の魔物を発生させるには十分だったということだね、他にも仮説があって全く別の世界から来ただとか…」


「はいはい、もういいわよ。さっさと先に進みましょう」


イルミナは、ギルバートの声を遮るとせっせと馬車に乗り込んだ。


「目的地まではしばらくかかりまさぁ、それまでゆっくりしてください。また、魔物が出たときはお願いします」


「ねぇイルミナ、魔物は少ないんじゃなかったの?」


「そのはずよ、前にここを通ったときは魔物なんかに出くわさなかったもの」


「ここだけじゃないよ、最近魔族領各地で魔力石が出現している。父さんもその対応で忙しいって言ってたし」


「何よそれ、どういう事?」


「魔族領で魔核の濃度が増加してる?」


「魔物が増える理由は3つある。一つは原因は分からないけど魔核の濃度が増加して、魔力石が発生しやすくなっている。二つ目はモンスターゲートの出現かな」


「モンスターゲート?」


「何処からともなく、異界に通じる穴が生じることがあるんだ。その異界から謎の生物が現れる現象がたまにあるのさ」


「もう一つは?」


「三つ目は、マザーの出現」


「マザーって、まさか!?」


「そう、数百年前グリーンマザーと呼ばれる魔物王(ビーストキング)と呼ばれる個体が現れた」


「私もお父様から聞いたことがあるわ、突然変異した一匹の魔物が瞬く間に繁殖して甚大な被害を及ぼしたとか、まさか本当に存在していたなんて」


「繁殖とは違うかな、奴らは繁殖機能は持たない、強いて云うなら分裂かな、しかもその分裂に際限はないここには無尽蔵の魔核が存在しているからね」


「そんな怪物いったいどうやって倒したの?」


「七つのアーティファクトね」


「うん、前魔王が勇者に対抗する為に作らせたという七つのアーティファクト、支配の錫杖、王の冠、呪の首飾り、力の指輪、知恵の耳飾り、封魂の腕輪、千里眼の瞳、その力を使って魔物王を打倒したとされている」


「最も、その七つのアーティファクトは前魔王が死んだときにこの魔族領全土に散らばったと言う話だけど」


「そのうちの支配の錫杖と王の冠、呪の首飾りの三つは今の魔王が所持している、それと今あるそれぞれの派閥が一つづつ所持してるって話」


「えっと、親魔派と打魔派と親人派だっけ?あれ、おかしくない?アーティファクトは七つよね?」


「そう、あと一つはまだ見つかってない。アーティファクトはいわば権力の象徴のようなもの、それを持っているということは、魔王になれる素質があるということでもある」


「それなら血眼になって皆探すわよね」


「だけど今だ見つけられてない、噂ではまだ攻略できていない古代迷宮の最深部にあるんじゃないかって噂、古代遺跡は最深部に近づくほど魔核の量が多くなる。つまり奥に進めば進むほど強い魔物が現れる」


「そんなところに本当にあるとしたら手に入れるのは不可能ね」


「今向かってる親人派にもそのアーティファクトがあるって事?」


「そうなるね、ある程度権力がないと誰もついてきたりしないよ」


アーティファクト、そんなものがあったなんて知らなかった。魔族領に来てから知らないことばかりだ、いや、人だった頃も私は何も知らない村娘だった。何故襲われたのかも何も知らないが故にただ恨みだけが残ってしまった。もっと色々なことを知る必要がある。

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