本当に目指したものは
ドグァッ!!!!!
紅と蒼の炎がお互いをぶつけ合ったと同時に物凄い衝撃波が起こった。
「なめるなよぉ!!!」
ググググ
蒼い炎がさらに勢いを増し、イルミナの身体が徐々に後退していく。
そんな、折角力勝負に持ってこれたのに、このままじゃ負ける!?魔力も残り少ない、嫌、死にたくない!お母様、アリュウ、クリュウ、アリス、ハリル、皆!!
その時ふいに背中を押された気がした、もちろんその場にはイルミナとアルフレッドしか居なかったが、その瞬間、身体が少し楽になった気がした。
まだ…まだ終わらない!他の事で負けたっていい、でも、この炎の魔法だけは!お母様からもらったこの炎だけは!
「…たなんかに…」
「あんたなんかに!ま・け・ら・れ・な・い・の・よぉぉぉぉぉぉお!!!!」
その時、イルミナの右目にも光が灯った。イルミナの両目は真紅に染まり、それと同時に紅い炎が蒼い炎を押し返した。
「嘘!?私が押されてる!?」
「はぁあぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
「こんのぉぉぉおぉお!!!」
均衡したふたつの炎だったが、次の瞬間、片方の炎が砕け散った。
パキッ
残ったのは紅い炎だった、アルフレッドは迫り来る炎を躱すことも防ぐことも出来ない、しかしその迫り来る死の炎を見てふと思った。
「きれい」
昔、そう私が初めて魔法を使えるようになった時…。
子供の頃のアルフレッド「わぁ綺麗!私もせんせーみたいに出来るかな!」
「もちろん、貴方には才能があります。きっと綺麗な火花を咲かせますよ」
そう、そうだったわね。私はこんな炎に憧れて魔術師になったんだったわ、それなのに…いつから目的が変わっちゃったんだろう…。
ドゥッ!
アルフレッドの身体は炎に呑み込まれ瞬く間に燃え上がった。
「はぁ…はぁ、はぁ、勝った…の?」
イルミナは地面に座り込む。かなりの魔力を使ってしまった、しかし、まだ少し余裕がある。以前より体内の魔力が増えているのかもしれない。
「こうしちゃいられないわ」
イルミナは、ゆっくりと立ち上がると止めておいた馬に跨り、アルトの後を追った。
アルトは走り続けていた、ただ1人の魔族を助けるために。人を敵に回してでも助けたいとそう願った、あんなに憎かった魔族を今は助けようとしている。彼女が実は自分の姉だから?それもあるかもしれない、だけどそれ以上に彼女を…アリスを死なせたくない、そう思ったのだ。今まで散々殺してきて虫のいい話だとは分かっている。だけど…。
ドグァッ!!
遠くの方で爆炎が上がった。あれは、アルフレッドの炎…彼女はやられてしまったのか?すまない…僕を逃がすために1人犠牲になってしまった。
はぁ、はぁ、はぁ。
どの位走っただろうか、山を超え森を抜けようやく関所までたどり着いた。空は白んでいて夜も明けようとしている。関所には当然と言うべきか、魔族の見張りがいつも以上に配置されていた。それも当然か、ついこの間僕達が陥落させたのだから。しかし、他に道もない、どうする…。流石に1人では突破はできない、ましてやアリスを抱えたままなら尚更である。
「乗って!」
その声に振り返ると先程僕を逃がすために残った魔族の姿があった。
「無事だったんだね」
「当たり前よ!私こう見えて強いんだから…でも流石に死ぬ一方手前だったわ」
「それでも凄いよ、彼女は性格は悪かったけど相当優秀な魔術師だったし」
「そんな事より、早く乗って時間が無いわ。まだ暗いうちに関所を抜けないと、私のフードを被って」
言われるがままフードを被る。少し小さいが、顔や体は隠せる位はある、それにまだ周りが暗いから顔もよく見ないと分からないだろう。
「止まれ、お前たち何者だ」
「私は魔族よ!ここを通しなさい」
「こ、これはレイナースお嬢様、ご要件はお済みになったのでしょうか?」
「お父様からの要件は済んだわ、通らせてもらうわよ」
「はい、では後ろの御二方の身元も確認させて頂きます」
「2人も私の仲間よ」
「ですが、行く時はお嬢様おひとりではありませんでしたか?それにこれは規則ですので」
っく、やばいわ顔を見られたら流石にバレてしまう。
見張りはアルトのフードをゆっくりと取った。
「…はい、問題ありません、お通りください」
「っえ?」
イルミナは振り返ると、顔は伏せたままだったがアルトの頭に角が生えている。それが誰の仕業かすぐに分かった。
アリスの投影魔法で一時的に魔力で角を形成させたのね、アリスは橋を渡り終わると再び苦しそうな顔をしながら目を閉じた。
「姉さ…アリスももう体力があまりない、早く休ませないと」
「分かってるわ」
イルミナ達は屋敷に着くと馬を繋ぎ、裏門へと向かった。
「こっちよ」
部屋に入るとクリュウがハリルの治癒をやっている最中だった。
「っ!?お嬢様、そいつは!!?」
直ぐに戦闘態勢に入る。
「待ちなさい、彼はもう私達と戦う意思はないわ。彼がいなかったらアリスも助けられなかったし」
「ですがっ!元々そいつが連れ去ったのではありませんか!それに村の人や…ハリル様まで…!」
「落ち着きなさい、確かにその通りよ。でもあの時アリスを連れていかなかったら、あの場で殺されていたわ、それに村を焼いたのはあの魔術師よ、彼じゃない」
「…お姉様をこちらに、治癒致します」
ベットに寝かせたアリスに近寄ろうとしたクリュウだったが、足元がふらつき床に倒れてしまった。
「クリュウ!治癒の使いすぎよ、貴方もう魔力が殆ど残っていないじゃない。アリュウは?」
「アリュウお姉様は、魔力が底を尽き今は、休まれています」
交代でハリルに治癒を掛けていたとはいえ、毎日ずっと治癒魔法を使い続けていれば体が壊れるのは当たり前だ。
「僕が治癒魔法を使うよ、僕も少しくらいならできる」
「…今頃になって、後悔でもしたのですか?自ら手を下しておいて」
「クリュウ!彼もハリルを殺したかったわけじゃないのよ?」
「構わない、僕はアリスを殺そうとした。その結果として彼を切り裂いてしまった。彼がいなければ僕はアリスを殺していたよ」
「…でも…」
「…う」
アリスが目を覚ます。
「お姉様!」
「アリス!」
「2人とも…久しぶり……ハリルは?」
「…」
その質問に2人は答えられなかった。死んではいない、でも生きてもいない。ハリルは植物状態でただ治癒魔法で肉体の維持だけをしている状態だからだ。
ふと、アルトがハリルに近づく。
「っ!近寄るな!」
しかし、クリュウがその間に入ってアルトを近づけさせまいと立ちはだかった。
「クリュウ…とか言ったね、ハリルには本当に申し訳ない事をしたと思ってる」
「そんな…そんな言葉を吐いてももう元には…戻らないのに…」
「…」
「僕に任せて欲しい、彼はまだ助かる」
「嘘をつけ!」
「ク…リュウ」
「お姉様?」
「彼にやらせてあげて」
「お姉様…ですがっ…」
アリスはアルトがやろうとしていることを何となく察していた。アリスには見えていた、アルトの身体に流れる魔力を。その殆どが聖剣による肉体強化の魔力で、それで身体を維持していると言っても過言では無いほどアルトの身体は聖剣の魔力に依存していたのだ。
「聖剣を…使うのね?」
「…やっぱり姉さんには隠し事はできないな、ははは」
「姉さん…?ちょっと待って!もしかして、彼がアリスの人間だった頃の弟なの!?」




