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行方

それからまる1日馬車に揺られてようやく目的地に着くのができた。


「見えてきたね、あれがミッドガルっていう街みたい、それにしても大きな街だなぁ」


確かに私達のいた街と比べると、その規模は何倍もありそうだ。


「あ、忘れないようにコルピの実を食べなきゃ」


5人はコルピの実を頬張ると、街の中へと入っていった。


いらっしゃいませー


安いよ安いよー!


路上には色々な店が並んでいてとても賑やかな様子。

そんな中、一際大きな人集りができている。


「なんだろう、あれ」


「なんだ、小僧達知らないのか。あの方は英雄様だよ」


「英雄様?」


「そうだ、魔族共を蹴散らしてあの魔王すら討伐出来るんじゃないかって言われている方だ。なんでもまた魔族の村を1つ焼き払ったらしい」


「…そう…ですか」


魔族と人間は戦争しているとはいえ、そういう話を聞かされるのは気分がいいものではない。人間側が魔族に殺されるように、人間もまた魔族を殺しているのだ。


アリスはその人集りの中央に目をやった。そこには3人の人影が見える。1人はフード姿に大きな帽子の杖を持った女、もう1人は筋肉質な体格のいい男、それともう1人は全身鎧纏った人間だ。


「あれこそ我らの希望、Sランク魔法使いのアルフレッド様と同じくSランク武術家のガク様、それと最近注目されてる名前は確か…ナイトだったかな?」


「ナイト?それが名前?」


「実は本名が分からないらしいんだ、それどころか全身鎧を纏っているだろ?だから誰も顔を見たことも無いらしいぜ。だが腕は確かで魔族を前にした時の様子は鬼神のようだとか、なんでも次の勇者候補らしいぜ」


「鬼神…か」


「姉さん、それより目的の教会の方に行ってみようよ。話では神父って人に連れていかれたんだろ?」


「なんだ坊主たち教会へ行くのか?」


「知ってるんですか?」


「知ってるも何も、この街は神父サルガンド様のおかげで護られた街だからな、あそこにいる英雄達もサルガンド様が選定されたとか」


「神父が英雄を?」


「ほら、あそこの丘に見える大きな建造物があるだろ、あそこに行ってみな」


5人は男が言っていた丘の上の建物へと向かった。近くで見るとその建物の大きさがよく分かった。


「凄いねこんな大きな建物どうやって建てたんだろう」


「おや、貴方たちはどちら様ですかな?」


ドアの前にいる初老の男がこちらに話しかけてきた。


「えっと、僕達人探しをしていまして。サルガンド神父って人に会いたいのですが」


「そうですか、それでは中にお入りください。ご案内しましょう」


教会の中はとても広く、キラキラと光る窓が5人を照らしている。


「なんだか、目がチカチカするわ」


「確かに、明る過ぎるくらい」


「ここで、しばらくお待ちください」


そう言うと男は奥の方へと歩いていった。


「いよいよだね」


アリスの心臓はバクバクと音をたてている。今までこんなに緊張する事はなかった、でももし本当に弟が生きているのだとしたら、そう思うと緊張せずにはいられなかった。


「お待たせしました。私がここの神父サルガンドと申します」


身なりのいい男が奥の方から現れた。


「聞きたいことがあります」


「ふむ、何でも人探しをしているだとか。私の知っていることでしたらお答えしましょう」


「アルトという少年…いえ、もう青年になっているかも知れません。その名前の人物に心当たりありませんか?」


「…」


神父は一瞬驚いたような顔をし、言葉に詰まったが、またすぐに話し始めた。


「えぇ知っていますよ」


「っ本当ですか!?」


「あれはもう7年以上も前の事でしょうか、山向こうの街で奴隷として売られていたのを見かけて可哀想に思い引き取ったのです」


「彼は今どこに!?」


「落ち着いてください、その前にどうして彼の事を探しておられるのですか?」


「それは私のおとう…知り合いだからです。街が魔族に襲われたと聞いて心配だったので…」


「そうですか、それは痛ましいことです」


「それで、アルトは無事なのでしょうか?」


「…」


少しの沈黙、しかしその沈黙でアリスは察してしまった。


「残念ですが…」


神父のその言葉にハリルもイルミナも血の気が引いてしまった。しかし、その真実に1番ショックを受けたのは…2人はアリスの顔をゆっくりと確かめる。


アリスの目から涙が頬を伝い床に落ちていく。


「いつも自分のお姉さんの事を話していました。実の姉を置いて逃げてしまって、自分だけ生き残って相当悔やんでいたみたいでしたが。今から3年くらい前でしょうか、突然病を発症しましてね、それまでは元気だったのですがその後直ぐに亡くなってしまいました」


アルトは悪くない、悔やむ必要もない。悪いのは…。


「あの、大丈夫でしょうか?」


「…はい、ありがとうございました…」


アリスはそう言うとヨタヨタと教会のから出ていった。


「あ、待ってよ姉さん!」


その後を追うようにハリル達も外に出る。丁度その時、広場にいた英雄達とすれ違ったがアリスの目には何も映っていない様子だった。


「…」


「どうしたのよナイト?」


ナイトと呼ばれる鎧の男は教会の前ですれ違った子供に目を取られたのか振り返った。


「あのガキ達に見覚えでもあったか?」


「いや、ない」


「そう、貴方が何かに反応するなんて珍しいわね。あんたったら何やっても無反応だし、中身は機械かなんかじゃないのかと思ったわ」


「…」


「おい、早く行こうぜ神父が待ってる」


「おお、よく帰ったな3人とも」


「はい、ご命令通り魔族共の街を1つ滅ぼしてきました」


「うむ、人間が魔族に打ち勝つ日も近いだろう。それで、次の任務だが…」


「はい、分かりましたそのように」


「特にナイトお前には期待している。魔族への恨みをはらすがいい」


「…はい、神父様」

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