後始末
「血も止まったし、これでよしっと」
「姉さんのいた街で落ち合うことになってるんだ。あまり長居しない方がいいし直ぐに出よう」
「分かった」
3人はイルミナと落ち合うために来た道を再び戻る事にした。
「くそっくそっクソッタレ!何処で間違えた!?どうしてこうなった!」
「ヤンガタ様、大丈夫ですか?」
「大丈夫な訳があるか!」
「す、すみません!」
「あいつ!あのガキ!顔は覚えたぞ絶対に復讐してやる!」
「っ、待て、止まれ」
「どうされました?」
「誰だ、そこに居るのは」
暗い森の中、茂みの中からフード姿の人影が現れた。
「やぁやぁ、こんばんは。今夜は月が綺麗だね」
「野郎ふざけてんのか?ヤンガタ様やっちまいますか?」
俺の感がいっている、さっきのヤツらといい今日は運が悪い。こいつもきっと奴らの仲間かなんかに違いない。
「お前、何者だ。何の用だ」
「へぇ、直ぐに殴りかかってくると思ったけど、少しは脳みそのある奴がいるようだね」
「なんだとてめぇ!」
「やめろ!」
「で、ですがこんな奴になめられたら腹が立ちますよ」
明らかに雰囲気が違う、人…ではないな、まさかまた魔族か?こちらは20人以上いる、だがあの余裕ぶりを見ると単なる命知らずの阿呆か、もしくは俺たちを相手にしてもまるで苦戦すらしないような強者か…おそらく後者だろう、ここは関わらない方がいい。
「何の用だと言っている」
「用、用か、うん僕達は君達に用があって来たんだった。なに、簡単な事だよここで全員死んでくれさえすればいいんだから」
突然現れた謎の人物の言葉に一瞬静まり返る。
「っぷ」
「あっはははは!なんだって?俺達全員を殺るだって?」
「寝言は寝て言うんだな!あっははは」
周りの野党が一斉に笑い出す中、ヤンガタだけはそのフードの人物をじっと見たまま動かない。
違う、はったりや戯言何かじゃない!フードの中からこちらを睨みつける目、さっきの奴と同じ目だ!まずいまずいマズイ!このままじゃ死んじまう、いっそコイツらを囮にして逃げるか!?そうだ、俺さえ生き残ればまたやり直せる!
「おい、坊主俺が世の中の怖さを教えて…ふごっ」
野党の1人がフードの人物に近づいた時、信じられない事が起きた。
「離せ!はななななな」
バシャ
「え?」
再び静寂、一瞬何が起きたか分からない様子で唖然としている。奴に掴まれたと思ったらまるで溶けるかのように何かの液体になって消えてしまったのだ。
「ねぇ君達、人間って何から作られてるか知ってる?」
「な、なんの話しだ?」
「これの話だよ」
そう言うと溶けてしまった仲間の跡を指さした。
「60%は水なんだけど、それを除くと炭素、酸素、水素、窒素、カルシウム、リン、カリウムなんかから構成されてるんだ」
「だから何の話をしてるんだよぉ!?」
「…君達みたいな汚物でも、こうやって分解しちゃえば皆同じって事さ」
「ひ、ひぃぃぃぃ」
1人が悲鳴を上げるなり、全員一斉に逃げ出そうとする。しかし。
ドドドドド!
突然辺りに土の壁が現れ行く手を遮った。
「な、何だこれは!」
「あれれ、誰が逃げていいって言ったかな?」
「や、止めてくれ!許してくれ!命だけは、助けてくれ!」
「そんな捨て台詞もう聞き飽きたよ、少しは弱者の気持ちってものが分かったかな?まぁ分かったところで結果は変わらないけど」
バシャ
1人、また1人と消されていく。悲鳴だけが夜の森に木霊した。そしてそれは次第に聞こえなくなった。
はぁっ、はぁ、はぁっ!
危ねぇ、何だあいつは!あんな化け物聞いてねぇぞ!さっきの魔族といい、どうかしてる!部下共を囮にしてなんとか逃げ出せたが、くそっ俺はこんな所で死ぬ訳にはいかないんだ!
「何処に行くの?」
ギクリとした、先程聞いた覚えのある声が耳元で聞こえたからだ。
シャッ
咄嗟にナイフを振るうが空を切った。
はぁっはぁっ
呼吸が辛い、出血も止まらない目眩もする。
「随分辛そうだね」
いる、さっきのフードの奴が目の前にいる。
「なんだよ…お前…何なんだよお前は!」
「別に名乗る程のものではないよ、通りすがりの…そうだな、お掃除屋さん?かな」
「ふざけてんのか!」
「ふざけてなんか無いよ、君達みたいなゴミを処分するのが僕の目的地だからね」
「お前になんの権利があるってんだよ!」
「権利?権利ならあるよ、実は僕も昔奴隷でね、そりゃ酷い目に合わされたよ。世の中には苦しむ人がいっぱいいる、だから僕はその元を断ちにきたのさ、お前みたいな奴らが少しでも減れば世の中も少しは良くなるってもんだろう?」
やつの話なんかどうでもいい、今はいかに奴から逃げるかだけを考えるんだ。
「あぁ、逃げようとしても無駄だよ」
「そんなもんはやってみなきゃ分かんないだろ!」
シュッ
ヤンガタが踏み出そうとした瞬間、急に地面に倒れ込んだ。
あれ?なんだ?足に力が入らねぇ。振り返ってみる。そこにあったのは先程まで付いていた2本の足だった。
「ああ、足、俺の、俺の足が」
「さて、これで最後っと」
「や、やめ…」
バシャ
「ふぅ」
フードの人物はまるでひと仕事終えたかのように汗を拭う素振りを見せると空を見上げた。
「今夜は本当に月が綺麗だ」




