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人間

「あのオジサン、気がついたら居なくなってたわね」


「しょうがないよ、無理やり案内させたんだし。それよりイルミナ、ここからは人間の領土だよ?どうするの?」


「さて、どうしたものかしらね」


「えぇ!?私に任せなさいみたいな事言ってなかった?」


「あぁ、そうだったわ。この姿で見つかると不味いんだったわね」


イルミナはまたもやアリュウの背負っている荷物をあさり始めた。そして、一冊の本を取り出すとなにやら調べ始める。


「うーんと…あったこれよ」


「コルピの実?えっと、人間には無害だが魔族が食べると一時的な角と尻尾の収縮…まさかこれで人間に成りすますって事?」


「ピンポーン」


「それで、その実はどこにあるんだろう」


「…」


「…」


「生息場所までは書いてないわ、まぁ歩いていればそのうち見つかるでしょ。それまでフードを深く被っていればバレないバレない」


どうしよう、とてつもなく不安だ。姉さんは普段通り慌てる様子もないし。僕が心配性なだけなのかな…。


「それより、地図を見せなさい」


「あ、うん…」


「えっと、目的の場所からだいぶ北の方にズレちゃったから、ここから川沿いに南に行けばいいのね」


人間の領土には見たことも無い物が沢山あった。草や木も魔族側とは見た目も匂いも色も違っていたし、住んでいる動物も全く違う形状をしている。川を隔ててすぐそこの世界はまるで違うものだった。


「凄いよ!姉さん見て見て!これなんか綺麗だよ!」


先程までの不安は何処へやら、ハリルには目に入るもの全てが興味を引かれるものばかりだった。


「ちょっとハリル、ピクニックに来たわけじゃないのよ?」


「ハリル様、楽しそうでございますね」


「クリュウ見てよ、これなんか美味しそうなキノコ」


「…これは、毒キノコでございますね。食べてはいけません」


「分かるの?」


「はい、毒の成分を魔法で感知できますので」


「…!」


魔力感知に反応あり、ここから200メートル先。この反応は以前に感じたことがある。人間だ、数は…4人、そのうち2つは反応が弱い…子供か?


アリスが突然立ち止まり、森の中をじっと見つめているのに2人が気づいた時、静かな森に悲鳴が鳴り響いた。


「キャーっ!」


「叫び声!?」


次の瞬間にはアリスは森の中へと走り出していた。4人とも直ぐにその後を追う。


ザザザザ


道無き道を迷うこと無く一直線に向かっていくアリスになんとか追いついた。


「っ…あれは」


野党1 年齢?

性別 男

種族 人間

Lv7

得意系統 戦士 盗賊

得意属性 土

魔力量 5


野党2 年齢?

性別 男

種族 人間

Lv5

得意系統 盗賊

得意属性 火

魔力量 7


見ると、2人の男が子供を捕まえて何かしている。


「おいガキ、この辺りの孤児院のガキだよな?」


「離せ!この!」


「おいおい、あんまり暴れるなよ。俺は子供好きだからお前たちを傷付けたくないんだ」


「流石兄貴、優しいなぁへっへっへ」


ガブッ


「痛てぇ!何しやがる!」


バキッ


少年は男に殴られるとそのまま地面に叩きつけられた。


「お兄ちゃん!」


「このガキもう許さねぇ」


「やめて!」


「うるせぇ!」


男は今度は足にしがみついていた少女に手をあげようとした。


「っ…もう我慢出来ないわ」


「イルミナ!?」


「そこまでよ、悪党」


「あぁ?何だてめぇ」


「兄貴に指図するなんて命知らずな奴だヒヒヒ」


「大の大人が、子供に手を挙げて恥ずかしくないのかしら」


野党らしき男はイルミナの方へとズカズカ歩み寄ってくる。


「俺に指図していいのはな、ヤンガタ様だけなんだよぉ!」


男は迷いなく拳を振り下ろすが、それを難なく躱す。


「ふん」


魔法陣が展開する。


「何!?魔法だと!?」


イルミナから放たれた火球が野党の尻に引火した。


「アチチチ!」


「あ、兄貴!」


ビュッ


イルミナは一瞬で男の懐に潜り込むと、みぞおちに1発、たちまち地面に崩れ落ちた。それを見たもう1人の男は逃げようとするも、直ぐに回り込まれ殴打。その場に気絶した。


「こんなもんかしら」


アリュウとクリュウは子供の手当をしている。


「その目…お前達魔族だな!?」


「…」


「離せ!魔族め!」


「ちょっと貴方たち、アリュウに治癒されてるのにその言い草はないんじゃないかしら」


「うるさい!この化け物め!」


化け物…ですって!?


「何よ!」


「お嬢様、良いのです。私達は気にしておりませんので」


「でも…」


「お前達のせいで、父さんも母さんも死んだんだ!お前達は人殺しだ!」


「…っ!」


そう言い残すと、少年は森の中へと走り出して行った。


「あ、お兄ちゃん!」


「早く、お兄さんの所へ」


「あの、その…ありがとうございました」


少女は途中で振り返るともう一度お辞儀をすると森の中へと消えていった。


「もう、何なのよ」


「…」


アリスには分かる、少年の言い分が。だけど、自分も魔族である以上、()()()()に着くことが出来ない。今の私が何を言ってもそれはただの偽善でしかないのだから…。


???「あっははは、面白いものを見せてもらったよ!」


「だ、誰!?」

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