現実
次に目が冷めたときは、またベッドの上にいた。天井にぶら下がっているガラスを見て再び自分の姿を目にする。これは夢じゃない、私はあの化け物になってしまったんだ。
頭の中はこんがらがって何がなんだかわからない、誰かが私をこんな姿にしたのかだとか、なぜ自分は父親だと名乗る奴がいるのだとか。そもそも何故私はカンナの記憶があるのかだとか、分からないことばかりで胸が苦しい。
動こうにも手足は思うように動かず、目も良く見えない、一刻も早くここから出たい、よりにもよって私達家族の敵が私の親だという事実が受け入れられない、悔しくて悔しくて仕方がない。
「アァァアァ!」
その怒りにも似た声に呼応するかのように、周りの家具がカタカタと動き出す。
「あなた、またあの子が」
隣の部屋からそう聞こえてきた後、直ぐにドアが開き二人が入ってきた。男が手をかざすと再び眠気に襲われる。頭の中に何かヌルヌルとした物が入ってくるのを感じた。
嫌だ、イヤダイヤダ嫌だ!
バチッ
突然かざした手と私の額との間に火花の様なものが飛ぶとそれと同時に頭の中のヌルヌルも消えた。
「嘘、レジストされた?」
「そんな、まだ生後間もないのよ?」
私に触るな、私に構うな。
今度は先程より激しく家具がガタガタと揺れ始める。だが次の瞬間急激な眠気が襲った。先程とは違い強制的なものじゃなく生理的なものだ。カンナは今度はその眠気に抵抗できず意識が薄れていく。
カンナは再び目を覚ましたとき、少し考え方を変えた。取り敢えず今この状況を整理しよう、何をするにもこの体で出来る事といえば精々身体を少し揺さぶる事と、周りの家具を動かす事くらいである。一度落ち着いて、辺りを見回してみる。首を右に向けてみる。壁は土でできているのだろうか、白塗りの壁、触るとひんやり冷たい、天井は木造で灯りだろうか、ガラスの様なもので覆われたぼんやりとした灯りが部屋を照らしている。首を左に向けると、小さな机と人形の様なものが置かれている。その上にあった家具等は片付けられたらしい、今は机と人形があるのみだ。
カンナは恐る恐る自分の手を見てみる、その手は小さく小刻みに震えていた。手は人間のそれと大差はない。それどころか、家の作りは私が住んでいた家と殆ど変わりはない。
化け物の癖に、人間と同じ事をしているのか?化け物の癖に!