待ち人は大体来ないが来て欲しくない人はすぐにやって来る。
翌朝
シンがダイニングルームで朝食を済ませているところにトールがやってきた。
シン
「昨日は良く寝れたか?」
トール
「良く寝れたよ。」
トールは難しい話を聞いて、頭の中がスッキリしない内に、これからトールの部屋となる部屋に案内された。部屋にはベッドと机、椅子があるだけの質素な部屋だった。
案内されたトールはベッドに入るとすぐに眠ってしまった。
シン
「そうか。昨日は色々あったからな。今日はゆっくりして修行は明日からだ。」
トール
「大丈夫だよ!元気だし。修行やろう!」
トールはダイニングチェアに座った。
シン
「いや。今日はこの世界で生活するための方法を覚えるのが先だ。」
トール
「えー。修行したかった。」
トールは不服そうにシンに言った。
シン
「修行するにも腹は減るんだ。それはどうするんだ?」
トール
「あっ。それは、、、。」
シン
「今までは、親が用意してくれたご飯を食べるだけだったろうが、これからは違う。」
シンは食べ終わった食器を流し台まで持って行った。
トール
「シンが作ってくれると思ってた。」
トールはシンから目を逸らして言った。
シン
「甘えるな。、、、しかし、今朝は朝食を作ってやったから食べろ。食べたら、街に行くぞ。」
シンは朝食をトールの前に置いて言った。
トール
「ありがとう!いただきます!」
トールは満面の笑みで朝食を食べた。
シン
「俺は用意してくるから、食べ終わったら食器洗っておけよ。」
トール
「ふぁーい!」
トールは食べながら返事した。
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シンの用意が終わり、二人は家を出てた。
シンは着替えていた。白いローブを羽織っていた。トールはまるで魔法使いみたいだなと思った。いや、こう見えて魔法使いだった。と心の中で思った。
二人は馬がひく馬車に乗って移動していた。手綱を引いているのシンだ。
トール
「用意長くなかった?」
トールは馬の手綱をひくシンの横に座っていた。
シン
「こんなもんだ。大人には色々あるんだよ。」
トール
「そうなの?ってか、魔法使いだったら、空飛ぶホウキとかじゃないんだ?」
シン
「そんな便利な魔法使えたら世話ないよ。漫画じゃないんだよこの世界は。」
トール
「ふーん。」
トールは下唇を突き出した。
シン
「魔法には属性がある。火・水・風・土・雷・光・闇の7属性だ。魔法使いはこれら7属性を操る。基本的にはな。」
シンは魔法について話し始めた。
トール
「、、、。」
トールは黙ったままシンの話を聞いていた。
シン
「そして、魔法使いにはそれぞれ得意な属性がある。その得意な属性以外を操ろうとしても思った通りの威力を出すことは出来ない。7属性の魔法以外の空を飛ぶとかぶっ飛んだことは出来ないんだよ。」
トール
「基本的にはって?」
シン
「お前、妙なところで勘が働くな。」
トール
「へへっ。」
トールは嬉しそうにした。
シン
「ハッハッハッ。お前、単純だな。まあ、いい。7属性の魔法以外に特別な魔法を扱うことができる者もいるのは確かだ。」
トール
「だったら、僕も」
シン
「それは分からんな。こればっかりは生まれつきの才能によるところが大きい。可能性はゼロじゃないがな。」
トール
「頑張る!」
トールは目を輝かせて言った。
シン
「そうだな。」
シンはトールに笑顔で答えた。
トール
「シンの得意な魔法属性は『火』なの?」
シン
「ああそうだ。他にも使えるがな。」
トール
「僕の得意な魔法属性なんなんだろう?」
シン
「それは、まだわからんな。修行をしていけば、いずれ分かる。」
トール
「早く修行したいなー。」
二人は引き続き街へと馬車を進めた。
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二人は街に到着した。
外壁は高く、中央に向かうほど更に高い建物があった。外壁側には一周するように露店が出でいて、非常に賑わっていた。ここは露店街と言うらしい。
シン曰く、露店は品質は悪いが値段が安いらしい。
少し中心部に入ったところでは、品質は良いが値段が張るらしい。
街の入り口には、行商の馬車や人で入り乱れていた。
トール
「着いたー。この街デカくない?」
シン
「まあな。ここ一帯じゃ一番の街だ!ハッハッハッ!」
トール
「食材を買うんだっけ?」
シン
「ああ。食材とお前の服だな。それと評議会の神殿だ。」
トール
「ひょうぎかい?」
シン
「ああ、トール。お前についての届け出が必要だからな。この世界では転生されたら、評議会に個人データを提出しないといけないんだよ。行くの嫌だがな。」
トール
「なんで?」
シン
「大人には色々あるんだよ。行くぞ!」
二人は早々に買い物を済ませた。
1週間分の食材とトールの服を購入した。
トール
「ありがとう!次は、、、」
シン
「評議会神殿だ。」
トール
「どこにあるの?」
シン
「ん?あそこに見えるだろ。街のど真ん中で堂々と建ってる建物だ。」
トール
「あれが、、、。」
外から見ても大きかった街の中心部にあった建物は近くに連れて更に高く感じた。
まるで、神殿と言うより城みたいトールには見えた。
シン
「ほれ、行くぞ!置いていくぞ。」
トール
「待ってよ!」
トールは両手にいっぱいの服が入った袋を持っていた。
二人は評議会神殿にたどり着いた。
トール
「クビが痛い。」
シン
「そりゃそんだけ、首が真上に向いていたら、痛いだろ。」
『シンじゃない?』
シン
「ん?ってマジか。」
シンは苦い顔をした。
女性
「シンー!会いに来てくれたの?」
女性は荷物で身動きできないシンに向かって走って来て抱きついた。
女性
「嬉しい!言ってくれたら、会いに行ったのに!」
女性はシンに会えて嬉しそうだ。
シン
「お前に会いに来たわけじゃないんだよ。オカリナ。」
シンは嫌そうな顔で答えた。
オカリナ
「じゃぁ、任務?」
オカリナはシンの首の後ろに両手を回してシンの顔を見た。
シン
「それも違う。とりあえず離れろ。」
オカリナ
「もう、そんなに恥ずかしがらなくても良いのに。じゃあ、買い物?それだったら、神殿まで来ないわよね。」
そう言いながらオカリナはシンから離れた。
シン
「コイツだよ。」
シンはトールの方を見て言った。
オカリナ
「、、、。」
オカリナは数秒間トールを見て、驚いた。
オカリナ
「えーっ!シン!私がいるのに!いつの間に!」
オカリナはシンに詰め寄った。
シン
「いやっ!違う!お前何か勘違いしてるぞ!」
シンは一歩引き下がった。
オカリナ
「えっ?シンの子供じゃないの?」
シン
「違う!コイツの転生申請と師弟申請をしに来たんだ。」
オカリナ
「あー、そうゆうこと。って、えーッ!シンが弟子を⁉︎」
シン
「悪いかよ⁉︎」
オカリナ
「悪くはないけど、評議会は大慌てするわね。」
シン
「知るか。」
オカリナ
「君がねぇ。」
オカリナはトールを見て言った。トールは綺麗な人だと思った。
オカリナ
「お名前は?」
オカリナはトールの目線に合わせて聞いた。
トール
「トール、、、です。」
トールは詰まりながら答えた。
オカリナ
「フフッ。よろしくね。トール君。」
オカリナはニコッと笑顔で言った。トールは顔が真っ赤になっていた。
シン
「ハッハッハッ!ガキがいっちょ前に色気付いてやがる。」
シンは高笑いしながら、言った。それ聞いたトールはムッとした。
オカリナ
「ヤキモチやかなくても、私はシンだけよ?」
オカリナは体勢を戻してシンを見た。
シン
「トール行くぞ。」
シンはオカリナを無視して神殿に向かった。
トール・オカリナ
「待ってよー!」
シンとトールは評議会神殿で各申請手続きを終えた。
「以上になります。お疲れ様でした。」
トール
「やっと終わったー。」
トールは慣れない手続き作業で疲れていた。椅子に座って
ぐったりとしていた。
シン
「じゃあ、とっとと帰るか!長居するとロクなことがないからな。」
トールの横でシンは立ちながらお茶を飲み、言った。
オカリナ
「いた!シンー!」
オカリナがまた、走って近づいてきた。
シン
「まだいたのか。」
シンはウンザリした顔だった。
オカリナ
「シン。議長が呼んでるの。」
オカリナは走って近づいて来たが、抱きつくことはしなかった。
シン
「あの、ジジィか。断る!」
オカリナ
「やっぱり。そう言うと思った。たまには顔を出せって。来ないと称号剥奪も検討するって。」
オカリナは心配そうな顔でシンを見た。
シン
「それ以外に俺を動かす手段を知らんのか、あのジジィは。」
シンはお茶を持っていない空いた手で頭をかいた。
トール
「誰?」
トールは横で立っているシンを見上げて言った。
シン
「この世界の中心人物だよ。」