やりたいことと、出来ることの違いを知ることは大事。
トール
「僕が魔法使いに?」
シン
「そうだ。」
トール
「僕が魔法使いになれるの⁉︎」
シン
「こっちの世界に転生されたってことは魔力を消費して、マナを感じて魔方陣を生成出来るってことだ。現にお前は一度魔力を使ってるしな。」
トール
「うん。一度使ったら、空っぽになった。」
シン
「だろうな。修行もせずに無理に魔力を使ったからだ。しかも、精霊を呼び出すのは普通の魔法よりも多く魔力を消費するからな。」
トール
「そうなんだ。精霊って凄いの?」
シン
「精霊によるな。下位の精霊ぐらいなら、修行せずに使役することも簡単だ。中位以上となると中々難しいな。」
トール
「しえき、、、?」
シン
「あー、俺が悪かった。分からないよな。」
シンは左手を自身の顔にあてて、言った。そして、続けて話した。
シン
「精霊を操るには、己の魔力を精霊石に送り込み、具現化させるんだ。ただし、この時精霊が主人となる人間を認めていないと具現化出来ない。特に中位以上の精霊となると、ワガママな精霊も多いからな。」
トール
「ワガママか、、、でも僕を助けてくれた。」
トールはルーナの事を思い出した。ルーナに恐怖は感じなかった。しかし、″悪魔″に追いかけられていた状態で恐怖は既に感じていた。そんな中、ルーナは自身を助けてくれたこともあり、トールはルーナに対しての恐怖感は持っていなかった。
シン
「精霊もそれぞれだ。理由や目的は精霊の個体によって変わるからな。精霊の事をより詳しく知ることも今後、大事だ。」
トール
「そっか。もっと知る事が出来たら、仲良くなれるかな?」
シン
「仲良くか。お前の精霊に対する感覚は少し違うみたいだな。」
トール
「???」
シン
「この世界の人間は精霊に対して持つ感情は恐怖、道具、崇めるべき信仰のどれかだ。」
トール
「道具じゃない!危ないところを助けてくれた!友達だ!」
シン
「この世界の一般的な話をしたんだ。転生されてきた直後の人間は見たことない不思議な生き物にまずは恐怖する。それが慣れてくると自分の道具として操るようになる。心に不安があるものは精霊を神の使いとして、崇める。この世界″ヴァーナ″では、精霊は人や地域によって扱いが変わるんだ。」
トール
「精霊、、、可哀想だね。」
シン
「可哀想か。そんな感情を抱くお前はこの世界では珍しいな。」
トール
「珍しくてもいいよ。僕は精霊と友達になる!」
シン
「そのためには、修行しないとだな!」
トール
「そうだ!どうやったら、魔法使いになれるの?」
シン
「まずは魔力保有量の増加。そして、魔方陣の生成が出来ないと話にならないな。」
トール
「魔方陣?」
シン
「ああ、魔方陣は人間の魔力とマナを繋ぐために必要不可欠だ。いくら魔力があっても魔方陣が生成出来なければ、魔法を使うことは出来ないからな。」
トール
「???」
シンにはトールの頭の上に『?』が浮かんでいるのが分かった。
シン
「お前、全く理解していないだろ?」
トール
「はは、、」
トールは右手を頭にやり、目を逸らした。
シン
「見せた方が早いかもな。」
と言い、シンは右手を胸の位置まで持って来てから手のひらを開いた。
すると、不思議な模様が出てきた。トールはこれに見覚えがあった。ルーナが現れた時にも同じ様な模様が出て来たからだ。
『ボッ!』
音と同時にシンの手のひらには火が灯っていた。
トール
「凄い!」
トールは目を輝かせて言った。
シン
「こんな感じた。火が灯る前に出て来たのが、魔方陣だ。俺の体内の魔力とこの部屋の中のマナを魔方陣で繋ぎ合わせて、具現化させた。」
トール
「グゲンカ?」
シンにはまた『?』がトールの頭の上に浮かんでいるのが、分かった。
シン
「お前さっきの話、また、理解していなかったな。要は形を与えて、見える様にしたってことだ。」
トール
「シン凄いよ!、、、でも思った魔法と違う。もっとこう、バーンって感じのやつだと思った。」
シン
「部屋の中でデカイ魔法が使えるわけないだろうが!」
シンは手のひらの上で火を灯したまま言った。
トール
「それに、呪文とか言わないの?」
シン
「漫画やアニメの見過ぎだ!現実はこんなもんだ。必要ないしな。」
シンは火を灯し続けることをやめた。
「ファイヤーボール!」
トールが手のひらを押し出す様に突き出して叫んだが、部屋の中は沈黙に包まれた。
シン
「なにやってるんだ?」
シンは呆れた顔でトールに聞きいた。
トール
「どうやったら、『火』出るの?」
トールはシンの方を向いて聞き返した。
シン
「修行だ!」