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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
92/372

神様にお願い

 三巳は獣神です。そして山に結界を張り、悪い子はキープアウトした山神です。

 普段は当たり前にあって忘れがちですが、山を守護している以上は本人無自覚でも守護神です。

 そして三巳は山の生き物達に地球のイベントを浸透させています。

 結果どうなるかと言うと……。


 二礼。二拍手。


 (山神様、山神様。今年も一年家内安全に過ごせます様に)

 (今年こそはあの子に告白出来ます様に!)

 (空を自由に飛んでみたい)

 (大人にはダメって言われるけど、俺は冒険に出たいんだ!)

 (草沢山食べたいモー)


 そして一礼。

 境内は無いのでみんな思い思いの所で拝んでいます。


 「うーみゅぅ~……。

 毎年の事ながら、凄いな~~~」


 願い事は違わず山神である三巳の元へと届いていました。

 初詣を教えたのは三巳自身ですが、まさか自分が拝まれる対象だとは露とも思っていなかったのです。

 結果。毎年この時期になると、山のあちこちからお願い事の嵐が脳内に響いてくるのです。


 「でも山中の生き物が願うから何言ってるのかわかんないんだよなー」


 そうです。

 幾ら耳の良い獣神と言えども、何百何千もの思いの言葉は重なり過ぎて雑音になってしまっていたのです。

 よっぽど強いお願い事でない限り、思いは雑音となって掻き消えてしまうのです。


 「救いはあくまでイベントの一環として、本気で願う人がいないことかなー」


 当たるも八卦当たらぬも八卦の占いみたいなもんか。と三巳は山頂から周囲を見回して脱力した笑みでにゃははーと笑いました。


 (平和で温かいこの山が、いつまでもあります様に)


 そんな時聞こえてきた強い願いがありました。

 三巳は聞き覚えのあるその声に、フッと優しい笑みを浮かべました。


 「その願い、聞き届けた」


 三巳は大きく尻尾を一振りすると、一瞬で獣姿になりました。

 そして大きく息を吸うと、


 「アオ―――――ン!」


 山中に響く様に神の息吹が宿る遠吠えを放ちました。

 三巳の結界は強固な物なので、それで今更変わる物はありません。けれど決意を新たにした思いを、三巳は届けたかったのでした。


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