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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
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冬支度

 紅に染めた山々も、霜が降りる頃には落葉が進み物寂しい風情へと変わりました。

 冬支度を始めた小動物達が木の実を拾い集め、頬袋をぷくぷくに腫らしています。

 山の民達も雪に備えて雪囲いやらで忙しく働いています。


 「ふぉ~~っ、今日は一段と冷えるな~」


 冬支度を眺めながら歩く三巳が、自前の毛皮をグルグルに絡めて震えました。

 周囲を見渡せば山の民達も寒いのか、ダウンコートを着ている人もチラホラ見えます。

 子供達だけは未だに薄着で元気に走り回っています。中には半袖の子もいて見ているだけで背筋がブルルと震えてきます。


 「子供は元気だなー。

 おーい、お前達!子供は風の子とは言うけど風邪引かない様になー!」


 三巳は遠くで駆ける子供達に聞こえる様に、両手でメガホンを作って注意しました。

 聞こえた子供達は振り返って銘銘に調子の良い返事を返してきます。

 素直に返事する子から強がる子まで、見ていてついクスリと笑ってしまいます。


 「こりゃ今年も風邪薬大量に用意して貰わなきゃかな?」


 帰ったらロキ医師に伝えておこうと決めて、三巳は歩きます。

 村の広場まで歩いて行くと、普段とは違った様相が見えてきました。

 広場が魔法の光や木などで作られたお人形で、賑やかに飾り付けられています。


 「やっぱりクリスマスシーズンは賑やかしたいよなー」


 三巳が山の民に地球のイベントを教えているので、何気にそれっぽいイベントは盛んなのです。それっぽいだけで、割と独自に進化も遂げていますが。

 仕方ないですよね、科学文明を発達させていない世界に、LEDイルミネーションなんて無いんですから。


 「みんな楽しんでるし、三巳も残りを頑張って仕上げないとな」


 両手で口を隠してムフフと笑う三巳ですが、自分に正直な尻尾と耳は隠せていません。ピコピコ、フリフリ忙しなく動いています。

 三巳はキョロキョロ辺りを見回すと、人目を忍んで山に駆けて行きました。

 動物やモンスターの目も忍んでやって来たのは、山の中の三巳の住処です。以前住んでいた所とは違い洞窟ではなく、切り立った崖です。崖の上は迫り出していて、うまい具合に屋根を作っています。崖の中腹にも同じ様に迫り出している場所があり、うまい具合に床が出来ています。


 「ぬふふー、此処なら飛ぶ生き物以外は来れないからなー。我ながら良い隠れ家を見つけたもんだ」


 崖の住処は高い所に有って、下を覗き込んでも遠すぎて常人の目では掠れて見えません。けれど三巳には見えているので誰かが来ても直ぐにわかります。


 「さーて、昨日は何処まで仕上げたかなー」


 尻尾を目の前に回してその中にズボリと両手を入れた三巳は、探り寄せる様に次々とある物を取り出します。

 取り出したのは、作り掛けのおもちゃに木の実のブーケや干し肉のブーケでした。

 三巳は毎年クリスマスシーズンになると、山の子供達にクリスマスプレゼントを配っているのです。子供達は人間だけでなく、動物やモンスターもです。


 「ふふー♪今年も子供達は喜んでくれるかなー?」

 

 作り終わった物は可愛く布に包んだり、薄くて軽い木箱に入れていきながら、喜ぶ子供達の笑顔を思い浮かべます。

 反応が楽しみな三巳は、気付くと調子っ外れなクリスマスソングを口遊んでいました。


 「えーと、コッチの木の実は西のリス達にだろー。コッチの干し肉は南のモンスター達にー。コッチの干し魚は北の熊達だなー」


 出来上がった物はお届け順に並べていきます。

 動物やモンスターの子供達の分は、冬眠する前にあげなくてはならない為、三巳は優先的に箱詰めしていきます。


 「ぬふふー♪今年も見つからない様に夜中にそっと行かなきゃな!」


 動物やモンスターの子供達の分を作り終えると、夜更けまで待って山が寝静まった頃にいざ出発です。

 山には夜行性の生き物もいるので、三巳は細心の注意を払って物音を立てない様に進みます。でも一晩で山を全部回らないといけない為、とっても急いで進みます。

 途中フクロウに見つかりそうになりながらも、何とか全部配り終わった頃には東の空が明るくなってしまっていました。


 「ふぬぁ~~。あふっ、ぅぅ~流石に徹夜は眠いやー」


 三巳は大きな欠伸をしながらのそのそ診療所に帰ると、パタリと布団に倒れ込み、そのまま夕ご飯の為にリリが起こしに来るまで寝ていましたとさ。


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