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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
80/372

やっと来ました地獄谷!

 三巳達は今地獄谷を目指して進んでいます。

 洞窟の出口に近付くに連れて、洞窟内の温度は上昇していきます。三巳に熱耐性の魔法を掛けて貰わなかったらきっと蒸し焼きになっていた事でしょう。


 「流石にこの辺は光鍾乳石は殆どないのね」

 「暑過ぎて水も垂れないのかな」


 リリに告白して一皮剥けたロダは少し余裕が出来た様です。ぎこちなさは残るものの、以前の様にどもりません。ヘタレは返上でしょうか。

 肩を並べて歩く初々しい少年少女に、三巳はニヨニヨが止まりません。

 もう出口も見えているので三巳は先頭を歩いていません。リリとロダの後ろをタウろん達と生暖かく見守りながら着いて行きます。勿論お邪魔虫にならない様に数歩離れています。


 「人間の恋って難しいんだな。オイラ達は好きだけで済むから不思議だ」

 『モー、番は闘って勝ち取るモー』

 「がう」

 「そうだなー、動物もモンスターも強い種を残す為にも子作りするのも大変そうだなー。

 熊五郎もロダ認めてくれてありがとうな」

 「ぐぉうっ。がうるるっ!?」

 「ん?認めた訳じゃ無いけどリリの為に仕方なく?

 リリを傷付けたら承知しないんだからねっ!?って……。だから熊五郎はリリのパパじゃないだろーに」


 そうこうしている内に洞窟の出口に着きました。

 外はいつの間にか日が傾いて、西日が眩しく目を焼き付けます。


 「うわっ眩しっ」

 「ふわ~もうこんなに時間が過ぎていたのね。

 楽しいは時間の流れが早いな~」


 先頭を歩いていたリリとロダが掌で日差しから目を守りました。それを見た三巳達は予め掌で日差しを遮りながら洞窟から出て来ます。


 「うーにゅ。サラちゃんのが遅かったかー」


 日差しを遮りながら大空高く見上げた三巳は、その青空に点と色付く赤を見つけて言いました。

 三巳の言わんとしている事が何なのか、リリと熊五郎以外は正確に読み取りました。空から巨大な精霊の魔力が近付いて来ていたからです。地獄谷に今誰が居るのか知っているロダとタウろんと橙の妖精は、それがサラマンダーのものであると推測出来ます。


 「え?え?サラちゃん?サラマンダー?」


 現状魔力が回復していないリリはその魔力を感じ取る事が出来ません。みんなの視線を追ってキョロキョロ空を見回してサラちゃんの姿を探します。けれども未だ小さな点の為に中々その姿を見つけ出せませんでした。

 

 「ほら、僕の指す先だよ」


 そんなリリに隣にいたロダがわかり易い様に、腕を真っ直ぐ伸ばして人差し指でサラちゃんを指し示します。

 その指の先を追う様にしてやっとリリはその点を視界に収める事が出来ました。点が大分近付いて大きくなっていた事も直ぐに見つけられた原因かもしれません。


 「っていうか……めっちゃ早くない!?」


 余りにも猛スピードで迫る精霊の魔力に、流石にロダも狼狽しました。

 あっと言う間に点がシルエットに代わり、シルエットが確かな竜の姿に代わり、竜は大風を吹かせて三巳達の上空を旋回しました。下の熱気も伴って竜巻が起きそうになりましたが、三巳が抑えたので大丈夫でした。

 サラちゃんは旋回をして速度を落とすと、ゆっくり羽ばたきながら三巳の、いえ、リリの前に降り立ちました。そしてその頭をリリの前で垂らして地面に伏せてしまいました。

 これにビックリするのはリリです。隣にいたロダもビックリです。なんならその場に居合わせた三巳以外がビックリです。

 けれども三巳はちっともビックリしませんでした。

 何故なら、サラちゃんは一頭で帰って来た訳ではなかったのです。

 

 「わん!」


 軽快な鳴き声と共にサラちゃんの背から小さな影が飛び出しました。

 影は迷いなく一直線にサラちゃんの頭を駆け下りて、ピョンとジャンプするとそのままリリの頭上目掛けてダイブしました。

 

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