観光プランB④
妖精の世界には妖精達の暮らす村が有ります。
妖精の村は妖精達だけでなく、動物達も一緒に住んでいます。
木の幹に作られた物や、花の花弁で作られた物など、お人形ハウスの様な可愛らしい物が沢山です。
妖精の女王にお呼ばれした三巳達は、その小さな世界を大きな体で踏みつぶさない様に慎重に進んで行きます。
「うーにゅ、これは中々に厳しいなー」
一際大きな尻尾を持つ三巳が、珍しく根を上げています。
感情のままに動く尻尾が妖精達の住処を壊しそうになっているのです。
「あ、そーだ」
どうしたものかと思案した三巳は、ふと一寸法師を思い出しました。
打ち出の小槌は無いけれど、代わりに三巳には魔法が有ります。良い事を思い付いた悪戯っ子の様に、ニマリとほくそ笑んでリリ達に振り向きました。
「小さくなーれ!」
三巳は思い付いたままに魔法を発動しました。
変身魔法の応用編です。小人になる変身魔法をリリ達も含めて掛けたのです。
すると魔法を受けた三巳達は、キラキラと光の粒子を撒き散らしながら、シュルシュルと縮んで行きました。
急に掛けられた意味のわからない魔法に、リリ達はビックリしてしまいます。魔法を掛けたのが三巳で無ければ、悲鳴をあげて助けを求めていたでしょう。
妖精達は三巳の魔法を間近で見られて大歓声を上げています。
あれやあれやと混乱の内に、三巳達は小人サイズに変身しました。
「「「うわー!」」」
『モー!』
「が?ぐあ!?」
小人になった三巳達は、自分の体と周りの景色を矯めつ眇めつ見回して、興奮に包まれました。
草は背丈より大きいし、小石も今は大岩だし、蟻んこもワンコ程の大きさに感じられます。
寄って来た妖精達と背比べをすれば、妖精サイズになった事が良くわかります。
「凄い!けど、どうせ変身するなら妖精になれば良かったんじゃ無いかなぁ」
ポツリとロダが零しましたが、三巳は聞こえていません。「あ」とか言葉を漏らしていましたが、聞こえて無いったら無いのです。考え付かなかったとか無いのです。
口笛吹いてソッポを向いて誤魔化す三巳に、ロダは察してそれ以上の追求は避けました。
「あらまあ、うふふ。とっても可愛らしいわ」
穏やかに微笑みを浮かべて、妖精の女王が言います。そして小さい体で歩くのは大変だからと、妖精の粉をかけて飛べる様にしてくれました。
空を飛べる様になった三巳達は妖精目線で探索を楽しみます。
妖精の女王も合わせて体を縮めて観光案内を楽しんでいます。
妖精の女王の話によると、妖精にも色々な種族がいるらしいのですが、三巳の結界がある為に此処には限られた妖精しかいないそうです。「つまり悪~い妖精も外にはいるから気を付けてね」と注意を促されましたが、慈愛に満ちた母親の様な顔で微笑まれているので、あまり悪い感じに思えませんでした。
「三巳は長生きしてるし、悪い妖精に会った事ある?」
ロダがそれとなく聞いて来ましたが、三巳も出会った事が無いのか顎に手を当てて首を傾げています。
そもそも一応三巳は獣神です。普段の行いから全然それっぽく無くても、この世界の頂点に位置付く神族の一員です。悪~い子は向こうから裸足で逃げ出してしまうのです。だから三巳が会う確率は物凄~く低いのです。
「うーにゅ、でもちょっと悪い妖精にも会ってみたいなー」
「私も会ってお話してみたいけど、悪~いの度合いにもよるわね」
生憎と悪い妖精はいませんが、普通の妖精ならいっぱいいます。
妖精の女王は様々な妖精達を紹介してくれました。お花を育てる妖精や、季節を届ける妖精。色んな妖精達が、得意分野別に居住区をわけているそうです。
中でもリリが興味を示したのが物作り妖精です。
「ふわ~、物作り妖精さんって本当にいるのね!
私、病気で寝込んだ洋服屋さんに代わって、素敵な洋服を作るお話が好きなの!」
リリは幼い頃に読んだ絵本を思い出し、目の前でエッヘンと胸を張る妖精に感動の眼差しを向けています。
「あ、それオイラの師匠の師匠がモデルのヤツだ」
「!フィクションじゃなかったの!?」
そして史実に基づいたお話だとわかり、カルチャーショックを受けました。
残念ながらモデルとなった妖精は、既にこの世を去っているらしく、話を聞いたリリはションボリと肩を落としました。
とはいえ何時迄も残念がっていても仕方がありません。気を取り直して妖精の女王に観光案内を続けて貰います。
要所要所で其々の分野別に、妖精達は得意技を披露してくれます。普段は見る事の無い妖精の世界ですが、今回は三巳も一緒なので特別に張り切っている様です。
三巳はその都度腕を上げた妖精達を褒め称え、労いました。
勿論リリ達もその職人技に感心感動しっぱなしです。
特にリリは物作り妖精が、ロダは季節妖精が、タウろんは植物の妖精が、熊五郎は陽だまりの妖精がお気に入りになっていました。
村中を案内して貰って大満足の三巳達は、妖精の女王に誘われて、泉でお昼ご飯を食べる事にしました。
泉には話を聞き付けた妖精達も、果物やナッツを持ち寄って集まって来ます。お陰で辺りはあっと言う間にパーティーモードです。木で出来たジューサーまで持ち込まれています。
小人サイズの三巳達にとって、果物はどれも巨体サイズです。自分達の背丈より大きい物もあります。
初めての経験に興奮した三巳達は、飛び付いたり背比べしたりしています。
タウろんなんて芋虫の様に齧りついて食い付いています。
「タウろん良く食べるなー」
三巳は流石にちょっと胃を心配しました。
だってタウろんは朝から村の草をたらふく食べて、蜜の森でもたらふく食べていましたからね。
『食べられる時に食べとくんだモー』
「食べ貯めって出来るもんか?」
お腹がポンポコリンに膨らんでいてもなお食べる姿に、三巳は思わず真顔で聞いてしまいます。
脳内草だらけのタウろんは、そんな事迄考えていませんが、妙に自信満々に『大丈夫だモー!』と果物の内側から叫びました。
三巳はダメだこりゃとポーズを取り嘆息しました。
「おーいヨーちゃん、三巳達もお弁当いっぱい作って来たんだ。一緒に食べよう」
タウろんの好きにさせる事にした三巳は、妖精の女王の元へ行き声を掛けました。三巳に掛かれば妖精の女王も「ちゃん」付けです。
三巳が持参したお弁当を並べて元のサイズに戻すと、それを見た妖精達が歓声を辺りに響かせました。
だってお菓子は貰っても、人間のご飯は食べた事が無かったのです。
お陰で大きくした筈のお弁当も、殆どが妖精達のお腹の中に消えてしまいました。
それでも美味しそうに平らげてくれたので、三巳もリリも大満足です。
ロダもリリの作ったおにぎりを確保出来たので満足でした。
得にもならない設定話。
妖精の女王様のあだ名について。実はちょっと悩みました。
よーせーのじょおーでよーじょちゃん。にすると幼女ちゃんになってしまうし。
じゃあじょおーでじょーちゃん。にすると嬢ちゃんになってしまい、むしろ三巳のが嬢ちゃんだろ!?と自己突っ込みしてしまうし。
と、言う訳でヨーちゃんになっていますが、こんなのどう?とご提案あれば今後変更になる可能性もあります。もしも変更されていたのを発見した時は……そっと生暖かい目で察して貰えると……。




