ロダと赤ちゃんと
最近の山の民、特に女性陣の楽しみはロダ少年の恋の行方です。
ロダはリリが来るまでは普通の何処にでもいる、頑張り屋さんで優しい頼れるお兄ちゃんでした。
今のロダはリリを前にすると途端にヘタレに変わるので、みんなニヨニヨしつつも生暖かく見守っているのです。
そんなロダは今、近所の若いお母さんの代わりに赤ちゃんの面倒を見ています。
「あぷー」
「そうだね、お花綺麗だね」
「あぱぱー」
天気が良いので色とりどりの野花を木陰で涼みながら見ています。
赤ちゃんの言葉に雰囲気で意味を読み取って会話しています。
すると尻尾を揺らして鼻歌交じりに通る三巳に赤ちゃんが反応しました。
両手をパタパタさせて三巳を求める赤ちゃん。それをロダはあやしながら三巳を呼び止めました。
「今日は三巳、赤ちゃんに尻尾触らせて貰えない?」
「ちーす。良いけど、どしたん?産んだのかー?」
上手に面倒を見ているロダに、三巳は面白がって冗談を言いました。
「!?違うよ!?近所のミン姉の赤ちゃんだよ!?畑が忙しいみたいなだから代わりに見てるだけだよ!?」
それを間に受けたロダは慌てて否定します。けれど否定した後でふと赤ちゃんを見てニヨニヨしだしました。
自分とリリと赤ちゃんの妄想をして照れ笑いをしだしたのです。
怪しい笑みに三巳が怪訝な顔をしました。ちょっと毛が逆立っています。
「リリとの赤ちゃんなら……ふへへ」
「……そのだらしない顔、リリには見せない様になー……」
ロダの頭の中を正確に理解した三巳は呆れて、でも否定はせずに忠告だけしました。
「なんだよう。三巳だって自分の赤ちゃん欲しくないの?」
ロダは恥ずかしさと居たたまれなさを誤魔化す様に、口を尖らせます。
「そもそも相手が居ないしなー」
「三巳を好きになる人かー」
ナハハハと笑う三巳に対して、ロダは一生三巳が独り身なんじゃと悲しくなって眉を下げました。
「少なくても人以外だよね」
「流石に人は寿命が短過ぎるなぁ」
一応人の寿命を延ばす魔法もありますが、その時点で人の輪から外れてしまいます。流石に好きになった人に苦行はしいたくないので、人と恋に落ちる事はほぼ無いだろうと三巳は思うのでした。
「でも三巳には幸せになって貰いたいから、いいヒトいたら逃さないでね」
「にゃははははー」
真剣に三巳を思ってお願いするロダですが、お一人様が長く、特に苦にも思っていなかったら三巳は笑って誤魔化しました。
「大丈夫かな……三巳」
「あら何が?って、可愛い!ロダの赤ちゃん?」
三巳の将来に不安を感じたその時、ヒョッコリ顔を出したリリが話に加わりました。そして笑って冗談を言います。
「違うよ!?」
リリに誤解されたくないロダは必死になって誤解を解こうと奮闘しました。
別段冗談だったのでリリは何にも思っていなかったのに。
「あばー」
尚、その間赤ちゃんは三巳のフワモコ尻尾を堪能し、アムアムさせながらロダをつぶさに観察していました。




