永遠のティーンエイジャー三巳
子供の日の行事が粗方終わった夜の事です。
最後のイベント。温泉施設の限定湯、菖蒲湯に浸かってマッタリしています。
「はわ~。これが菖蒲湯なのね~」
リリは初めての菖蒲湯に心を蕩かせています。
「此処のは特別だぞ。
何せ温泉に菖蒲入れてるからなー」
三巳も頭にタオルを乗せて古き良き入浴スタイルでマッタリしています。
今日は混雑しているので尻尾は邪魔にならない様にクルンと丸めて前に浮かせています。
「そうよね~。温泉自体特別だものね~」
リリの蕩けりは止まる事を知らない様です。
このままお湯に溶けてしまいそうな程マッタリしています。
とは言ってもずっと浸かっていても逆上せてしまうので、時々涼み処で休みます。
「でも何で菖蒲なの?」
「何だったかなー。
確か勝負に勝てる強い子になる様にだったか?違ったかな?」
涼み処で体も頭も冷えた所で再度菖蒲湯に浸かってリリが尋ねました。
三巳はアヤフヤな知識で適当に答えます。
なんか良く分かんないけど、イベントは楽しいから参加してる組だったのです。
「ふーん?」
聞いてるリリは分からないまま、分からないと言う事を納得しました。
「それで今更だけど三巳って歳はいくつなの?」
「さあ?」
三巳は子供に混じったり、大人に混じったりするので、どっち寄りか気になったリリが尋ねました。
それに三巳は首を傾げて答えます。
「生まれた時から歳って概念無かったからなー」
何せ山の民が来るまで、三巳は獣の姿でした。
しかも昼夜季節問わず自由気まま、思いのまま生きてたので年月を必要として無かったのです。
「それじゃあ種族は?」
「さあ?」
目をパチクリさせるリリは更に尋ねます。
こんなに長寿な獣人は滅多にいません。何かヒントになるかと考えたのです。
それに三巳は反対側に首を傾げて答えます。
「母ちゃん以外同じ種族には会ったことも無いしなー」
母獣も他の知り合いの神達にも、己の種族を気にする者はいませんでした。
三巳自身特に拘りも無かったので知る機会は有りませんでした。
「母子家庭だったの?」
「うん。そいえば母ちゃん元気かなー」
複雑な家庭環境を想像したリリは眉尻を下げましたが、当の三巳は母獣を思い出して甘える様に尻尾をくねんくねんと振っています。
「会ってないの?」
「うん。独り立ちしてからは一度も会ってないなー」
「寂しくないの?」
「んー?特に思った事無いなー。
会いたくなったら会いに行けばいいんだしなー」
三巳は本当に何でもない様に、のほほんと笑って尻尾を揺らします。
それにリリは複雑な気持ちで湯船に沈んでブクブクさせています。
けれど三巳ワンコを思い出したリリは、パッと閃いて浮上します。
「三巳っ、三巳の種族はきっとワンちゃんよ!」
「んん?あーまあ、狼も犬も似た範疇か?」
三巳は本来の姿を思い出して、色んな犬種と比べます。
(でも日本じゃ犬神とかあったし、もしかして本当に狼に似た犬なのかな?
シベリアンハスキーみたいなもんか?)
精悍な顔の犬種は、成る程近いものがあると、三巳は一人ウンウンと納得しました。
リリはリリで、頷く三巳に満足してニッコリ笑いました。
「でも三巳って村一番の年長者って聞いたけど、態度は本当に改めなくて良いの?」
「硬いの嫌いなんだよ」
リリが申し訳なさそうに尋ねますが、三巳は心底嫌そうな顔で拒絶します。
あまりにも嫌そうにするので、リリはクスクス笑います。
「分かったわ。今まで通りにするね」
「そうしてくれ。
歳って概念ないから年長者って言われてもピンと来ないしなー」
正に三巳は永遠のティーンエイジャーなのです。
言動行動が幼いのは永遠のティーンエイジャーだから仕方ないのです。
三巳は心の中で言い訳するのでした。
リリの過去話上げました。別作品『リリ王女の婚約破棄から始まる悲しい物語』です。一応R15指定ですが良ければ見て貰えると嬉しいです。




