小さな恋
「それで?何で突然リリに恋したんだ?」
「うぐっ」
スバリと情け容赦無く聞く三巳に、ロダは真っ赤な顔を俯かせてしまいます。
「何だい何だい?面白そうな事話しているじゃないか」
そこへ面白そうな匂いを嗅ぎ取ったミレイがニマニマしながらやって来ました。
その背後からゾロゾロと暇なご婦人方が同じくニンマリしながらやって来ました。
「なっ、何でこんなにっ」
村の女に囲まれたロダはタジタジです。
「いつの時代も、どの世界でも、女の子は恋バナが好きなんだなー」
三巳は「ワカルワカル」とウンウン頷いています。
勿論全員が恋バナ好きな訳では無いですが、恋バナ好きには些細な違いです。
「「「で、どうなの?」」」
老いも若きも麗しき乙女達に詰め寄られるロダは半泣きです。
あまりの剣幕に、通りすがりの男連中は羨ましく思うより「クワバラクワバラ」と遠巻きに逃げて行きました。
「うぅ~っ、だって。リリ健気だから」
観念したロダは、ポソポソと語ります。
集まった皆は、ウンウンと頷いて先を促します。
「推測でしか無いけど……リリ大変な目に遭って来たんだと思うんだ。
でもリリはいつだって前を向いて笑ってる。
薬草の勉強だってそうだよ。
聞いたら本来は回復魔法は得意らしいんだ。
でも今は魔力が安定しなくて使えないだろ?
それでもメゲないで出来る事を楽しんでやる姿見てたら……」
ロダは真っ赤な顔でモジモジさせて言います。
思いの外ちゃんと恋してたロダに釣られて、皆もほんのり赤らみます。
「ピュアだわ……」
「なんだろう。わたし、どこで純粋な心落として来たのかな……」
「あ、やだ目から雫が……」
ちょっと心に刺さった大人の乙女達が、目頭を押さえています。
「告白しないのか?」
「こっ!?こここー!?」
しかし三巳はゴーイングマイウェイです。
疑問に思ったので素直に聞きました。
ロダはワタワタと同じ言葉を繰り返します。
「ロダ兄ちゃんニワトリみたーい♪」
「ニワトリニワトリー♪」
「こけこっこー♪」
子供達に囃し立てられて、ロダはプシューと湯気を出して俯いてしまいました。
「こりゃ告白なんて夢のまた夢だね」
「うーん。三巳恋愛はした事ないからなー。
助言は難しいしなー」
「そもそも三巳と恋愛出来る御仁がいないんじゃないかい?」
「三巳姉ちゃん長生きだもんなー」
ロダがモジモジさせて縮こまってしまったので、主役そっちのけで話が盛り上がっています。
「うーん。リリと恋バナしてみようかなー」
「ああ!それは良いねえ!」
「そうおしよ!」
「好きな人がいるかもだしね!
そうでなくてもタイプ位聞いといてよ!」
リリの好きな人に反応したロダは縋る様に三巳を見ました。
ロダは普段は頼れるお兄ちゃんタイプです。
そんなロダの捨てられたワンコの様な姿に三巳はキュンときました。
「よし!三巳に任せとけー!」
調子に乗った三巳は胸をドンと叩いて大見得を切るのでした。




