三巳とレオと日常と
レオにベッタリくっ付いて離れない三巳がいます。
「レオっ、今日は何する?川?山?釣り?」
縁側で片胡座をかくレオの背後から両手でしっかりホールドして、ご機嫌尻尾をワサリワサリと振り振りしています。
逃がさんと言わんばかりな三巳にレオは片眉上げて、背後に見える三巳のご機嫌耳をカリカリ掻いて宥めます。
「毎日元気だな」
山に来てからと言うもの、レオは一通りの山の遊びに付き合って来ました。三巳があまりに嬉しそうなので断る選択肢は出て来ませんでした。
そしてそれは今日もそうでしょう。
一匹ライオーガなレオも三巳相手では形無しです。
「ってもな、大体の事はしてきたろ。偶にはゆっくりしようぜ」
「うにゅ」
レオに同意を求められれば即結即断です。
三巳は同意するや否や小さい本性に戻ってその頭をレオの片胡座に乗せました。体はレオを囲う様な姿勢で、なんなら大きな尻尾は本当に囲っています。
「いきなりそれかよ」
短い笑い声と共に苦笑をこぼすレオは、けれども嫌がらずに三巳の頭と尻尾を撫でてくれます。
視線を外へ向ければ遠くに山の民達の様子が見えます。その中にはクロもいました。昼間はクロもお仕事しているのです。
視線を上げれば屋根の上に母獣の姿が見えます。その視線は穏やかにクロのみに注がれていました。
(相変わらずの熱愛だな)
神族に育てられたレオは、神族の愛の深さを理解していました。神の寵愛は世界を救う事も破滅に導く事もあります。過去を紐解けばそれはもう様々な事があった事でしょう。
レオもまたそれなりに生きたモンスターです。
(神族に育てられた俺が神族の知己になるなんてな。世の中案外狭いもんだぜ)
『んにゅう?どしたん?』
数奇な出会いに思いを寄せていたら三巳が眉根を寄せて覗き込んで来ました。
「いや、神族ってのは居るとこにゃ居るもんだな、って思ってた」
『んー?そーなん?三巳まだそんなに知り合いいないけどなー』
「普通は1柱会うだけでも稀なんだよ」
鼻を寄せる三巳の首周りを撫でながらレオは言います。
『ふーん?』
三巳はよく解らなかったのか、目をパチクリさせます。
(日本じゃそもそも偶像だからなー)
神が普通に存在する時点で三巳には門外漢の様です。自身もその一部である認識すら薄いですからね。
『三巳に会えるの良かった?』
頭をレオの首筋に擦り付け、甘えた風に聞けば、レオは「ふっ」と笑みを漏らします。
「当然だろ」
キッパリと言われ、三巳はニコーッとして山に響く嬉しい遠吠えをあげるのでした。




