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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
370/372

オリンピック開催中

文章のおかしな点を一部修正しました。おおまかな変更はありませんので再読はしなくても影響ありません。

 山のオリンピックは観客席も選手席も盛り上がっています。幾つかの競技が終わり、メダル獲得数は、1位ウィンブルドン、2位ヴィーナ、3位リファラになっていました。


 「いやぁ、これは中々に予想外の展開ですね。自国である我々ヴィーナが負けていますが、どう思われますか?ミズキさん」

 「そうですね〜。今回運営側が〜不公平にならない様に〜我々にも〜未経験な競技設定をしたらしいです〜」

 「成る程。確かにワニワニパニックは普通の生活では先ずお目に掛かりませんね。では他の競技も何かしらのギミックがあると思って良いでしょうか」

 「それは〜見てのお楽しみです〜」


 ミズキはニンマリと挑戦的な笑みを浮かべます。

 ロンも楽し気に笑みを深め、未だ開始待ちをしている会場画面を見ました。


 「さあ、まだまだ競技は続きます」

 「次の〜競技は〜高幅跳びです〜」


 競技の終わった画面は小さくなり、代わりに始まろうとしている競技は大きく映し出されます。


 「これはどう言う事でしょうか」


 その光景にロンが疑問を呈します。


 「変わった所は無いように見えますが」


 画面には高い岩壁が聳え立ち、その下は砂地になっています。岩壁は徐々に高くなり、砂地も比例して広くなっています。


 「砂地に足を付けず、より高い岩壁を飛び越えると点数が高いという競技ですね。ミズキさん、これはどう見ますか?」

 「そうですね〜。これは〜一見〜ジャンプ力を競う競技ですが〜、壁を見て下さい〜」


 ミズキの促しに合わせるように画面が岩壁をアップにしました。するとそこには何やらくっ付いているのが見えます。


 「あれは〜鳥の巣です〜。丁度〜秋色砂鳥が〜子育て中です〜」


 更にアップされた画面には、岩壁を粘土のように抉って迫り出させた場所に雛が見えました。ピーチクパーチクと嘴を動かして餌を強請っています。


 「これは可愛らしいですね!ですが秋色砂鳥は雛でも大人程の大きさだったと思いますが、どれ程高い岩壁なんでしょうか」


 ロンの指摘通り、秋色砂鳥はとても大きなモンスターです。他所の国では、弾丸の様に飛んで来て鋭い嘴と鉤爪で獲物を狩る厄介者らしく、


 「な!?何て所にコース作るんだよ!?」


 などと、主にウィンブルドン勢が俄かに騒つきます。


 「あらまあ、もうそんな時期なのね」


 リファラからは今日の天気を語る程度の反応です。モンスターは家族なお国柄なので、羽毛が緋色やイチョウ色な彼等は秋の訪れを感じさせてくれる素敵な来訪者なのです。


 「カメラさん〜もう少し〜右にずらして下さい〜」


 ミズキがそう指示をすると画面が移動しました。すると今度は横に裂かれた傷跡が数本見つかります。


 「あれは!」

 「そうです〜。三巳の〜背比べ跡です〜」


 ミズキの説明を聞いてロンのみならず、会場全体が騒めきました。三巳は


 (最近測ってないなー)


 と懐かしく思います。成神する前は小鬼達が測ってくれました。よく見れば岩壁下には小鬼達が選手を誘導しています。


 「小鬼達が〜爪痕は記念だから〜壊したら減点と説明してますね〜」

 「自信の無い選手は避けて行くのが見えます。敢えて残る選手もいますが、どうでしょう。無事飛び越えられるのでしょうか」

 「無理なら〜魔法を使って〜自主棄権するでしょう〜」

 「それもそうですね。我々としても大切に残していきたい三巳の成長記録です」


 山の民が暖かい目で三巳を見て、三巳は耳と尻尾を小刻みにピピクピクと震わせて照れました。


 「良い奴らが揃ってんのな」


 ジャングルでは気を張りっぱなしのレオも、隣で優しく穏やかな顔になっています。

 とても良いリフレッシュになっている様で、三巳も嬉しくなります。


 「にゅ!スタートしたんだよっ」


 観客席が和やかに進んでいる間も競技は進みます。高幅跳びも一斉に駆け出していました。


 「あ!」


 一番高みを目指した選手は砂地もより広いです。先に地面を蹴って飛び上がった姿からは岩壁を越えられそうに思えました。けれども、


 「上じゃなくて下かよー!!」


 砂地に潜んでいたサンドワームにパックンと飲み込まれてしまいました。

 選手は秋色砂鳥の親からの妨害ばかり気にして下を疎かにしていたのです。

 哀れパックンされた選手はスタート地点でペッと吐き出されてしまいました。


 「いやーこれは予想外でした。ワニワニパニックに続いてまたもや下から来るとは。選手も驚きを隠せていませんね」

 「そうですね〜。わかり易い罠に気を取られ過ぎです〜。罠は〜1つあれば〜沢山あると思え〜っていう格言ですよ〜」

 「おおっと!?後続選手がそれを見て砂地を気にしていますね!」

 「ライバルの振り見て我が振り直せ〜です〜。でも〜それだけじゃ〜駄目ですよ〜」


 ミズキの言う通り、画面の中では砂地を気にした選手を今度は秋色砂鳥の親が襲います。親鳥は嘴に挟んだり鉤爪で捕らえたりと、選手を次々とスタート地点へ戻してしまいました。


 「これは中々に難しい競技ですね。魔法の使用は禁止という事ですが、些か厳しいのではないでしょうか」

 「ふふふ〜それを越えてこその一流ですよ〜」


 ミズキは不適な笑みで言います。

 けれども三巳もちょっぴし難しそうと思いました。そして自分ならどう行こうかシュミレートします。


 「獣神の跳躍力について来れる猛者はいないだろ」


 三巳の顔を見て何を考えているか、レオはちゃんと把握していました。直ぐに冷静なツッコミが入ります。

 三巳もシュミレートで縦横無尽に飛び回る自分が容易に想像出来ました。照れ隠しに微妙な笑みを浮かべます。


 「皆がんばれー!」


 耳と尻尾を落ち着きなく動かして誤魔化してる感が出ている姿に、レオも苦笑して三巳の耳裏を撫でました。

 会場では三巳の声援が聞こえたかの様に、山の民達がサンドワームと秋色砂鳥を逆に足場にして次々と岩壁を超えて行っています。


 「成る程これなら確かに砂地には足を付いていませんね。これは有りなのでしょうか」

 「有りではあります〜。でも〜一度も足を付けない方が〜ポイントは高いですよ〜」

 「そうでした。今度の競技はポイント制でしたね。これは結果が読めなくなりましたよ」


 ミズキの言う通り、岩壁が低くても足を付けなかった選手が1番ポイントの高い結果になりました。

 これで各国のメダル獲得数はイーブンです。

 最後の種目で勝敗が決まる事になりました。

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