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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
359/372

新しいお友達と遊ぶんだよ

 余所者冒険者達がお友達になりました。今は自己紹介をしています。


 「俺は魔法剣士ユーシャ。って言っても魔法は補助レベルだけどな。前衛をしてる」

 「私は魔導士のマホ。後衛よ」

 「ボクはインテ。小人族だから小さく見えても成人してるから。大学の研究の為に同行してるけど弓が使えるからね、一応中衛を担当してる」

 「はいはーい!オレはラント、武闘家だぜ!魔法はからっきしだけど近接戦闘なら任せとけ!」

 「あ、わたくしはヒーラです。各地の神域で祈りを捧げる為に同行しています。戦うのは苦手なので回復や料理で皆様をサポートしております」

 「最後はあっしかぁ。あっしはトーコだよん。ぶいぶい~♪罠解除ならお任せあれ~」


 ここに来て初めて冒険者らしいパーティー構成です。

 三巳は『おー』と感嘆の声を上げて、後ろ脚だけで器用に立つと、前脚の肉球をポシポシ叩き合わせます。そして三巳に対して祈りを捧げたそうな目で見るヒーラから視線を逸らします。

 三巳達も軽く自己紹介と、念入りにお正月以外のお祈り禁止令を言い渡し、場を改めました。


 『んー。そいじゃあ、道の安全が確認出来るまでは此処で三巳達と釣りするんで良い?』

 「おう。何か悪いな、急に来て」

 『非常事態なら仕方ないんだよ。危険回避大事絶対。安全第一で旅してな』


 申し訳なさそうなユーシャに、三巳はニッコリして気にするなの気持ちを込めて尻尾を一振りします。

 

 「釣り道具はあるのか」

 

 ログが尋ねれば、ユーシャ達は荷物袋から携帯式の釣り道具を出して見せました。


 「旅じゃ食糧確保の必需品だぜ」


 ドヤ顔で言うラントです。

 けれども三巳の目は荷物袋の方に釘付けです。


 『それで荷物運んでるのか?大変そうなんだよ』


 どうやら道着入れみたいな大きな袋が、長時間持ち歩くのに不便そうに見えた様です。

 ラントはそれにニカッとした苦笑で返して片手を振ります。


 「おー、オレ達じゃ空間収納が施された鞄は高級過ぎて持てねぇよ。つか貴重過ぎて金持ち位しか持ってねーし」

 『空間魔法……?良くわかんないけど、そうじゃなくて、登山リュックとかのが楽くないのか?』

 「登山……??修行僧用の鞄か??」


 何やら鞄の知識がお互いに違う所為で上手く伝わっていません。

 そこで三巳は尻尾収納から山観光の時に使ったリュックを出してみました。

 それに喰いついた目は其々違う所を見ています。


 「尻尾に空間収納魔法!?さ、流石神族ね……」

 「ああっ、神の御業に祈りを捧げられないなんてっ」

 「何だそれ。背負い籠みたいだな」

 「けど収納スペースが各所にあって機能的だ」


 やいのやいのと三巳とリュックを囲んでじっくり見始めます。


 『これは日帰り用だけど、お泊り用のもミランダの雑貨屋さんにいっぱいあるんだよ』

 「これで日帰り用!?いや、しかしこの余計な羽の不必要性を考えればファッション的か。という事はお泊り用には羽は無いのか?」


 インテの分析に三巳はちょっと(これだから男の子は)的な目を向けて頷きます。


 『んー。じゃあ今日一番美味しくお魚料理出来た人にプレゼントするんだよ』

 「「「なんだって!?」」」


 三巳の提案に一斉に目の色が変わりました。そして其々をライバル視して釣り竿を握りしめます。


 「誰が勝っても恨みっこ無しだ」

 「分かってるわ」

 「神の施しを一般人に取られるなど、神の僕の名折れです。本気で行かせて貰います」


 という訳で一斉に川に釣り竿を投げ入れました。

 そんな彼等を尻目にログはのっしのっしとその場を離れます。そして川上の少し段差が出来ている岩場に静かに腰を下ろしました。

 三巳はレオの元に戻ると一緒に何処に竿を落とすか相談します。


 「取り敢えずそこの木陰で着替えとけ。その間に準備してるからよ」

 『うにゅ。お願いするんだよ』


 レオの目はログの位置決めと竿捌きを観察していました。そして半端なやり方じゃ敵わないと悟ります。徐に指を鳴らすと何とレオの斜め前の空間が円を描くように歪みました。

 レオはそこに手を入れて戻します。するとその手には釣り竿とルアーが握られていました。

 そうです。レオも空間収納を会得していたのです。そして海側圏出身者として本格的な釣り道具を一式持っていたのです。


 「あー!凄い!かっちょいい!」


 着替えを終えて戻った三巳の目は、準備を素早く終えたレオに釘付けです。ちょっぴしハートマークが飛んで見えるのはご愛嬌です。


 「ほらよ。釣り場に行ったら静かにな」

 「うにゅ。釣りの心得はログに教わっているんだよ」


 レオに渡された道具を受け取り、尻尾でお口を塞いでみせます。

 けれども渡された道具を見て直ぐに顔を輝かせました。


 「んにゅああああ!!これっ!これっ!三巳の!?三巳の!?」


 レオに渡されたのは三巳専用にカスタマイズしたレオとお揃いの釣り道具一式だったのです。

 いきなりのプレゼントに三巳のテンションはマックスを超えました。

 

 「落ち着け」


 尻尾のブンブカが過去最速をマークした所で、レオに額を押されて止められます。


 「うにゅ。ごめんなんだよ」


 神妙に謝る三巳ですが、興奮が勝ち過ぎてニヨニヨ顔が止まりません。更には尻尾の振りを無理矢理抑えた事で体全体がバイブレーションの様に震えてしまうのでした。


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