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獣神娘と山の民  作者: 蒼穹月
本編
357/372

ログの危機一髪?

 『ログ―――!』


 三巳が大声で名を呼んでいます。

 最速で山を駆け抜けて篩の森の外れまでやって来ました。そこに危機一髪なログがいるからです。

 もう目の前というその時です。


 『疾風の如く駆け抜けて!』


 何処からともなく浪々とした声が響き渡りました。


 『浄化の炎で悪を撃ち!』


 止まる事なく続く言葉に、その場に居た全員が声の出所をキョロキョロと探します。


 『濁流の波で流し出す!』


 あの辺かなー。と辺りを付けた所は空の上でした。けれども確かにその辺から聞こえる筈なのに人の目には見えません。

 余所者冒険者達はザワザワして構えを上に向けました。

 ログは平然と空を見上げています。見えてはいませんが何となく三巳関連だろうと思っています。

 三巳の耳と目はとても良いので初めから声の主が見えていました。


 『???新しい顔なんだよ?』


 ポカーンと上を見上げたまま、ログの隣で止まって呟きます。


 「何だ。知り合いじゃないのか」


 ログは顔を上から三巳に移して拍子抜けした顔をします。


 『うぬ。知らない風の竜』


 三巳もログに顔を移してお座りします。


 「ああ、また竜か。その内、竜の寝ぐらになりそうだな」


 竜と聞いてログはまたかと思いました。リヴァイアサンもサラマンダーも竜ないしは龍です。神族の龍とだって三巳はお知り合いになったと言っています。最早今更1頭2頭増えた所で大所帯になるだけなのです。

 2人はまた顔を上げると急下降で降りて来た竜を見ます。随分と高い所にいたので顔が真上から頷くみたいに下がっていきます。


 「こりゃまた派手な登場だな」


 その後ろではライオーガの姿になって三巳の後をついて来たレオが、人の姿にまた変身してから木の幹に寄りかかって様子を伺っています。一応恐れられてる部類のモンスターなので余所者冒険者達を刺激しない様にの配慮です。

 今は空を見上げて面白そうに片頬を上げて笑っています。


 『とう!』


 威勢の良い掛け声と共にシュタッと地面に着地したのは初めて見る竜でした。

 ペリドットを思わせる透明感のある緑色の体毛に、羽はサラちゃんと違って蝙蝠っぽさより鳥っぽさを思わせます。つまり全体的にふわモコな見た目の竜です。


 『我等!山のリュウ戦隊!風竜の緑レンジャー参上!』


 ビシー!っとポーズをキメキメに決めた風竜は、仮面に隠した緑色の目をキラーン!とドヤ顔で輝かせました。

 その様子を見る事になった一同の反応は様々です。


 「か、かっこいい……」


 憧憬の眼差しで風竜を見つめるのは余所者冒険者のリーダーっぽい男性です。如何にも「勇者に憧れてます」といった装備を身に付けて、判り易い位に男の子とはこう!と言わしめる出で立ちです。


 「風竜!?災厄級じゃない!何でこんな所で会うのよおー!?」


 恐れ、狼狽え、逃げる姿勢になるのは魔法使いっぽい女性です。魔女を彷彿とさせる黒いとんがり帽子を可愛らしくお花でアレンジし、黒く長いワンピースに紋様をあしらった前開きのローブを羽織り、小物で女の子らしさを出しています。


 「え?我等?1頭しかいないのに?」


 魔法使いっぽい女性同様に恐る者が多い中、冷静にツッコミを入れたのは学者っぽい男性……いえ男子?いえいえギリ男性……。


 「小人族か。珍しい」


 小人族なので子供に見えました。けれどもレオの呟きで彼が大人である事が判明です。

 小人族の男性は、ザ、インテリ。と言わんばかりの格好です。何処かの大学で研究に没頭してそうな服装です。目に掛けてある大きな丸眼鏡がインテリ感を後押ししています。

 そしてその小人族男性の一言は緑レンジャーを「ハッ」とさせるのに効果的でした。


 『何をしている!早く来いよ!赤レンジャー!青レンジャー!』


 緑レンジャーが川と太陽を交互に見上げて呼び声を上げました。

 怖がる人達はまだいるのかと戦々恐々となります。

 小人族の男性は1頭じゃなかったなと納得顔です。

 リーダーっぽい人は目を輝かせて格好良い登場を待ち侘びます。

 ログは何を見せられてるんだろうなと砂ギツネ顔です。

 三巳は戦隊モノに憧れる少年では無かったので、状況がわからず首を傾げます。

 レオは全体の成り行きを面白そうに見守っています。

 そんな中、太陽の光に隠れていたサラちゃんが降りて来ました。

 川からはチロチロが這い上がって来ます。


 『およ?やほーサラちゃん。チロチロ』


 気付いた三巳が片手を上げて挨拶します。


 『ちがーう!』


 けれどもそれを緑レンジャーに否定されてしまいました。


 『我等!山のリュウ戦隊!我は緑レンジャー!赤いの!』


 緑レンジャーが両手をビシーッとサラちゃんに向けて、「ハイ次!」と言わんばかりに目を向けます。

 サラちゃんは一瞬目を虚無にしてから緩慢な動きでポーズを決めました。目には仮面を着けています。


 『我は火竜の赤レンジャーらしいです。三巳様』

 『敬語キャラか……。赤はリーダー色だけど……獣神様相手だし……。まあ良し!次青いの!』


 緑レンジャーは次にチロチロに両手をビシーッと向けます。

 チロチロは舌をチロロッと出してドッシリとした動きでポーズを決めました。目には矢張り仮面を着けています。


 『水龍。青レンジャー』

 『何処の大御所だ。だが寡黙キャラとしてなら有りか……?でも寡黙キャラは黒が良い……。良し!青レンジャーはクールキャラを目指そう!』


 何だかダメ出しをされたチロチロ……いえ、今は青レンジャーです。

 余所者冒険者達は竜と龍の争いを想像して青褪めます。だって竜と龍が戦ったら大災害になりますからね。

 けれども余所者冒険者達の心配を他所に、青レンジャーは舌をチロッと動かして頷きました。


 『わかった』


 どうやら見た目に反して乗り気だった様です。頭の中でクールな自分をシュミレートし始めました。

 そんな一部始終を見ていた三巳とログは、演劇を観た気分になって拍手を送るのでした。




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